tare.gif 【視線のさきには、/02.】






ドアと開けると、ブラック&ホワイトを基調にしたダイニングとリビングを兼ねた空間が広がっていた。
オープンキッチンから開放的に見えるリビングは、ひとつひとつの家具のボリュームが小さいせいか、
すごくシンプルな印象。
柔らかそうなブラックのラグマットにホワイトのソファー。
窓際にソファーなんて変わったコーディネートだ。
でも、動線が開いているせいか、家具に囲まれているような窮屈さは微塵もない。



「先輩の…部屋?」



口にしてみるとドキドキした。
いやいやでも違うだろうと思い直す。 
だって、キュヒョンとシェアしていた学生寮とは、共通点が1つもない。
最高学年で生徒会長で芸能活動もしていて学校一の有名人であるユンホ先輩が
特別室みたいなものをあてがわれていたとしてもだ。

……いやでもユンホ先輩はさっき「俺の部屋」って言ってた。
しかもうちは“超”がつく金持ち学校なんだから、僕が知らなかっただけで…
校内に高級マンションみたいな部屋もあり得るかもしれない。




仮にここがユンホ先輩の部屋だとして、いつなんでどういった理由でここにいるんだ、僕は。

だって昨日の夜は…高等部への入学式の準備をして、目覚ましかけて、キュヒョンにオヤスミ言って、
ユンホ先輩の写真にもオヤスミナサイして、それから自分のベッドに入ったはずなのに…








「チャンミン」
「ヒッ」


耳元に息がかかって、飛び出そうになった心臓を慌てて飲み込む。


「何で逃げんの?」


そんな不思議そうに聞かれても…僕にもわからない。
好きな人と距離が近くなったんだから素直に感受してしまえばいいのにと、思わなくもないけれど、
いかんせん、恥ずかしくて耐えられない。

今だってそう。
僕相手に、…肩に頭をのっけて、腰を抱くだなんて…
しかも背中にユンホ先輩の体温と感触が…ぴったりくっついてるし!
意識が否応無くそっちに持っていかれてしまう。



「チャンミン~なんか言えよ。」



もーむりっ!



「ごめんなさいっ」
「えっ」



ユンホ先輩の腕を振り切って、リビングを横切り、壁まですり足で走る。
ほんの数メートルの距離なのに、もはや疲労感は100m全力疾走後よりもデカい。



ユンホ先輩でイケナイ妄想をしたことないか…と問われたら、否定はできない。
だけどあくまで妄想だ。

現実の破壊力たるや。







こんなこと、バレたら軽蔑される。死んだほうがましだ。
いやその前に、まともにしゃべれてない時点で変な奴とは思われているに違いないけど。

心配しつつ背後の気配を探ってみる。
どうやらドアの前から移動しているようだ。


ホッとしながら、そろーりと首だけを回すと、キッチンに入るユンホ先輩が見えた。




「コーヒー入れてやるから、着替えてこいよ。」


姿は見えない。声だけ。


半歩ずつ、かろうじて見えるところまで移動してみる。
どうやらスティックのコーヒーを入れてくれるらしい。


だけど、さっきから、無駄が多いというか、効率が悪いというか。
簡単な作業であるはずなのに、見ていてハラハラしてしまう。




結局、カタカタとカップとソーサーを鳴らしながらダイニングテーブルに置くところまで
見守ってしまった。

はじめてのおつかいか。
自分にツッコミを入れる。





「あれ、まだ着替えてねーの」
「……!」


はっ!!
こっそり見てたのに、今や堂々と見てた!


「チャンミナ?」
「…は…はい、あの、先に、これ、いただきます」


しどろもどろではあるが言葉を絞りだしつつ、カップが置かれた席に腰掛けて
湯気の立つコーヒーをすする。


「うまい?」
「美味しいです」


たとえ、お湯の量が多すぎたって。


「落ち着いたみたいだな」
「あ、え、はい…」


いつの間にか身も心も、頭が働く程度には戻ったらしい。
ほっこりしたティータイム過程のおかげだろうか。


「で、どうしたんだよ。朝から様子おかしいし。目も合わせてくんないじゃん。
 俺に怒ってんの?」


コーヒーを吹出しそうになってしまった。
ユンホ先輩に僕が怒るだなんて!?
恐れ多い。
僕にとっては神レベルの存在なのに。


「何かしたかな~」


白い液体…牛乳?ヨーグルト?らしきものを手の中で揺らしながら
くりくりの黒目を斜め上に向けて考えている。


「あの、聞いてもいいですか?」
「うん」


おずおずと問いかけると、視線が僕に戻ってきた。
だめだ。反射的に視線が左右に流れてしまう。
直視は無理。
最終的には眉間あたりに落ち着いた。


「何で、僕はユンホ先輩のお部屋にいるんでしょうか…」
「いっしょに寝たから」


さくっと答えが返ってきた。
まって処理できない。置いておこう。


「…いえ、それ以前の話で…何でここにいるのかってゆう…」
「ん?…ここって、家って意味?」
「家…まぁ、そうですかね。僕がユンホ先輩の家にお邪魔してる理由を教えもらえるとありがたいんですけど…」
「……マジで聞いてんの?」
「え、ええと、はい…」
「そか……」

おっきい黒目だな~って思いながら思案する様子を眺めていたけど、
答えが返ってこない。


「あの…先輩?」


ユンホ先輩はテーブルの上で両手を組んで、顎を乗せた。


「…じゃぁ、お前は、ここじゃなかったらどこにいる予定だったんだ?」
「僕の部屋です」
「お前の部屋はどこ?」
「どこって…1年の寮ですけど。ここは3年の寮なんですよね」
「会社の寮だけど…」


かいしゃ?
まってこれも処理できない。置いておこう。


「俺も聞いていい?」


三回くらい無駄に頷く。


「俺とお前の関係は?」
「関係…」


口が裂けても言えないけど、僕が一方的に想ってる片思いの関係。
それを抜いたら、


「僕の先輩…です」

間髪入れず、質問が返ってきた。

「ただの先輩?」
「まぁ…そうです、ね…」
「…あー、………そうか。ちょい…考えさせて」

そう言ってユンホ先輩はテーブルの上に組んだ手に、今度は額を乗せた。




つむじ、こんなに近くでは初めて見る。
今のうちに存分に見ておこうと、髪の毛の一本一本まで目を凝らしていたら
ぱっと顔が上がった。

ばっちり目が合っちゃったから、慌てて眉間に修正。
よし。



「多分今日のスケジュールはキャンセルできないから、言っとく」
「あ、忙しいんですね」

なんでか分からないけど思いっきり苦笑された。

「チャンミン、お前のだから。」
「僕…?」
「お前がやんなきゃ成り立たないのは、収録1本。あとはまぁ、隣にいてくれたらいい。なんとかする」
「何を撮るんですか」
「音楽番組」
「生徒会でイベントか何かするんですか?」


ユンホ先輩は困惑気味に眉をひそめた。
え、今僕、変なこと言ったかな!?焦る。


「…さっき、1年の寮って言ってたけど…まさか高1って意味?」
「そうですけど…」
「お前、高校1年生なの?」
「そうですけど…?」

直後、ユンホ先輩は立ち上がって電話を取る。

「出かける準備しとけ」


向こうのドアを指し、それだけ言って、寝室に入っていった。









僕だけになったリビング。

一体何が起こっているんだろう。







僕の疑問は何一つとして解決していないけど、

とりあえずコーヒーを飲み干した。










続く..

»Read more...

プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。