wasu.png 【 し あ わ せ サ ン タ 。 】











カチャリ。

極力音を立てずに開いたドアからスニーカーの踵が見えて、そのあとプリンとしたちっちゃなお尻。
ドアを押し開けて、手に持った大きな箱をぶつからないように運び入れた。
素早い動作で壁に箱を押し付け固定すると、片手でドアノブを握り、秒速2センチくらいの慎重さで閉める。
そこでやっと詰めていた息を吐いた。



「ふぅ…サンタってたいへんだな」



額を拭いたい気分だったけど、両手は塞がっている。
よしと気合を入れなおして振り返った。

直後目に飛び込んできた光景。



「、!」



サンタは息を呑む。
なぜなら、


ぽわん。
ぽわん。
ぽわん。

真っ黒なはずの床や壁に、大小様々な雪の結晶が浮かんでいたから。



「……きれい…」
 


虫の羽音レベルの音すらたてまいと気をつけていたはずなのに、
ポィポィっと靴を脱いで、床にコトリと箱を置く。
それから人差し指をぴぃんと伸ばして雪の結晶に触ってみた。


ぷにぷに。
ぷにぷに。


厚みがあって柔らかい。
キョロキョロして小ぶりな結晶を探すと、親指と人指し指でぺりと剥がして
コートのポケットにしまう。
満足そうにうなずいてから、思い出したようにお口チャックして
よいしょと大事そうに箱を抱えなおした。




雪の結晶は、廊下の向こうまで降り続けている。




サンタはほくほくした顔のまま廊下を抜け、リビングへ。
周囲を眺めながら歩くサンタにぶつかる障害物は何もない。
おかげで足をぶつけることもなく、痛い音もしない。

その理由。

雪に目を奪われているサンタはまだ気づいていなかった。








歩みを止めたのは、開けっ放しにされたドアの前。
閉める派のチャンミンにしては珍しいなとサンタは首を傾げつつ、
部屋の中をひょこり覗いた。



「……!!」



サンタの黒い瞳に幻想的な世界が浮かび上がる。

6面に貼られた、街の風景にサンタクロース、雪の結晶が降る空。
背の高い豪華なモミの木にカラフルな電飾がキッラキラ。
もちろんてっぺんには、大きな大きなお星さま。
床に散らばるのは金銀のオーナメントボール。そして緑のボールだけはツリーに飾られていた。



「永遠にトップスター…? チャンミン、知ってて選んだのかな」



今この瞬間、ポツリと呟いたサンタをチャンミンが見ていたら、
『心が潤っているあなたの微笑みが天使だから、飾りの天使は必要ないんですよ。』
などと、惚けていたに違いない。


サンタはサンタで、一人でこれを飾るチャンミンがむくむく頭の中に浮かんできて、
『じつは途中で面倒になって、金銀のボールは床に撒いたのかもしれないな。』
って、くくくと笑う。




そんな部屋の住人の姿は、こんもり盛り上がったベッドから柔らかそうな髪の毛がのぞくのみ。
サンタはしばらく様子を伺っていたけれど寝ていると判断して、右足をそろりと踏み入れた。



まさしく、抜き足差し足忍び足。



音も立てずにベッドサイドにたどり着くと、おっきな箱を静かに置いて、
任務完了とばかりに安堵の息を静かに吐いた。




それからたっぷり20秒間くらい、
サンタは部屋の主を見つめていた。

触れたい欲を持った指先が宙を漂う。
だけど布団の上からそうっと撫でるだけで。

名残惜しそうに、何度かベットを振り返りながら部屋を後にした。




…はずだったのに。
ドアから出る直前、ピタと足を止めて目を凝らし、横の壁に顔を近づけた。


白い紙に几帳面な字。



wasu.png



頭の中で朗読すること2回。
やっぱりバレてたのかと、舌ペロサンタ。

そこで、はたと思い当たる。
ここまで来るのに痛い音がしなかった理由に。
さすがは俺のチャンミンだと、お髭のない顎を撫でた。

それからそーっとベッドに滑り込む。
だけどくっつく事なく、両手両足をこすり合わせるに徹していたら、


「何してますか」


焦れたような声と同時に細いのに逞しい両手が伸びてきて、ユノをぐいと抱き寄せた。


「チャンミン?」
「冷たいんですけど」
「ならくっつくなよ。 あっためてる最中だったのに」
「いーからもっとくっついて」
「矛盾してるし。 てか起きてたの?」
「寝てました。3秒間前に起きました」
「起こした?」
「いいえ、目が覚めました」
「どう違うんだよ」
「自発的か強制的かです」
「………うん、寝起きに無駄な会話だな」
「もうそれはいいですから、ちゃんとして」
「ちゃんと?」
「そう、ぴったりして」


ユノは一反もめんの如く巻きつこうと試みたけど、向かい合わせはぴったりできない。
チャンミンの腕の中で蠢いた結果、背中を預ける形で、体のラインまでぴったり重なった。


「できた。」
「ぴったりですね」


チャンミンはユノの項に唇を寄せながら
ぎゅうぎゅう温かな体で抱きしめる。
外側から内側へ、じわじわユノの体に熱が伝わる。


「…チャンミンだけじゃん」
「ヒョンもしたいの?」
「うん」
「じゃあ、明日はヒョンの番ね」
「こないだもチャンミンの番だった」
「そうでしたっけ?」
「そーだよ」
「でも今日はもうぴったりしたから、離したくないんです」


チャンミンはユノが言葉を継ぐ前に、言葉を重ねた。


「ダメですか?」


そう聞いた時、チャンミンにはユノの顔がどんな風に変わったか、手に取るようにわかっていた。
何て答えるのかも。確信犯。


「…ダメじゃねーよ。」


ユノはユノで、チャンミンがどんな顔をして自分の返事を聞いているか、知っていた。
それをチャンミンが知らないことも、知っている。確信犯。


ただ、素直にうなずいて服の中に侵入してきた大好きな人の手を、重ねるみたいに握った。
この手は…いつだって思いやりに溢れてる。
チャンミンがまだ見ていないサンタの顔をして、ユノはその手に自由を許した。













翌朝。


ユノがぼんやり目を開けると視界に動物。
高いとこから見下ろされていた。
半分しか開いていない目をぱちぱち。


「……キリン…?」


目をごしごししても間違いない。
黄色にまだら模様の長い首。ぱっちりおめめに不敵な口元。


「チャンミン、チャンミン、キリンがいる。」


体を起こして、隣をゆさゆさ。
揺り起こされて眠そうな片目が開いた。


「…よかったですね。」
「うん。 …じゃなくてー! サンタ? サンタ来た?」


さらに揺するユノ。
まだ眠いのにと呟くチャンミンだけど、
キリンに目を釘付けたままのユノが子どもみたいで可愛いくって目が冴えてきたから
あのですね、と口を開いた。


「昨日、サンタがそれに乗ってきたけど、眠るヒョンにキリンが一目惚れしたので、
 彼は一人で帰りました」
「えっ、ごめんねサンタ…」
「えっ、それツッコミどころ結構ありますが」
「……てことは、俺のキリン?」
「トナカイじゃないことすらスルーか。」
「ねー、キリン。 ユノのなの?」
「一ミリも会話になってないですね。 僕を起こす必要ありました?」
「チャンミン、 キリンがうんてしたー!」


そう言いながらユノはベッドの上に立って、天井に届きそうなほど高いキリンの首に
両手でひしっと抱きつく。

その光景にチャンミンはなんだか奥の方がうずっとなった。



「……可愛いですね」
「うん、すげー可愛い。 ありがと、サンタ 。」



嬉しいでキラキラした目をチャンミンに向ける。
可愛いのはキリンの話じゃないけどとは口にしない。
ただ布団から片手を出して、ユノに伸ばす。



「キリンは後にしましょう?」



ユノは名残惜しげにもう一度キリンを眺めてから、差し出されたその手を取った。
優しくめくられた布団の中に体を滑り込ませる。


今度は向かい合わせ。
ユノは寝癖でうねるチャンミンの髪を撫でた。


「なー。 ぜんぶ、チャンミンしたの?」
「そうです。」
「いっこ、剥がした」
「いいですよ」
「緑のボールもいっこ、ちょうだい?」
「いくつでも。 ってゆうかぜんぶ僕からのプレゼントです」
「えっ、俺持ってきてない」
「僕はいつももらってますからね」
「何を?」


チャンミンはそれには答えず、そうだ、と言葉を継ぐ。


「僕にもサンタ来たみたいですね」
「うん。 一年頑張ったからだよ」
「欲しいもの分かったのかな」
「……レゴじゃない?」
「えっ!」


ガバッと起き上がるチャンミン。
だけど、ユノが寒くないように布団との隙間を埋めることも忘れない。
それからベッドの上に胡座をかいて、大きな箱を開けはじめた。


「ああーっ!!」


欲しかったやつだ!ってテンション上がってるチャンミンが
ユノを振り返る。


「レゴ、ありがとうございます。 サンタさん」


箱に頬ずりしそうなチャンミンを
ゆのは可愛いなと目を三日月にするけれど、それを口にはしない。



「メリークリスマス 、チャンミン 。」


今度はユノが片手を差し出す。
チャンミンは箱を大切そうに元の位置に戻して、
その手を握った。



「メリークリスマス 、ユノヒョン 。」













end..
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今回はなんと、原作YUKAでチカ*さんが漫画を描くという、まさかのコラボww
書いておいてなんだけど、やべぇ超可愛い話やん!!ってなりました(笑) チカ*しゃんありがとうございます。

今回はチャンミン目線で書けず…かつ、ユノ目線なんてもっての外で、こうなりました。
違和感しかなかった方がいらっしゃったら…なんかすいません←


さて、私には始めてのクリスマスお題でしたが、いかがでしたか?
個人的には私好みのクリスマスを過ごさせてあげられたかなと思っています♪
妄想伏線を撒いたものの← すべてを回収できていませんが、
読者様で回収&お察し&ご想像のほど、よろしくお願い申し上げます。


最後に、全話読破&拍手くださった猛者! ありがとうございました♪ 
読破していただけると、楽しんでいただけたのだ!!と嬉しくなります!!

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コメント

はじめまして。
素敵なお話、ありがとうございます。
にんまりしてしまう顔をどーにも制御できません。(*´꒳`*)
こんなシアワセな気持ち、他の人にも分けてあげたい。

なまけ | 2016.12.24(Sat) 06:08:13 | URL | EDIT

ありがとうございます。

>なまけ 様
はじめまして!!お話が気に入っていただけたようで、嬉しい限りでございます。
ステキなコメントも頂戴して、なまけ様より私の方がシアワセな気持ちを頂いている気がしますが…!!
にんまりしていただくことは、このサイトのモットーでもありますのでvv
また遊びにいらしてくださいね♪ またにんまりにまにまできますよう、私もがんばりますわ!!

YUKA | 2017.02.06(Mon) 00:27:11 | URL | EDIT
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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。