tare.gif 【視線のさきには、/08.】






無造作に置かれたままの携帯。
黒い画面が明るく光っていた。

音楽を止めて電話に出る。


「もしもし…」
「チャンミン?」


マネージャーだった。


「まだスタジオ?」
「、はい」
「息切れてるけど、大丈夫か」
「まぁなんとか…」
「一晩中?」
「……ええまぁ…、すみません、ご心配をおかけしてます」
「気にすんな。 あと30分くらいで迎えに行きたいんだけど…」
「わかりました」
「ユノにも伝えといて」
「えっ? ユノヒョン、ですか」
「そっちいないの?」
「僕一人ですけど」
「あれっおかしいな」
「いつこっちに向かいましたか」
「仕事終わった足で送ってったから… 0時くらいか」
「電話してみます」
「いや、俺が探しとく。 ユノ連れて迎えに行くから、シャワー浴びて休んでろ」
「…わかりました。 よろしくお願いします」


昨日、僕の代わりに頭を下げてくれた人。
こっちに向かったのなら、この建物のどこかにいるの?


そう思ったら、会えた義理でもないくせに、もの凄く顔が見たくなって…
スタジオを飛び出した。



      が。

「…あれっ」


なんか視界の端に黒い塊があった気がして
三歩戻って、振り返る。


「まさか…」


スタジオの隅っこに、パーカーをすっぽりかぶって、長い足を抱えてる人がいた。
しかも僕が持ってきた着替えを座布団よろしく尻に敷いている。


「ユンホ…先輩?」


足音を立てないように近づいて、目の前にしゃがみ込む。
そーっとフードを持ち上げた。
膝に押されてほっぺがぷにゅっとなってるし、唇もタコだけど、間違いない。


「いつ入ってきたんだ…」


全然気づかなかった。
0時には…って言ってたけど、もしかして… ずっとここにいたの?



誰も居ないことは分かってるけど… 一応ぐるりと周りを見回す。
それから、ドキドキしつつ指を伸ばして、すべすべそうなほっぺに触れてみた。
柔らかい…


…ねぇ、ユンホ先輩。


「僕に本番できるか心配で… こっそり見に来たの?」


やるだけのことはやった。でも…僕には、『でも』 が、捨てきれない。


「…こんなんじゃ、ふがいないですよね 」


自分が頑張ればいいだけだと思ってたけど、
頑張っても100パーセントじゃないし、こうして迷惑かけてる。
努力のレベルが全然足りないのかもしれない。


「もっともっと頑張ったら、先輩の傍にいられますか?」


見てるだけじゃない。
堂々と、触れられるくらい。










プルル。
電話の音に、慌てて指を握りこむ。

無意識の動作だろう。
ユンホ先輩はポケットから引っ張り出して、耳に当てた。


「はい…うん。 ん? あ、… 一緒にいる」


間近にいた僕に気付いて、半目が驚いたようにぱちくりした。


「…わかった。…よろしく」


相手はきっとマネージャーだ。
話してる内容は大体想像がつくけど。
ユンホ先輩が電話を切ったタイミングで正座をして頭を下げた。


「昨日はすみませんでした!」
「おう、大丈夫だ。気にすんな」


何でもなかったかのように言う。
昨日とおんなじ、綿毛のような軽さで。
全然軽くなんかないのに。
なんで大丈夫だなんて言うんだろう。


「……僕が頼りないせいですけど、でも…気にしないわけないじゃないですか」
「チャンミン…」
「ユンホ先輩に尻拭いさせた僕がどんな気持ちかわかりますか」
「マネージャーに聞いたの?」


聞いたんじゃない。 見てた。
ユンホ先輩は苦い表情を浮かべる。


「罵倒してくれればいいのに。 お前のせいで迷惑してるんだって」
「怒ってんのか」
「いえ、自分が情けなくて…いたたまれないだけです。今日だって夜通し付き合せて…」
「やっぱ裏目に出たか」
「やっぱり?」
「うん。 迷ったんだけど…」


ユンホ先輩は両手を僕の肩に置いた。


「ごめんな。 俺がここにいるの、俺のエゴだから」
「……エゴ?」


意味がわからない。
ユンホ先輩は両手を下ろしてあぐらをかいた。


「俺に対して申し訳なさいっぱいなのは分かってた。
 なのに追い打ちかけるみたいに一晩練習に付き合うなんて、
 お前にとっては嫌がらせみたいなもんだろうけど…お前のこと、見てたかったんだ」
「………寝てました」
「それな!あはは」
「笑って誤魔化す気ですね」
「いやいや、寝たフリだから」
「家に帰ればいいのに」
「まあ、それはそうなんだけどな」
「心配だったんでしょ? 僕に本番ができるか」
「そうじゃないよ、見てたかっただけってのはホント」
「嘘だ」
「俺はうそつきなの?」


ユンホ先輩は足の上に肘をついて手のひらにほっぺを乗っける。
斜め下から僕を見上げた。

うっと言葉に詰まる。


「なーチャンミン。 俺はさ…お前が思ってるよりお前のこと、知ってる」
「たとえば?」
「自分に厳しい完璧主義者なこと」
「さりげなく悪口ですよね」
「じゃあ言い方変えるか」
「そうしてください」
「頑張り屋さん♪」
「……」
「そんな顔すんなって! ほんとに分かってるから」


頬杖をやめたユンホ先輩はトスンと壁に背をあずけて、なぜか指揮者みたいに指を振る。


「歌とかダンスとか動線は、完璧だろ」
「はい、多分…」
「お前が引っかかってんのは、表現力じゃね?」
「………」
「目に見える部分は真似できるけどアイツが何を伝えたくて歌ってんのか、踊ってんのか、
 今のお前にはわかんねーだろ? お前のじゃないからな」
「つまり……僕はどう頑張っても劣るんですね…」


未来の僕のようにはなれない。

だけどユンホ先輩は左右に首を振った。
言ったのは、ユンホ先輩なのに。


「勘違いしてる。 劣る劣らないの問題じゃねーよ。
 今のお前を見せればいい。 映像のチャンミンになる必要はないんだから」
「でも…」
「一日で色んなこと知って、気付いて、いっぱい成長したろ?」


両手が僕に向かってまっすぐ伸ばされる。




「だから褒めてやる」
「えっ」




何でそうなる。
褒められることもしてないのに。
しかも自分からあのユンホ先輩の胸に飛び込むなんて出来るわけもなく…
かといって抱きしめていい前フリを無視できるはずもないし、
どうしていいかわからない。
右往左往とはまさにこれ。


「まったく」


ユンホ先輩は仕方ないなぁとばかりに笑うと、
そんな僕の腕を取って引っ張った。


「わっ!」


正座をしてた僕はそのまま倒れ込むしかない。
だけど、がっしりした胸に抱きとめられた。

そのままそろりと背中に腕が回ってきて、ぎゅうってされる。
僕もおんなじように、力いっぱいぎゅうってした。


「ユンホ先輩…意外と細い」


腰にまわした腕は十分に余っていて、もう二周くらい抱きしめたい。


「意外とって失礼だな。それにヒョンって呼べっつったろ?」
「はい…ユノヒョン」
「よーし。 にしても汗だくだな」
「あ!ごめんなさい」


慌てて離れようと体を起こしたところで、ワシワシと頭を撫でられた。







「頑張ったな、チャンミン」







朝日より煌めいててあったかい笑顔。 キラキラが僕を照らす。


頑張った…。
僕は頑張ったのかな。


本番が上手くいったわけでもないのに、
出来る気がしてくる。





「ユノヒョン…」
「ん?」
「…もしかして」






一晩中僕に付き合ってくれてたのは、
このひと言を僕に言うためだった?








「もー …大好きです。」



真顔な僕の口から飛び出したのは、そんな告白。
ユンホ先輩は、可愛らしく首を傾げて、



「知ってるけど?」



なぜかドヤ顔でふふんとするもんだから、… 思わず笑ってしまった。











end..

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コメント

うわあああー!
サイコーサイコーです!
さらりとかっこよすぎるユノ先輩。

というか終わってしまったですかー(>_<)


毎度ながら、YUKAさんが作る二人の会話が大好きですー!


「今のお前を見せればいい。」

ズキューン-!ユノ先輩やられました-!

「もー …大好きです。」
って思わず無意識にいっちゃう位。チャンミンの気持ちが分かります。

膝に押されてほっぺがぷにゅっとなって、唇タコも
首を傾げてドヤ顔も  全てがたまりません。

どんな時代に出会っても二人は惹かれあってしまうはずですねー!


ステキなお話をありがとうございました。

バビコ | 2016.12.01(Thu) 22:47:25 | URL | EDIT

ありがとうございます。

>バビコ さん
こんにちは! 相変わらずうれしすぎるコメントありがとうございます~!!!
もはやユノを好きにならない人類がいること自体が世の中の摩訶不思議レベルですからね(笑)
会話についていつも好きって言ってくださいますねー^^ 成り立ってるか成り立ってないかの瀬戸際がわたしも好きです←
この連載も続ける気満々だったんですが、【わすれないで。】を書きたくなって、すーっと終わってしまいましたw
また遊びにいらしてくださいね! しっかり連載していきたいと思います♪

YUKA | 2016.12.04(Sun) 15:10:50 | URL | EDIT
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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。