tare.gif 【視線のさきには、/04.】






迎えのワゴンが来たのは、あれから15分後だった。


乗り込むなりユンホ先輩は、僕の隣で運転席のマネジャーさんと話している。

「リハの順番どうなった?」
「大丈夫。最後にしてもらった」
「なら二時間くらい余裕あるか…」
「ギリ」
「スタジオは押さえれた?」
「そっちもまぁなんとか。けど病院が先の方がいんじゃないか?」
「それこそちゃんとファンに見つからないように徹底したいから。」
「それもそうだな。にしても…チャンミン」
「は、はいっ!」

急に話をフラれてビクッとなる。
バックミラーに苦笑した顔が見えた。

「ユノから聞いたけど…高校から今までの記憶がスッポリないんだって?」

チラと隣を見る。

「…すいません…」

謝ると手が伸びてきて僕の頭をくしゃりと撫でた。

「でもなんでユノのことは覚えてんだろうな。知り合ったのは練習生になってからだろ」

マネージャーは不思議そうに呟く。
でも僕に答えを求めても仕方ないと思ったのか、言葉を継いだ。

「俺もなに悠長に聞いてんだか…現実味ないってゆうか。
ここは焦って騒ぐべきなんだよな、ほんとは。仕事どーすっかなぁ…」
「大丈夫だ」
「ユノがそう思ってるだけだろ?チャンミン、お前は?」
「…はい、まあ…」

何が大丈夫なのか、大丈夫じゃないのかすら分かんないけど、
ユンホ先輩が言い切るんだからそうなんだろう。

「一過性のものならいいんだけど…お前、ダンスも歌も、そのなんだ、できんのか?」

ダンス?
歌?
手拍子をしながらステップ踏む的な?
……なわけないよね…
だけど、『できない』は口にしちゃだめなワード感しかなくて、言い淀む。
マネージャーさんは察したらしい。

「………だよな。」
「前見て運転」
「お、悪い」
「パフォーマンスについては心配しなくていい。収録までにはなんとかなると思うから」
「ユノ、その根拠はどこからくるんだ?無理だった時のこと考えないと」
「今考えても仕方ねーよ。今日できないレベルなら、一ヶ月後だってできるわけない」
「まぁ、そうだな…任すよ。」

ただそこにある置物みたいな僕に、
ユンホ先輩は問題ないっていうみたいにグッと親指を立ててニッコリした。








ワゴンを降りて連れて行かれたのは、すごくデカくてオシャレな建物。
エントランスを抜けエレベーターに乗ってホテルの廊下みたいなとこに着く。
一番手前にある、重たそうな扉を開けて中に入った。
30畳くらいの部屋の一面に鏡が張ってある。

ここがスタジオ…かな。







…ん?


んんん?
左手を上げてみる。
鏡の中の人物が同じように動いた。


……あれ?

右足も上げてみる。
やっぱり、鏡の中の人物が同じように動いた。


つまり、あれは、




「……僕        っ!?」




駆け寄る。
鏡に映っているのは、大きな目に大きな鼻。 特徴のある唇。
今も昔も変わってない。
だけど、あどけなさが精悍さに変わり、ひょろりとした体は、厚みが増して男らしさが出ていた。
なかなかイケメンと言っていいのではないだろうか。
シャープな顎を撫でてみる。ちょっとざらざら。


「そっか……」


ほんとに急なんだけど、雨粒みたいに答えが落ちてきて、波紋のように広がる。
僕は記憶を無くしたわけじゃない。




「未来…未来に来た……」




実は、記憶喪失なんて言われても、ピンときていなかった。
だけど、ここが未来であれば、現実味はないけどもしっくりくる。

未来だと仮定して、
ドラえもんでいえば、この世界にも僕がいるはずだけど…今朝の事から考えるといないような気がする。
だってこの世界に僕がいたら、あのベッドに僕がいるわけない。

見た目だってそう。
僕は大人になった。

中身が入れ替わったというのが、正しい気がする。

そして、重要な事実。
未来の僕とユンホ先輩は親しい間柄にある!!
きっと、タレソカ学園高等部・大学部と、誰もが誉めそやす素晴らしい徳を積んだに違いない。







「自分に見惚れるチャンミン…なかなか珍しいな」

ユノヒョンの笑いを噛み殺したような声にハッとする。

「いえ、僕…ユノヒョンと並んでもそんなに悪くない…ルックスじゃないかと思って」

それが凄く嬉しい。
なのにユンホ先輩は、ひょいと肩をすくめただけ。
そして当たり前みたいなトーンでさらりと言った。


「俺の隣はお前しかいねーよ」


単純に…ユンホ先輩に認められているようで、自分が誇らしかった。









「チャンミン、時間ないからやってみよう」
「あ、はい。」

直立不動な僕に指で指示する。

「その辺に立て」

小走りで移動。
何をやるんだ。
説明を受けてないけど。

ユンホ先輩は僕の顔がクエスチョンマークで埋め尽くされてるのを分かっているはずなのに
何も言わないまま、携帯をプレイヤーに接続。

「いくぜ」

直後、聞いたこともない電子音が流れ始める。
どうしていいか分からない僕の隣に立つと、音に合わせて動き始めた。



鏡越しのユンホ先輩。

隣に僕。



この状況……
心臓が恐ろしい速さで走り出す。

こんなにも高揚した気持ちになるのは、生まれて初めてかもしれない。
無意識のうちに、乙女みたいに両手を胸の前で堅く握り締めていた。


だって…だってさ!!
ファンにはたまらないでしょう…!?
どんなにユンホ先輩が好きでも、どんだけユンホ先輩にお金をつぎ込んでも、
この時間は買えやしないんだから!




在学中からダンサーとして活躍しているのは知っていた。
でも学園から出ることもない僕には生で見る機会なんてなかった。


こんなに…間近で見れるなんて…


緩い部分がひとつもない繊細さ。
素人にだってわかる、魅せるためのダンス。
瞬間瞬間の美しさにこれ以上なんかあるわけないとすら思えた。

どこまでも妥協を許さない、姿勢が垣間見える。






「チャンミン、できるだろ?」

現実に引き戻される。

「できる…んですか?」

まさか、ユンホ先輩と同じダンスをやれと言っているのか。

「大丈夫だ。頭で考えんな」

そんなこと言われても。
踊ったことすらないのに。

「体が覚えてる」

あんなに動いているのに、ユンホ先輩の息は乱れていない。声すら揺れていないことに気づく。

「誰よりも、練習してきただろ?」


鏡越し。
まっすぐ僕を見つめる瞳。
そこには“できないかもしれない” なんて、不安は1ミリさえもなかった。


100%の信頼。


きっと、未来の僕はユンホ先輩と
毎日毎日こうして、積み重ねてきたのだろう。

ひとつずつ。
ひとつずつ。

だから、僕も信じよう。
未来の僕が、ユンホ先輩の隣に立つに相応しい努力をしてきたと。
そんな僕を信じている、ユンホ先輩を信じようと。






息を吸って
ゆっくり吐く。


知っていたわけじゃない。
なのに、
歌を聴いて、音を感じ、ユンホ先輩の存在を握り締めたら、

体が動いた。
しなやかに、伸びやかに。


鏡の中の僕は、見たことも無い顔をしていた。




ユンホ先輩が頷く。
僕もコクリ、頷き返す。

信頼に応えられたことは何より嬉しい。

だけど、自在に動く身体の軽さも
自然に出てくる歌声も
僕に起こっている出来事じゃなくて

まるで夢の中にいる自分を俯瞰的に見ているみたいな…
そんな、気がした。









続く..

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全話読破してくださったお客様、ありがとうございます。
私の趣味に共感していただけた故かとw

ときに、こちらの連載では可愛いユノが出てこない…オフザケする2人が出てこない…
恋しい…でもそっちに走ると更新が止まるというジレンマ。
皆さんいかにして連載を平行しているのか…ハードル高しです。

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コメント

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| 2016.09.28(Wed) 23:11:13 | | EDIT

ありがとうございます。

>チカ*しゃん

コメントありがとうございますv 二人の関係…なんか想定してた内容と変わってきていて、
もはや分かりませんwwww
やっぱりリアルを想像できないとね!僕らの共通認識バンザイ。
おふざけはお題で頑張りますZEYO!
まぁ…安定の押せ押せになりと思われますがw

YUKA | 2016.09.30(Fri) 06:03:14 | URL | EDIT
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YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。