品定めされているようなプレッシャー。
なんだか久しぶりの感覚だ。


「目線ください」


カメラマンの要求に、ユノは僕の肩に肘をかけ、細い指で唇をなぞった。
壮絶に挑発的な視線を向けているに違いない。

僕はそんなユノを横目に見てから、ゆっくりとカメラに視線を流す。


「それ!もう一枚」


鋭い声が飛んだ。

カシャカシャと安物にはない心地良い音。
その数に反比例するように
話し声が消え
足音が消え
息遣いが消えてゆく。


……プレッシャーはもうない。
あるのは期待と興奮に満ちた視線だけ。


僕はユノの肩に片腕を回して、甘えるように顔を寄せた。






tare.gif 【タレソカ学園高校/24.】






撮影が終わり、控え室には僕ら二人。

「ほんと、びっくりした」
「まだ言ってるんですか」

量産品とは思えない程手の込んだ刺繍とラインストーンで艶やかに飾られたジャケットを脱がせて
壁際のハンガーにかけにいく。
貴公子風ゴージャス衣装はユノの為に作ったんじゃないかと思うほど似合っていた。
…まあ、似合わない服なんてないけど。

そのユノといえば僕に脱がせてもらったきり、着替えをするでもなく、
撮影後から楽屋に入った今でさえもヒナみたいにとことこ僕の後をついてきて、
興奮気味にしゃべり続けている。


「だってスタジオさ、いつもと空気違ったし」
「そうなんですか?」
「みんなそれぞれ仕事あるじゃん。
 だけど気付いたらザワつきがなくなって…息さえも忘れててるみたいな。
 お前に見惚れてたよ。つーか、女子スタッフはみんなチャンミンに惚れたな!」
「ヒョンも惚れちゃいました?」

って言う僕の言葉なんて聞いていやしない。
その証拠に惚れた~♪惚れた~♪て作曲しながら僕の腕を掴んでゆらゆらし、
別の話題を振りかけてくる。

ってゆうか、僕だってユノが撮影前に言った「好き」の意味が後輩を超えたものなのか…
まぁ超えてはいないとおもうけどツッコんで聞きたいのに。
カラスの行水みたいなシャワーをして服を着せられメイクして撮影して
終わってみればユノはこの調子だし、タイミングなんてありゃしない。


「なーなー聞いてる?」
「はいはい、何ですか」
「編集さんにいきなりツーショットに変更んなった理由聞いたらさー」
「ええ、それ、僕がお願いしました」
先回りして答えておく。
「ちなみに話せば長いので、詳細は割愛します」
「長くねーよ。俺がシャワー浴びてた間だろ」
「バレましたか。名探偵ユノですね」
「ん、まぁな!」

親指と人差し指でL字型を作ってビシッと顎に当て得意気な顔をする。
僕はその手を邪魔ですよとやんわり退けて、
フリルシャツのリボンをシュルリと解いた。










編集さんと話したのは、仕事の話が1割で、残りはもちろんユノのこと。
アノ出来事が起こった経緯についてだ。

ユノが読者モデルとして登場するまで、ジョンホさんという、現実世界の彼と同じ顔をした大学生が
投票ランキング一位だったらしい。
だけどその不動を動かしたのが、ユノだった。
初回登場の次の回。企画タイトルは『花より男子』。

ビビッドな花たちがまるで花葬のようにユノを彩るさまに、どこの野郎ごときが勝てようか。

その美麗さに。
高貴さに。
艶やかさに。
圧倒的なまでの存在感に。

かくして人気は一気に爆発。
バックダンサーとしての知名度、技量も相まって限度を知らず。
しかも名が売れれば売れるほど、巷から人となりについて声が上がるわけで。
それらが軒並み人柄への絶賛ときたから、文句のつけようがない。


だけど意味不明な理由でイチャモンつけてくるのがアンチってやつ。
一度一位を奪われたくらいなら、「ライバル?フッ…100年早いわ」的な上から目線でいられただろう。
けど、一度ならず二度、そして三度、四度…転落を認識する。

じゃあどうやって不動を取り戻すか。
簡単な方法がある。
それは、ユノ自らの意思で退いてもらうことだ。

この世界のユノにはボディーガードがついているわけではなく、ましてやマネージャーがいるわけでもない。
車で送り迎えがあるわけでもなく、学園の外に出たら情報は漏れ放題。
嫌がらせもやりたい放題。

数は増え、集団となり、善悪の境界線は踏み荒らされ、エスカレートする。

ユノがこのビルに来る日時をどうやって把握しているのか…
待ち伏せするようになり、ヒソヒソ話から罵詈雑言へ。
それを超えてある日は卵、ある日は腐ったトマトを投げつけるようになった。
見かねたスタッフが注意をしても懲りず、半年近く続いているらしい。

その間、ユノは平然としていたし、いつだって笑顔で気にする素振りさえなかったとか。

今日みたいに。










「お願いしたくらいで企画は変わんねーよ。何があったんだ?」
今度は2倍くらいの振り幅で、僕の腕をゆさゆさしてくる。
「わかりましたよ。あのですね、今月号の新人紹介枠にっていう話をいただいて。
 撮影は不安だから、ユノヒョンと一緒だったら参加しますって言ったんですよ。
 そしたら、衣装着せられてメイクされていつの間にかあーなってました。」
「不安とかどの口が言うんだよ」

確かに真逆のことを言った。
広告写真用の爽やかイケメンと評してもらえる顔をして。
全力での自己アピールが実を結んだといえる。

「ユノヒョンがいてくれたから、上手くいったんですよ」
「いーや。慣れてた。ほら、ソファーの上でさ、お前がセクシーな流し目してたやつとか」
「ユノヒョンがR18の顔してワイルドに僕に絡みまくったやつですね」
「絡み…ん、なんかほら、周りからの圧が…近寄れ!絡め!そうそう!それ!!みたいな…」
「要求に応えるのは大切ですよね。で、足上げて?」
「あ、はい。って、人のズボン勝手に下ろすんじゃねーよ!自分でやるし!」
慌てた様子で引っ張り上げる。
「今更?」
「なんだよ今更って」
「ジャケットもシャツも僕が脱がせましたけど?」
「ぅ、それは…」
「早くして」
「でも…」
「肩に手置いていーですよ」
「え、あ、うん」
「上手ですね。もっかい足上げて?」
「ん」

結局、ユノが履いていたズボンは脱がせて左腕にかけ、すかさずクリーニングから戻ってきていたズボンを履かせる。
脱がせたズボンはハンガーにかけ、今度はシワひとつ無くなって戻ってきたTシャツに腕を通すよう、裾を向ける。

「どうぞ」

ユノはそれを見つめて、独り言のように呟いた。

「俺のこと何歳だと思ってんだ…」
「5歳です」
「即答!? つか5歳でも1人で着れるしっ!」
「そうですよね~冗談です。ほら、手、入れて?」
「……んー、んー……」


ユノはしばらく僕の顔とシャツを見比べ、
腕を組んで
首を捻って
うーんと唸り
つま先を床にトントンし、
指先を顎に手を当てて
もう一度僕を見て、
それから

勢い良くすぽっと両手を裾に入れ
襟首からぽすっと顔を出した。

そして、
乱れた髪を手ぐしで撫でながら


「……て、ことだ。」


っていった。


……。
ん?
今、何が完結したんだ。
むしろまとめられたのか。
で、何が?
しかも何で照れ気味なんだ。


「なんだよ、わかんねーの?」


僕の様子を眺めていたユノは腕を後ろに組んで前かがみに顔を覗き込んでくる。
可愛らしく首を傾げて、
くりくりの黒目でじっくりと。

「わかりま……す」
「ならいい。お前も早く着がえろよ」

着替えが完成したユノは鼻歌を歌いながら壁際のソファーに移動した。
対する僕は消化不良を極めているわけで。
なんでわかりますって言っちゃったんだと後悔しながら、パリッとしてかえってきた服に着替え
ユノの向かいに腰を下ろした。

「そこテーブルだし」
「固定概念です」
「なんだそれ」
「テーブルだって決まってないでしょ」
「どう見てもテーブルだろ」
「僕には広い椅子に見えます」

ユノは目をパチクリして頷いた。

「一理ある…」
「納得するんだ…」
「なんだよ!言ったのお前だろ!」
「で、」
「で?」
「さっきの、やっぱりわかりません。教えてください」
「素直だな」
「細胞呼吸で素直を生産してますから」
「…ツッコめねーよ」

ユノは少し笑って、すぐに真面目な顔をした。

「ほんとはさ、お前がモデルをやりたくて仕事を引き受けたわけじゃないって分かってんだ」
このテンションの落ちっぷりは良い話題ではない。そんな予感。
「急になんですか。」
「俺を心配して、だろ?」
すごくすごく優しい声。
だけど、声から、言葉から、ユノの言わんとすることが分かって…イラっとする。

「そんな覚悟じゃ勤まらないから辞めろとでも?」

ユノは答えない。
表情に少しの変化もない。
こんな時だけ読めない顔をするの、やめてほしい。

確かに心配している。めちゃくちゃ心配だ。
あんなことがあった後だし、ユノを守れるのは自分だけだから。
それがモデルをやる気になった理由でもある。
だけどその根本にある覚悟なんて、とうの昔に持っている。
ユノと2人で何日も何回も幾度となく、悩み、落ち込み、恐怖に追われながらも、考えて、考えて、答えを出した。

それをどうすれば説明できるのか。
伝えられるのか。

この世界のユノに。



「……ごめん。」
「何に対する謝罪ですか」
「ほんとに悪いと思ってる」
「だから、」
「辞めろって言ってやれなくて」

………ん?
ユノの言葉を頭で反芻したことろで違和感に気づく。

「…えと、辞めろって言わないんですか?」
「当たり前だろ?」
「当たり前なんですか?」
「うん」

相変わらず深刻な顔をしたまま、こくりと頷くユノ。

「なんですか!…思わせぶりな…まったく」

辞めさせる辞めないで口論になりそうだと思った予感は見事に外れていて、思っきし脱力する。

「今日、俺はお前と仕事したいと思ったんだ」
「撮影が上手くいったから?」
「もちろんそれもある。けど……それ以上に、お前が隣にいんのが心地いい…てか、
 しんどいこととかあるけど、お前がいてくれるだけで乗り切れるっつーか。
 お前と一緒なら上も目指せるんじゃないかなって…
 悪い、全部自分の為の理由しかないんだけど、俺とやろう!ついてこい。

 ………って、お前…すげーなんか嬉しそうだな?」

照れ隠しなのかまくしたてるように言ってから、しげしげと僕の顔を見て首を傾げる。


ユノは知らないだろうけど、誰でもなくユノに頼られるって、仕事で頼られるって…めちゃくちゃ嬉しい。
今なら垂直の壁も勢いで登れそうだ。



「……なんだかプロポーズされたみたいで」
「プロポっ…!し、してないし!」
「だから、みたい、って言ったでしょ」
「え、…うん、言った…
 …んで、どーなんだよ。」


僕の答えに緊張しているのか、少し唇を尖らせつつ、答えを急かす。
まったくこの人は…僕が辞めたいと言うとでも思っているのか。
顔が溶けてどうしようもない顔をしていると、僕自身が自覚しているのに。


「今日から、東方神起、結成です!」
「とーほーしんき?」
「そうです。東の方から神が起きる。」
「…おーっ!!カッコイイな、それ!」
「でしょ。まずは僕ら2人。こっそりはじめましょう?」
「いいよ、いいよ、いいねーそれ!!!楽しそうだ!!」

目をキラッキラさせてユノが言う。
そしてガシッと手を組んだ。

「ありがとう、チャンミナ。」
「どういたしまして。でも忘れないでください」
「何を?」

戦友なノリも悪くはないけど、ただの戦友になっても困るから、
クギはさしておく。

「ただのメンバーではいませんからね。
 絶対ユノヒョンの“いちばん好きな人”に昇格しますから」


ユノはぱちぱち目を瞬いた後、まるで仕方ない奴めっていうみたいに笑った。


「なんだよ、わかんねーの?」


セカンド。
セカンドだよ。
また謎かけに戻る。
ってゆうか、それについて聞いたはずが見事に話題転換されてた。
でも戻ってきたから、今度は素直に言う。


「わかりません。だから教えてください。」
「ん~そうだな~」

ユノはよいしょ、と中腰になり…
顔が近くなったと思ったら、

ちゅぱ。

なんか可愛い音を立てて口端から離れていった。
そして、


「……て、ことだ。」


って言った。

そして、口をぱくぱくさせて言葉にならない僕に


「鈍いよな~、チャンミンて。」


って、ため息混じりに、言われた…。






end..

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こんにちわ、お元気でいらっしゃいましたか。
9/3の広告用なのでしょうか。ダンシングユノ!もー、キング。キング!!超絶かっこいいやないですか!!!
…って興奮された方も多いはず。
もちろんチャンミンも鼻高々でしょう。僕のひょん、僕のひょん、すごいしょう?って。
しかも二人が会っている情報が出てましたね。
やっぱりふたりがいい。ふたりいっしょがいい。またふたりを一緒に見られる日を楽しみに待っています。

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コメント

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| 2016.09.06(Tue) 01:35:13 | | EDIT

ありがとうございます。

>チカ* さん

いつもほくほくのコメントありがとうございます~v
ユノさんに鈍いとか言われて、チャミ様は相当心外でいらっしゃることでしょう(笑)
何気にタレ学は完結にしてみましたがw
僕らは文章でユノチャミとほくほく幸せになりましょう♪ぷぷぷ。


>nemomo さん

更新のたびにコメントくださってありがとうございます~!
しかもタレ学を楽しみに待っていてくださっていたなんて…半年も放置してしまってすみません。
決してプレイの一環ではありませんww
そんなタレ学ですが完結にしてみました← 僕らの、とタレ学、合体編をはじめてみたいとおもいます♪

YUKA | 2016.09.09(Fri) 14:46:52 | URL | EDIT
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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。