チーン。


エレベータの音。

目の前の男の眉尻がぴくと動く。



降りてきたのは、僕が待っていた人物、チャンミン君だった。













     【僕らの、/08-6.ジョンホside3】











僕は自分の目を疑った。
さっきまで、あんなに…あんなにも完璧に感情をコントロールしていると思った男の
まさに、今の感情が明確に読み取れてしまったから。

目の前の男は、顔を凝視している僕に気付いて、
まるで風が吹いて飛んでったかのごとく自然に顔を改めた。


でも、



「っ!ふ…はははは」



我慢できなかった。
もう見てしまったから。


急に声をあげて笑いだした僕に、表情を取り繕うのは遅かったと悟ったらしく
バツの悪そうな顔をして口元に手を当てた。

それがさらに僕の笑いを誘う。
この男をからかってやりたいのに、笑いが…笑いが止まらない。


「…人が悪いですよ…先輩」


そんな僕を困ったように眺めながら、溜息混じりに呟いた。

男の雰囲気は優等生君に戻っていたけれど、
さっきまでの優等生君とは違って、どこか遠慮のなさがうかがえる。


「はは…っは~、ごめん。君があまりに分かりやすい顔をするもんだから…」


人前でこんなに爆笑してしまうなんて。
笑いすぎて苦しくなった腹をなでながら、いたずらっぽい目を向けた。










“会わせたくない”


目の前の男が見せた感情だ。

誰に誰をって、もちろん、僕に彼を、だ。



彼を奪う。



そう挑発した直後のことだし、当然といえば当然の気持ちだ。

僕があれだけ揺さぶりをかけても何の反応も示さなかったけれど
確実のこの男の中に積もっていたのだろう。



“自分の感情を一切漏らさず、制御できる”



間違ってはいないけれど、僕と同じで
彼のいる空間では制御できない部分があって
それをこの男も知っている。


がっかりしたわけではない。
むしろ、そんな一面を知った瞬間から、ユノ・ユンホという人物に好感がわいた。



完璧すぎる人間なんて、遊びようがなくてつまらない。










「僕と君が異様な雰囲気で向かいあってるから、チャンミン君、驚いちゃってるよ?」

ユンホ君の肩越しに見える彼に目を向ける。
エレベーターの前から一歩も動いていない。

「先輩の笑いっぷりに驚いているんだと思いますよ」
「そうだとしたら、君が僕を笑わせたせいだね」
「……」

苦笑。
まさに返す言葉がないといった感じだ。

完璧に僕のペース。
さっきはこの僕を弄んでくれたのだから、ちょっとは仕返しをしないとね。


「チャンミン君にも挨拶したいんだけどいいかな?」


にっこりと笑って要求する。
先輩という立場を利用すれば、よもや断ることなんてできないだろう?

それはユンホ君も分かっているらしく、努めて表情を動かすことはなかった。

「もちろんです」

そう言って後ろを振り返ると、彼に向かって手招きをした。




彼は恐る恐るといった感じでユンホ君の三歩後ろの位置まで来ると立ち止まる。
そして深々と頭を下げた。
僕から声をかける。

「さっきはどうも。急におしかけちゃってごめんね」

ユンホ君の驚きを含んだ視線が僕に向いた。
たぶん、彼に対する声の甘さが二重人格レベルだったからだろう。

「いえ、とんでもないです。本来はこちらから伺うべきですのに…」
「うんうん、全然いいよ」
「…ありがとうございます」
「それにしても長時間の撮影だったんだね。おつかれさま」
「いえ、僕らよりスタッフのみなさんが頑張ってくださったので
 予定通りに終えることができました」

本当に礼儀正しくて感謝を忘れない子だ。

けれど今の気分は針のむしろといったところだうか。
どう考えても和気あいあいといった雰囲気ではないから。
目の端にユンホ君を捉えていて、様子を気にしている。

ユンホ君といえば知らんぷり。
口を開いた分だけ僕にからかわれるとわかっているのだろう。


もっと遊びたいたいのはやまやまだけれど
彼を困らせるのは本望ではないし、
仲良くなるチャンスはまた作ればいい。


「さて…引き止めても悪いし、そろそろ失礼するね」

ここはスマートに引こう。

「とんでもないです。お話できてよかったです」
「うん、じゃあまたね」


僕が彼の方へ一歩踏み出そうとする前に、スッと体が割って入ってくる。
ユンホ君だ。



彼の姿が、ユンホ君に隠れて見えなくなった。



彼をハグしようとしたことがわかったのだろう。
表情は温和だけれど、許容範囲はここまでという意思表示。

目の前にいながら、見て見ぬふりなんてクールな行動が出来なかったユンホ君の
精一杯…いや…本能的な行動に違いない。



奪う宣言をした僕に彼を会わせたくはないけれど、
独占欲を丸出しにもできない体面。

自分の気持ちのままに行動するわけにもいかない立場。

拳を握って、耐えることも多かったに違いない。


それでも優先すべき信念ともいえる強い気持ちがあって
僕には想像もつかないものを背負い、守りたいと思っているから
今の…自分を御することを当然とするユンホ君が在るのだろう。



そんなユンホ君を見て、僕は急に…さっきまでは嫌がらせをするつもり満々だったのに
ほんとに急に、抱きしめて、頭を撫でてやりたくなった。



だから、彼じゃなくて、
彼の前に立ちふさがる体を抱きしめる。

今の気持ちがそのまま言葉になって、口から出た。


「なんだか君が、可愛くなってきちゃったよ…」


もちろん恋愛感情などではない。
僕の心を持っているのはチャンミン君だ。

ただ、母性本能に近い何か…それを僕は抱いてしまったのだろうと
自分で自分を分析していた。




「先輩…」

ユンホ君の手が僕の背をトントンとたたく。

「…ちょっと長すぎます」

笑いを含んだ声がそういった。

ユンホ君から離れると、今日初めてかもしれない、
親しみを感じる笑顔が僕に向けられていた。


抱きしめた理由が分かったのかもしれない。

「抱き心地はまぁまぁかな」
「それはありがとうございます」
「本当はもっと細身の体を抱きたかったけど…誰かさんに邪魔されちゃったしね」
「そうなんですか?残念ですね」

顔は、全然残念そうではなかった。
僕は笑ってしまう。


なぜだか、何年も付き合ってきた人間のような
そんな気安さを感じていた。

数分…話しただけなのに。

ユンホ君という人間を理解した気になっている。
そしてユンホ君も、僕という人間を理解しているのだろうと思った。




「チャンミン君、ご飯はまた今度行こうね」

ユンホ君の横からひょいと顔を出すと、彼に声をかける。

しかし反応はなく、
おっきな目でじっとユンホ君の背中を見ていた。

「…チャンミン君?」

もう一度呼ぶ。
ユンホ君も振り返った。

するとやっと気づいたかのように、視線が僕に移り
慌てた様子で笑顔を浮かべる。

「あっ、はい」

聞いていたのか聞いていなかったのか曖昧な様子。

「ユンホさんも一緒に、また誘ってやってください」

ちゃんと聞いていたらしい。

3人で食事…2人もいいけれど、それはそれで面白いかもしれない。
ニンマリ笑いそうになるのは我慢して、
脳内とは反対の紳士的な笑顔を浮かべた。


「そうだね。じゃぁ、また」


僕は二人に手を振る。
右手を上げ、指をひらひらさせて。

いつもの僕のキャラクターだ。



去り際はスマートにカッコ良く。



二人は揃って頭を下げる。
僕が彼らの視界から消えるまで、見送る視線を感じていた。









end..


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いっこ前の話は何だったの…!?
ごもっともです。私もびっくりしました(笑)
そんなつもりはなかったのですが、
いくらユノでもポーカーフェイスは保てませんでした。

そして、今回は前フリ感出過ぎですかね…DOGEZA。
08は長くなったので、キリのいいところで09へ。
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コメント

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| 2013.09.14(Sat) 00:05:48 | | EDIT

ありがとうございます。

さ** さん

こちらこそ、ありがとうございます^^
チャンミンは博愛主義・ユノの唯一の特別ですからね!!
苦悩ふる二人…というか主にチャミ様のような気もしますが(笑)
見守ってあげてください♪

YUKA | 2013.09.14(Sat) 10:22:54 | URL | EDIT
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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。