上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「彼をもらっても、いいかな?」


そう聞いたら、どう答えるのだろう。

ちょっとは優等生然りとした顔を崩せるのだろうか。












     【僕らの、/08-5.ジョンホside2】











仕事を終えて待つこと2時間弱。
1階のエントランス横に設置されているサロンに座っていた。

彼と約束していた時間まであと少し。
けれど、実は5時間ほど前、マネージャーから丁寧な断りの連絡があったのだ。

にも関わらず僕がここにいるのは、ただ単に彼の顔が見たかったからに他ならない。

たかがそれだけのために貴重な時間を費やすなど、これまでならあり得なかった。

僕を良く知っている人間がこれを聞いても、100%信じはしないだろう。
そのくらい、特別なことだ。

しかも、すれ違いになったら困るから、
この場所から一歩たりとも動いていない。

自分にこんな健気な一面があっただなんて…
マネージャーが知ったら「イメージ崩れるからやめてください」って
泣いてお願いされたかもしれない。





チーン。

エレベーターが降りてきた音。
彼だろうか。
扉を見つめる。

しかし左右に開いたドアから現れたのは、…僕の期待した人物ではなかった。
黒い革のライダースに白いパーカー、大柄のTシャツ、細身のパンツといった出で立ちの

    彼の想い人。

凛々しい眉。きれいなアーモンドアイ。小さな顔。
長くて細い手足。バランスのとれた体躯。ライダースが似合いすぎだ。
鞄を肩にかけて歩く姿は、モデルと見間違うくらい様になっているし。
同じ男として、カッコイイと思わされるのは、正直、癪だ。

こちらの方に向かって歩いてくるけれど、僕に気づいた様子はない。



どうしようか。

このままやり過ごしてもいいけれど…
ちょっと興味が頭をもたげる。


彼が心を寄せる男がどんなものか。
彼のことをどう思っているのか。
そして僕のライバルとなりうる人物なのか。

それを知っておくのも悪くはない。



僕はガタッと音を立てて立ち上がった。



ここで初めて、視線がぶつかる。
一瞬驚いたような表情を見せた。
僕は優雅に片手を上げて軽く挨拶をしてみせる。

すると、アイドルらしい爽やかな笑顔を満面に浮かべながら
僕の前まで駆けてきて、深く頭を下げた。

その上から声をかける。

「ユノ・ユンホ君だよね。こんばんは」
「声をかけていただいて恐縮です。ジョンホ先輩のご活躍、いつも拝見しています」

頭を上げて僕に向けた笑顔は完璧。
社交辞令ではない尊敬の念が込められている。
悪い気はしない。

「噂はかねがね聞いているよ。カムバックおめでとう」
「はい、ありがとうございます」
「それにしてもすごい人気だね~」
「とんでもないです。ジョンホ先輩に比べたらまだまだなので、僕らも頑張ります」

ハキハキした受け答え。
優等生な態度。


けれど、…そんなものはどうでもよかった。

僕が知りたいのは上辺の、対外用の顔ではない。
笑顔の奥に隠された感情を探り出したいのだ。

この顔を崩すことができて初めて、見えてくるもの。

それを僕に見せてほしい。





   さて、どうしたものか。



昼間の、彼と僕とのやり取りは知っているのだろうか。
ちょっと大げさに匂わせて揺さぶってみるのもいいかもしれない。

そんなストーリーを立てていたら、先に目の前の男が口を開いた。

「今日、わざわざ楽屋に来てくださったみたいでありがとうございます。
 本来はこちらからご挨拶に伺うべきですのに、申し訳ございませんでした」

マネージャーから聞いたのか。
それとも彼から聞いたのか。

でも話の流れは作らずともできた。

「たまたま時間があって、ふらっと寄っただけだから気にしなくていいよ」
「そういっていただけると、心が軽くなります」

胸に手を当ててなで下ろす仕草。
どこからどう見ても、礼儀正しい後輩だ。



…そんな男を精神的に揺さぶっていこうとしている僕が
まるで悪者みたいな気になってくる。


でも、ごめんね。

心の中で謝りながらも、まずは一発目。


彼のことをどう思っているの?
それを教えてもらおう。




「チャンミン君って、男の子なのに、ほんと美人だよね」



他の男からの好意を匂わされたら、心配になるのが男心ってやつだ。
しかも、プレイボーイの代名詞であるこの僕が相手なのだから。
目の前の男の顔色を注意深く伺う。

意図を測りかねているのかな?

表情に変化は見られない。



「…パフォーマンスの時はセクシーなのに、可愛い顔も持っていて
 凄く気に入ったよ」



“凄く”を強調しながら、彼に後輩としてじゃない感情を持っていることを
言葉と、表情と、声に含ませる。


しかし、返ってきたものといえば、肩透かしもいいとこだった。



「ありがとうございます。チャンミンの魅力を知っていただけて良かったです」



まるで自分が褒められているかのように、嬉しそうな顔をしたのだ。

驚き。
困惑。
動揺。
不審。

何らかの感情の揺れがあってもいいはずなのに。
優等生は1ミリも崩れない。


もしかして、さらっと流された…?



彼を弟としてとしか見ていないからこその反応というわけではなく、
かわされた、そんな感じが否めない。

…いやでも、恐ろしく空気の読めない男という噂を聞いたことがある。
そうであれば、もっと踏み込んだ一手を出さなければならない。



内心の動揺を抑えるために、咳払いをひとつ。


よし。
じゃあ、気を取り直して二発目。


秘密にしていたことを友人に告白する決心がつきかねているかのような
迷いを抱いた顔をしてみせて、


「…それと、これは…君に報告すべきかな…」


顎に手を当てて視線を足元に落とす。
しばらく黙っていたら、彼のほうから控えめに聞いてきた。


「どうかされましたか?」


僕の深刻そうな雰囲気を気遣っているような声。

演技なのに、本当に心配してくれているようで…また心の中でごめんねと謝る。
けれど、謝りながらもちょっとわくわくした気持ちを自覚していた。



「僕さ、チャンミン君に…」



ゆっくりと視線を上げて、たっぷり目の前の男を見つめる。

さて、優等生君はどんな顔を見せてくれるのだろう。





「………惚れちゃったんだよね」





息を飲む気配。
目を丸くして驚いた表情。
しかも口がぽかんと開いている。

たしかに感情の揺れは見えた。
でも、―――不満だった。



何が不満って、これだけはっきり口にしたら、誰だって驚くだろう。
当たり前だ。

そう、その“当たり前”が問題なのだ。
それ以上の反応が見られない。


さっきと変わらない、優等生の続きだ。


しかも、しかもだ!

僕の機嫌が低下していくのに気づいたのだろう。
自分の態度に問題があったせいで僕が気分を害していると判断したようで、
礼儀のなっていないことを恥じるように申し訳なさそうな顔をする。


でもすぐに、場の空気を払拭するくらいの明るい笑顔を浮かべて


「ありがとうございます。そんな風に言っていただけると
 チャンミンも喜ぶと思います」


むしろ誇らしいといった感じの言葉が返ってきた。


「………」

逆に言葉を失ってしまう僕。
唖然といわず、なんといおう。

僕の告白は…恋愛感情としてではなく、ただの褒め言葉のひとつとして
受け取られたのだ。







   これは…これは、どういうことだ。


頭の中は恐ろしいほどに回転し始めていた。

まずは現状を分析する。

一発目の結果からわかること:意図的に流した、もしくは、空気が読めない
二発目の結果からわかること:男が男に恋愛感情を抱くなど考えてもいない

次に、目の前の男の言葉、行動、仕草、表情を思い出す。

心理学を勉強して訓練を積めば、目や顔の筋肉の動きを見ただけで
本当のことを言っているのか嘘をついているのかを判断できるようになる。

たいていの人間は隠すことができないから
心の動きや考えていることが出てしまうものなのだ。

僕は、それを見落とさない自信がある。

けれど思い返してみても、目の前の男から見えたのは言葉どおりの気持ち、それだけ。
嫉妬や苛立ち、ましてや含みのある負の感情なんて、一切垣間見えなかった。

それらの結果を踏まえると結論は一目瞭然で、


“彼に特別な想いを抱いていない”


つまり彼の想いは一方通行であり、この男は僕のライバルになり得ない。
そう判断するのだが…

しかし、今回ばかりはこの読みが間違っている気がしてならなかった。
僕の直感が告げる。


“この男は、自分の感情を一切漏らさず、制御できる”







そんな考えが頭に浮かんだとたん、この男を揺さぶる方法を間違えていたと気付く。
同時に、

この“余裕”を奪ってやりたい。
その隠された、本音を晒して見せろ。

普段、心の奥底にしまっている攻撃的で黒い感情が湧き上がってきてしまった。


キャラクターというもうひとつの僕を前面に出すことで
どんなときでも完璧に抑えていたのに。

よもやこっちの感情が引き出されてしまうとは。




いいだろう。
体面をつくろうのは、これまでだ。







おもむろに右手を持ち上げて、髪をかきあげながら視線を落とす。
かっちりキメていた髪が崩れて、真ん中で分けられていた髪が右側に落ちた。

一気に艶かしさが際立つ。

ちょっと顎を上げて首を右側に傾ける。
そして、甘くて甘くて優しくて、フェロモンにまみれたそんな流し目を
目の前の男にくれてやった。


感じてる?
雰囲気の変化を、全身で。


愛されキャラも、オトナらしさも、先輩としての在り方も、
ぜんぶ、捨て去る。





「彼…もらって、いいかな?」





目の前の男から引き出したい分だけの、本音を口にした。

気遣いなんて含まない。
ただただ、自分の欲を、そのまま声に乗せる。


男の瞳が、初めて揺れた。

動揺。
疑念。

本気か。遊びか。冗談か。
それが知りたい?


教えてやる。







「でも…彼、君のじゃないみたいだし…
  手を出すのに、許可はいらなかったね」






顎に人差し指を添えて、笑いを含んだ声で挑発した。

この僕に、堕とせない人間なんて万に一人もいない。
それが僕の作り出してきた魅力であり、自信だから。

そんなに余裕ぶっこいていていいのかな?

言外に問いかけながら肩をすくめる。




すると、…男の瞳が、スッと細くなった。
僕の本気を悟ったのだろう。

僕の挑発は成功したらしい。



もうそこに、優等生の顔はなかった。
笑顔が消えた、それだけで周囲の空気が一気に冷えた気がする。

思わず後ずさりたくなるほど、真っ直ぐで強い視線が僕を捉えた。






「ジョンホ先輩」

僕の名前を呼んだ声は、さっきより透き通っていた。
感情を排除したという意味ではない。
何も含みも、隠し事も、取り繕ってもいないとわかる、素の声。




「チャンミンは誰のモノでもありません」




事実を淡々と告げるような、そんな口調。
口調と同じで、男の顔に表情もない。

けれど、僕は肌で感じる男の変化に、体が震えるのを抑えられずにいた。
現状を言葉では上手く表現できない。
目の前の男が発する気に、意思とは無関係に体が反応しているだけだから。



「でも…」

男は自分の心を覗き込むかのように、ゆっくりと胸に手を当てた。
そして、







「…誰かに譲る気もありません」







ひと言、そう口にした。


知りたかったこの男の本質。
知りたかったこの男の本音。

なのに、何故だからからないけれど、
それを見せられてひどく動揺している自分に気づく。





「君は…彼のことを…」




口から漏れたのは問いかけではない。
取り繕った魅力で自分を覆っている僕からこぼれてしまった、
単なる心の声だった。


それに目の前の男も気付いたのだろう。


ふっと、口元に笑みが浮かんだと思ったら、
冬が春に変わるかのごとく、空気が和らいだ。


それから、見とれてしまいそうになるくらい
純粋で、綺麗で、幸せそうで、でもちょっと照れたような顔をする。


僕に向けたものではない。
此処にいない、だけどこの男の中にいる彼に向けた笑顔だった。






僕の呟きに、肯定も否定もしなかったけれど

それがすべての答えだと思った。










続く



↓ランキング参加中です。楽しんで頂けましたらポチっと。励みになります!!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村


文字で表現するってむずかしい。
私の拙い日本語でどこまでお届けできるのやら…

あまり派手な展開にはなりませんでしたが
みなさんの脳内でいい感じに再現されていれば嬉しい限りです。
スポンサーサイト
コメント

今回の展開は難しかったんだろうなと
思いました。
内容的にはやっぱりこうだよなと納得できましたしほんと、文章で人に伝えるのは難しいですね
でも、いつも楽しませてもらっています。頑張ってください。

ももと申します | 2013.09.06(Fri) 06:20:11 | URL | EDIT

すごい伝わりましたよ!(゜ロ゜;
ってか私が思うユノって本当にこのくらい完璧に自分の感情を制御できる気がしてたので、すごいピッタリでそれがジョンホさんの目を通してなのが更にうまくいってとてもドキドキしました!このくらい一人のキャラクターの性格を矛盾なく仕上げるって素晴らしいと思います!(≧▽≦)
いつも更新待ってます!次回も宜しくお願いします!

すみません | 2013.09.06(Fri) 09:46:37 | URL | EDIT

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| 2013.09.06(Fri) 17:38:00 | | EDIT

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| 2013.09.06(Fri) 23:16:44 | | EDIT

ありがとうございます。

>ももさん
おっしゃるとおり難しかったのです~(汗)バレちゃってましたね。失礼いたしました。
温かい目でみてくださってありがとうございます!
もっとリアルに想像していただけるよう、文章力UPに励みます!!

YUKA | 2013.09.07(Sat) 00:25:54 | URL | EDIT

ありがとうございます。

>すみません さん
いつもコメントありがとうございます!
拙い文章で恐縮ですが、そう言って頂けると励まされます(T▽T)
私のユノヒョン像とぴったり重なっていたみたいで、よかった!
ユノの感情制御を崩せるのは最強様しかいないでしょう(笑)

YUKA | 2013.09.07(Sat) 00:31:42 | URL | EDIT

ありがとうございます。

>ha** さん
嬉しいお言葉ばかり…恐縮です!
日本語の知識不足であわあわしていますがそれでも、そんな風に思っていただけて
さらに妄想を拡げるお手伝いができるなんて、光栄すぎます!
続きも楽しんでいただけるようにがんばります(^▽^)

YUKA | 2013.09.07(Sat) 00:39:35 | URL | EDIT

ありがとうございます。

>さ** さん
あのシークレットボイス上から目線的なあのシーンですね!!
自分で言うのもなんですが、私も書きながら妄想して「ユノーっ」てなってました(笑)
いやいや、失礼いたしました。ありがとうございます。
ここのところ展開が地味ですが、胸きゅんをもっとお届けできるようにがんばります★

YUKA | 2013.09.07(Sat) 00:47:38 | URL | EDIT
コメントを投稿する
 
 
 
 
 
 
 
 
トラックバック

プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。