目を見ただけで、考えていることはなんとなくわかる。


でも、初めてこの瞳の色を見たとき、わからなかった。
そして二度目の今も、わからずにいる。

だから、



     どんな想いを僕に向けているんですか




その瞳に、問いかけた。











     【僕らの、/08-3.】










二人がいない間に、準備は終わる。
スタッフは、時間になったら呼びに来ますと言い残して、楽屋を後にした。

広めの部屋に、僕ひとり。

鏡の前を離れて、ユノが座っていたソファーに腰掛けた。




廊下の二人が気になったが、手の中にある携帯の確認が先だ。

本当にメールを送ってくるなんて…
本来は有難いことなのだろうけれど、気が重くて仕方がなかった。

ため息を漏らしながらブラックアウトさせていた画面を付ける。
またあの写真を見ることになって無駄に気持ちが沈むけれど、
見なかったことにして、恐る恐るメールを開いた。


『今日は20時終わりの予定だよね。美味しいイタリアンを食べに行こう。
 マネージャーにはOKもらってるよ♪』


マネージャー!
思わず天を仰いでしまう。
本日2回目だ。マネージャーを恨めしく思ったのは。


正直、ふたりっきりでご飯に行くなんて、間が持つとは思えない。
昼間の事もあるし、僕としては、仲を深めたいとも思えなかった。

先約があるとか、仕事が入ったとか、体調が悪いとか。
マネージャーには申し訳ないけれど、嘘をつくのも方便だ。

チラと時計を見る。
今日の今日の話だ。早く断らなければ。


『せっかくお誘いいただいたのに申し訳ありません。今日は』


そこまでメールの文面を作るけど、ひとり愚痴る。

「…先延ばしにしてもどうしようもないか……あ~もーっ!」

額に手を当てる。
じゃぁいつにしようかとつっこまれたら、約束という形で話が進んでしまう。
それは今断るより、面倒なことになる気がしてならない。

とはいえ大先輩だ。
下手に角を立てたくはない。
それこそユノにまで迷惑をかけてしまいそうで、それが一番怖い…


発端はマネージャーなのだから、ここはやっぱり
マネージャーになんとかしてもらうのがいいだろう。


せっかくセットしてもらった髪だけど、
思いっきりぐしゃぐしゃにかき混ぜてしまいたい心境だった。









ガチャ。

再びドアの開く音。

戻ってきたのはユノだけだ。

「マネージャーは? まだ廊下にいますか」

相談ついでに文句も言わないと気が済まない。
勢いよく立ち上がってドアに向かうが…足を止められてしまった。


ユノがバタンとドアを締めて、そのままドアに背を預けたから。
そして、ちょっと上を見上げて息をつくと、そのまま僕に視線を投げかけた。

「マネージャーにはお使い頼んだから、今いないよ」
「そうですか…」
「で、チャンミン。さっきの続き…」

ユノはゆっくりとドアから身体を離すと、
こっちに向かって歩いてくる。

「……しようか」

身体がビクついてしまう。
続きとは、ジョンホ氏のことだろうが、身体の反応はユノの纏う雰囲気のせいだった。
感情をあえて押さえているのに、漏れた一部が落ちて波紋を広げていく、
そんな感じ。

怖いわけじゃないけれど、僕の足はユノが距離を詰める分だけ下がってしまう。
そしてソファーが足に当たったと思ったら…
体勢を崩す形でソファーに体が落ちてしまった。


ユノを見上げる。
ユノが見下ろす。


ユノはギシっという音を立てて、膝からソファーに乗り上げた。
それから僕の位置より奥にある肘掛けに手をかける。
僕は追いつめられる形で、ソファーとユノに囲まれた。


「ちょっと、ヒョン…」

焦ったような声が口から漏れる。

甘い雰囲気とか、そんなんじゃない。
ただただ近くなった分だけ、圧迫感がきつかった。
身体を逃がしたいけれど、もうスペースはない。
だから両手でユノの胸を押してしまう。

すると一瞬ユノが悲しそうに顔をしかめたから、
慌てて突っ張っていた手の力を抜いて、ぎゅっと拳を握った。


話をするだけなのに、こんな風に迫られる理由が分からない。

一体何だというのだ。

探るように瞳を見返す。




そこで…初めて気が付いた。
この瞳の色には、見覚えがある。

そう。ついこの間見たのと同じ。
僕の膝の上から見上げてきた瞳と同じ色だ。

あのとき、正体が分からなかった。
今も…探ってはみたけれど、わからない。

どんな想いを含んでいるのだろう。
僕の知らないユノの一面?
追いつめられている現状もなにもかも頭の隅に追いやられて

今、知りたくて、たまらなくなる。


「教えてください」

ユノの行動の答えも、この瞳の色にあるのだろうけれど
読み取ることができない僕は、いちばん分かりやすい、言葉を要求した。

ユノは首を傾げる。

「教えて欲しいのは、俺の方なんだけど?」
「僕が先です」

間髪入れずに言って、指を伸ばすと目元に触れる。
そしたらユノは、毒気を抜かれたように目をぱちぱちして、ふっと笑みをこぼした。
目が伏せられる。

圧迫感が消えた。

「いいよ。なに?」

再び僕を捉えた瞳には甘さが加わっていて、あの色は薄まっていた。
だから、消えてしまわないうちに聞く。

「今何考えていましたか?」
「チャンミンにキスしたいなって考えてたけど」
「……は?」

普通に返ってきた答えは予想外すぎて、顎が外れそうになる。

キス?
キスって、僕に?

「いい?」

僕は何も言っていないのに、顔が近づいてきた。

「口、開けててね」
「へ?」

チラと覗いた赤い舌に目が吸い寄せられる。
これからユノがすることが想像できてしまって、顔が熱くなった。


本気ですか。
急にどうしたんですか。
なんで僕にキスしたいんですか。

色々な疑問が一気に押し寄せるけれど、ひとつだけわかっていることがあった。




嘘じゃないけれど、
本当のことは言っていない。




近づいてくる表情がどんどん扇情的なものに変わっていくから
見とれてしまいそうだったけど、


「…ちゃんと、教えてください」


唇が重なってしまう前に、なんとか口にする。

ユノの動きが止まって、そして少し距離ができた。

顔を伺う。

すると、困ったように、笑った。












そのとき。


コンコン。
ドアを叩く音。

ユノはふいとドアの方に顔を向けると、
ソファーから足を下ろしながら「どうぞ」と声をかけた。
覗いた顔はスタッフだ。
準備ができましたとのこと。

ユノは僕を振り返る。
いつものユノに戻っていた。
もちろん瞳に宿っていた色も、きれいに消えている。
完全なる仕事モード。

「さ、行こうか」

それだけ言ってドアに向かおうとするけれど、僕はその背中に声をかけた。

「あとで、話ましょうね?」

ユノはぴたっと足を止めると、ゆっくり振り返る。

「…チャンミナ~」

さっきと同じ、困った顔だ。
でも、今日は引いてやらない。

「誤魔化されると思ったら大間違いですよ」
「誤魔化してなんかいないよ」

ユノはすっとぼけながらも、仕方ないなというふうに笑った。
けれど、頷くこともなかった。

「…さ、行くぞ」

早くおいでと手で僕を呼ぶと、先にドアの外に消えていった。








僕もドアに向かうが、鏡の前で立ち止まって、自分の顔を確認する。

赤くない?
大丈夫?
いつもの顔ができてる?

何でもないふりをしていたけれど、
キスしたいと言われたことに、心を乱されていた。
今も心臓がバクバクしている。






本当に、そう思っていたのだろうか。
僕に…僕と、そういうことがしたいと、本当に思ったのだろうか。


それとも…話を反らすためだけにとった行動なのだろうか。


心の中からユノに問いかける。
もちろん答えは返ってこない。

知りたいことが、またひとつ増えた。







続く



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寸止め感……
たいへん失礼致しました。

なんかこのままお話が進むと“08シリーズ(?)”でふたりが一線を越えてしまいそうで、
私は恐れおののきつつもどきどきしているわけですが…
どうか、そうならないように祈っていてください(笑)
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コメント

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| 2013.08.23(Fri) 11:15:44 | | EDIT

ありがとうございます。

そんなに萌えていただけるなんて(笑)
なんかだらだら長くなりそうなのですが><続き、がんばります!

YUKA | 2013.08.24(Sat) 11:54:39 | URL | EDIT
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YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。