一喜一憂。
僕の感情は、振り回されてばかりいる。











     【僕らの、/08-2.】












「おつかれさまです」

廊下を通るスタッフに挨拶をしながら『東方神起』と書かれた楽屋に戻ってくる。
1本目は僕だけだったけど、2本目はユノも合流しての仕事だ。
もしかしたら、もう来ているかもしれない。

気持ちが急いで、勢いよくドアを開ける。


驚いて顔を向けたのは、メイクさんやスタイリストさん、スタッフだけで
その中にユノはいなかった。

念のため、中に入ってもう一度ぐるっと部屋を見渡してみる。
やっぱりいなかった。


「………ユノヒョンは?」

振り返って、後ろからついてきていたマネージャーに問いかける。

「もう、到着していると思いますが…」

切羽詰まったような気持ちが顔に出ていたのだろう。
マネージャーは少し心配そうに眉をハの字にして、そう言った。

直後、ガチャリという音と同時にドアが開く。
マネージャーの後ろからひょっこり顔を見せたのは、ユノだった。


「お、チャンミン~。おつかれさん」

「…ヒョンっ!」

ユノの姿が目に入った瞬間、
この感情がどんな種類かわからないけれど、衝動が込み上げる。

そのせいか、頭で考えるより先に体がユノに向かうが、
一歩も踏み出さないうちにマネージャーにぶつかってしまった。

「!、すいません…」

慌てて体を引いて、揺らいだマネージャーの体を支える。

そうだ、僕とユノの間にはマネージャーがいたのだ。
ユノしか目に入っていなかったらしい。

少し冷静になる頭。

場所もわきまえずに何をしているんだか。
ぶつからなければ、うっかり抱きついてしまっていた気がする。
そういう意味では、マネージャー、ナイスブレーキだ。


ユノはといえば、僕の様子に驚いたように目をぱちくりとさせていた。

やっとユノの顔を見ることができた嬉しさと、
手の届く場所にいる安心感が出すぎていたのだろう。

声にも、態度にも。

ユノは敏感に感じ取っているに違いない。


僕がそんなことを分析している間に、察したらしいマネージャーは
こちらこそすみませんと言いながら身を小さくして
そそくさと僕らの間から脱出した。

ユノはマネージャーのそんな背を可笑しそう見送ると
僕に目を戻して、口の端をくいっと上げた。
そして、

「そんなに俺に会いたかったの?」

知っているくせに、意地悪なことを言う。



    でも、この顔が見たくて、見たくて、仕方がなかったんだ。



ふだんの僕なら、「空気中にある水蒸気の粒程度です」などと
会いたかった大きさを表現していただろう。
けれど、今ばかりは冗談に少しだけ本音が混じってしまう。

「…あえて言うなら、これくらいです」

僕は自分とユノとの距離、1mくらいを手を使って表現した。

目の前にいなければ、会いたくなる。
目の前にいれば、触れたくなる。

冷静な頭では、1mの距離をゼロにする一歩すら踏み出せない。

そんな本音。


ユノは僕の言葉をどう受け取ったのだろう。
ぷっと吹き出すと

「ツッコミずらいっ!」

そうツッコんだ。
部屋にいたスタッフもそう思っていたようで、ユノにつられて笑う。
楽屋が和やかな雰囲気に包まれた。


「とりあえず、チャンミナ~」

ユノは少し首を左に傾けると、僕の方に右手を伸ばして目の高さまで上げる。
そして、僕に手の甲を向けたまま、くいくいっと指を曲げた。



「おいで?」


冗談の延長?
でも、ユノの目は、口調と違って冗談を言っているようには見えなかった。

だからかもしれない。素直に体が動いてしまう。
1mの距離を踏み出して、身体を預けると腰に腕を回してぎゅっとする。
そしたら、いい子いい子をするように、ぽんぽんと頭を撫でられた。

「…ヒョン……」

口から出たのは情けないことこの上ない声。
強がりの欠片も残っていない。
でも、安心感で満たされる。
心がユノでいっぱいになる。

僕にまとわりついていた匂いはユノの匂いで塗り替えられた。
ちょっと低い体温も気持ちいい。
離せなくなる。


スタッフはそんな僕たちを冗談の一部分であるかのように
笑いながら見ていた。





「何かあった?」
「えっ」

耳元で、僕にしか聞こえない声で問われる。
気遣いを含んだ声。

僕は言葉に詰まってしまった。
聞かれないわけがなかったのに…僕はその答えをもっていない。

ユノに何を言えばいいのだろう。

ジョンホ氏の行動が僕を不快にさせましたとでも?
そんな生意気なことを口にするなんて、僕のほうが怒られてしまいそうだ。
そもそも、ジョンホ氏にとっては僕をリラックスさせるための言動だったかもしれない。
そのことに漠然とした不安を感じてしまっただけのこと。

ユノには何も害のない。
むしろ、僕がユノに心配をかけている…迷惑以外のなにものでもないじゃないか。

だから、
「…何もありません」


そう言うしかなかった。




そんな僕の背中にスタッフから「お願いします」と声がかかる。
次の仕事の準備をしなければならない。ユノはもう済んでいるようだ。
音楽雑誌の取材だから、衣装もヘアースタイルも曲に合わせたイメージにチェンジだ。

「話は後でにしようか。さ、チャンミン、仕事だ」

前半は耳元で。後半はみんなに聞こえる声で僕を促した。
…何もないといった僕の言葉は、なかったことにされたようだ。


回していた腕をゆっくりと放して目を向けてうなずくと
にっこり笑ってうなずき返してくれた。





ユノがソファーに座っているマネージャーの隣に腰掛けるのを見送ってから
僕もスタッフに促されるまま、大きな鏡の前に座る。


そのとき、携帯がカタカタと音をたてた。
ガラスのテーブルの上で震えているのは、マネジャーに預けていたはずの僕の携帯だ。
そういえばすっかり忘れていた。

「マネー…」

取ってくださいとお願いするより先に、マネージャーがスッと腕を伸ばす。
それからチラと一瞬だけユノを気にするも僕に渡してくれた。

なんでユノを気にしたんだ?

マネージャーの行動を不思議に思ったけれど
渡された携帯を見て、思わず落としそうになってしまった。



メール新着。

それは普通だ。でも僕を驚かせたのは、背景に表示されている画像。
ジョンホ氏と撮ったツーショットだ。

あのとき感じた体温とクラクラする匂いが急に蘇ってきて、
思わず身震いする。
さっき忘れたばかりなのに。


グラビア写真顔負けの艶やかな笑顔を浮かべているジョンホ氏と
頬をくっつけて、はにかんでいる僕。
まるで僕がジョンホ氏のスキンシップに照れまくっているかのようだ。
しかも、しっかりと腰に回された腕まで映っている。
僕の気持ちとはまるで正反対の写真。

男同士でなければ、…完全にカップルだ。



マネージャーがすかさず携帯を取ったのは、こういう理由だったのか。
相手が男女ともにスキャンダルの絶えないジョンホ氏であるだけに、
人に見られると勘違いをされてしまいそうだ。

ってゆうか、この問題のある写真を設定したのは僕じゃないから、
マネージャーしかいない。

鏡越しに睨むと、両手を併せてごめんなさいのポーズをした。
ジョンホ氏が去り際にマネージャーと話していたのは、この設定をさせるためだったのだろうか。


ユノに目を向ける。
画面が見える位置に携帯があったはずだが、見ていないのだろうか。
スタッフと談笑している。


僕はほっとした。


…って、何に安心しているというのだ。
自分の心理に、思わずつっこみを入れてしまう。

ユノがこの写真を見ていたら、怒るとでも思ったのだろうか。



仮にだ。
見られたいわけじゃないけれど、
もしユノがこの写真を見たときの様子を想像してみる。


  良い縁があったんだな。
保護者であるかのような暖かい目で。
ありそう。

  実物どうだった!?
興味津々と身を乗り出す。
なさそう。

  俺にも紹介してほしいな。
友達の輪に参加を希望する。
…絶対ないな。希望されても紹介なんてしないけど。

  スキャンダルに巻き込まれないように気をつけろよ。
ジョンホ氏が相手なら、これをユノが心配する可能性は高い気がする。
東方神起にスキャンダルは不要だ。

  そんなに親しいの?
怒り気味に問い詰められる。
ちょっと…いや相当、嬉しくなってしまうかも。
でも、ユノはそういう目で僕を見ているわけじゃないし…やっぱり怒ることはないか。




僕の妄…想像はスタイリストさんの興奮した黄色い声に遮られた。

「わぁ、イ・ジョンホさんとの写メですね!? キレーっ! お似合いすぎますっ!!」

その声にビクッと肩がゆれる。
悪いことをしているのが見つかったときのような…そんな焦り。

後ろから画面が見えていたのだろう。
さりげなく隠して画面をブラックアウトさせる。

「いえ、先ほどお会いする機会があっただけです…」

彼女の声はユノにも聞こえていたはずだ。
写真を見せてと言われたらどうしよう…


さっき、怒ることはないだろうって考えていたのに、
動揺してしまう。

鏡越しにユノの様子をこっそりと伺った。




けれど目が合うことはなかった。

スタッフからの差し入れであろうお菓子を眺めながら、
どれを食べようか迷っている。

まったくこちらに関心は向いていない。



    気にはなりませんか?


その瞬間思い知らされる、気持ちの“質”の差。


写真を見たら…なんて心配する必要はなかったんだ…
別に反応を期待していたわけじゃないけれど。
僕が誰と何をしていようと、ユノにとっては気になるようなことではない。
むしろ、どうでもいいのかもしれない。

これが、家族愛にも似た感情と、ただ一人を想う恋心、その気持ちの差なのだろう。
そんな風に考え始めると気持ちがどんどん萎えていくのがわかる。

さっき、ふざけるふりをして僕を宥めてくれたのも
全部、僕の感情とは別のものなのだ。



わかっていたはずなのに。
僕はいつの間にか“特別”を期待していたのかもしれない。








「さっきですか!? ホンモノどうでした?! 私、お会いしたことないんですよー」

落ちてゆくだけの思考を加速させる黄色い声。

「……素敵な方でしたよ」

もうこの会話を続けたくなかった。
差し障りのない言葉で返す。

けれど彼女のテンションは下がらない。

「あ、でも、今日はこのビルにいらっしゃるってことですよね!」
「ええ、そうですね」
「どこのスタジオで収録か聞きました?!」
「いえ…」
「会いた~い!」

一日に二度も会いたくなる人物ではないし、なんか、どうでもいい。

そのとき、

「チャンミン!これ、イケる」

声と同時にユノの手から弧を描き、僕の方に落ちてきた。
反射的に手を伸ばしてなんとか受け取る。

ユノが食べていたお菓子だ。

「ナイスキャッチ♪」

ユノはもぐもぐしながら、ペロっと唇を舐めて
CMばりに完璧な笑顔と共に親指を立てた。

効果音をつけるのなら、キラリーン、だ。


落ちるだけだった思考が、その場に留まる。

黒いレザーのスーツにピンと立った前髪。
真顔でソファーに座っていれば、凛とした男らしさが際だってめちゃくちゃカッコイイのに、
幸せそうにお菓子を頬張るなんて…なんですかそれ。

差し入れたスタッフも嬉しそうだし、
スタイリストさんの動き続けていた手も口も、ユノに目が向いているせいで止まってるし、
僕の荒みかけた心は温かいほうに向くし。

分かっていてそんな姿を見せているのだろうか。






ユノはごちそうさまでしたと満足気に言うと
マネージャーに目を向けて、人差し指で楽屋のドアを指した。
外で話そうという仕草だ。

「いいですか」

マネージャーは顔をこわばらせると、頷いて先に出ていった。
ユノも続く。

ざわざわ廊下に出るなんて…楽屋ではしにくい話なのだろう。
マネージャーの顔は、何の話かわかっているように思えた。





続く

↓ランキング参加中です。楽しんで頂けましたらポチっと。励みになります!!

にほんブログ村


変なところで切って申し訳ありません。
長くなりすぎてしまったので、続きは次ぎへ。

-------------------------------私事。
日産スタジアム。
東方神起を愛するファンで埋まるとか、凄いことですよね。

ブログなどをたくさん拝見させていただいている中で
「二人が見えなくてもいい。
 二人にレッドオーシャンを見せるために行くんだ」
と言っていらしゃる方がいて。
東方神起のファンなら当たり前のことなのかもしれませんが、
いつもありがとうって声を大にして伝えたい気持ち、
それがレッドオーシャンなのかなと。
解釈は間違っているかもしれませんが、そんな風に思いました。

笑顔をくれてありがとう。
幸せをくれてありがとう。
元気をくれてありがとう。
東方神起を守ってくれてありがとう。
此処にいてくれてありがとう。

私も感謝の気持ちでいっぱいです。
今回のツアー、参加できませんでした。←もう、愛が発散できなさすぎて禿げそうです
でも次ぎこそは…私もレッドオーシャンの波の一部になりたいです。
スポンサーサイト
コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| 2013.08.19(Mon) 17:33:40 | | EDIT

ありがとうございます。

>misshaonさん

こんにちは!更新を楽しみにしてくださっているとか、嬉しいかぎりです~>▽<
続き・・・頑張りますので、ぜひお待ちを!!
ユノさん、どうするのでしょうねぇ。私にもまだ分かりません(笑)

ライブビューイングで参加されたのですね!羨ましいっ!
レビュー、ありがとうございます。
ほんと、ご覧になった方のお話を聞くと、幸せをお裾分けしていただいているみたいで、めちゃくちゃ嬉しいのです。ありがとうございます(*^^*)
ふたりが幸せだとこっちも幸せになっちゃいますよね。おっしゃるとおり東方神起の力は凄いです。
大好きって叫びた~い!!

YUKA | 2013.08.20(Tue) 03:55:21 | URL | EDIT
コメントを投稿する
 
 
 
 
 
 
 
 
トラックバック

プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。