ずっと、頼って欲しいと思っていた。

でも、頼っていたのは、昔も今も僕の方かもしれない。











     【僕らの、/08-1.】











僕らが活動を休止していた間、世の中には新しいものがどんどん生まれてくる。
けれどトップに存在している人間は変わらない。
そのなかの一人が、バラエティで人気を博しているイ・ジョンホ氏だ。

彼は男女問わず、えげつないウワサが絶えることないのに、人気がある。

外見は誰もがうっとりとため息をつきたくなるような、完璧なまでに整ったルックス。
口を開けば歯の浮くような台詞を平然と囁く。
現代に生きているとは思えない。
まるで中世の貴公子、そんな表現がぴったり合う。


そんな彼だから、モテないわけない=スキャンダルくらいあって当然というファンの認識なのだ。
しかも、ぜんぶ遊び。本命は作らないスタンス。
それもまた、たまらないらしい。



身長は僕と同じくらい。
年齢は雰囲気から察するに、30歳手前くらいだろう。

くっきり二重の瞳は目力をさらに強めているが、
その瞳が細められると一気に、優しさと愛嬌が増す。
頬にできる笑窪もその効果を高めているように思う。
どうすれば自分の魅力を存分に伝えられるか、それを分かっている笑顔だ。

緩くウェーブのかかった肩まであるブラウンの髪は、
真ん中で分けられていて、片方が耳にかけられている。
黒いピアスがひとつ光る。

広く開いたVネックのTシャツは、綺麗な鎖骨を見せびらかしているし、
体にフィットしていて、引き締まった肉体がうかがえる。
上に羽織っている黒のジャケットは無造作に腕まくりされているが、
その無造作っぷりがオシャレな印象に拍車をかけているようで、不思議だ。

腕にはシルバーのいかついブレスレット。
そして高そうな時計。

長い足は、濃い色でダメージの入った細身のジーンズを、格好良く履きこなしている。
足元はつま先の尖った、ピカピカの靴。




…なぜジョンホ氏について、こんなに詳しく解説できるのかというと、一般的な知識に加え
まさに今、僕の目の前に立っていて、しかも、片手を差し出されているからだ。

接点のない、これからもあろうはずもなかったイ・ジョンホ氏が
楽屋に来るなんて。


「初めましてだね、チャンミン君」


テレビの中で見る彼と同じ、警戒心を抱かせない口調。


なぜ僕のところに?


まずはそんな疑問が浮かぶが、大先輩だ。
失礼のないよう対応しなければならない。

とりあえず外用の笑顔を満面に浮かべて、
差し出された手を恭しく握る。

すると、もう片手が伸びてきて、僕の手を両手でがっちり包み込んだ。

人差し指と中指を飾っているシルバーのリングが冷たい。


「このあいだ、音楽番組の収録を少しだけ、見学させてもらたんだよね」
「そうだったんですか。気付かなくて申し訳ありません」

誰もが立ち止まって振り返ってしまうような存在感のあるこの人が
スタジオに入ってきたことに気付かないなんて。
カムバックしたばかりで集中していたのだろう…

「いやいや、全然。王の帰還だって女の子が騒いでたから気になっちゃって」
「王だなんて…とんでもないです」
「初めて生で見たよ。感動したな」

そのときのことを思い出しているのか、
ちょっと遠い目をした。
…本当に感動してくれたんだ。

「ありがとうございます…」

嬉しくなって素直に感謝の言葉を述べる。
僕たちのパフォーマンスに、気持ちを傾けてくれたのなら
こんなに嬉しいことはない。


「…ほんと可愛いね」

不意に呟かれた台詞。
僕に向けられた言葉?
頭の中がクエスチョンマークで占められるけれど
答えを求めて目を向けたジョンホ氏は、まったく変わらない笑みを浮かべていた。

「特にチャンミン君、素敵だったよ。ファンになっちゃった」

パチンと片目をつむって見せる。

ファンの前ならまだしも、普段からこんな感じなのだろうか。
男の僕に愛嬌を振りまいても、仕方ないと思うけれど。

「しなやかに動く身体といい、ころころ変わる表情といい、ほんとに僕の…」

こんなに面と向かって褒められるのは恥ずかしくて
強引に言葉を割って入れる。

「そんな…あんまりおだてないでください」
「いやいや、ホントだよ?」

握ったままの手をぽんぽんとたたかれる。
すっかり握手を解くタイミングを逃していた。

「にしても、着やせするんだね。
 スタジオで見たときは、結構イイ身体してて、びっくりしたよ」
「いえ、全然です。鍛え足りていなくて、恥ずかしいくらいです」

たしかあのときは、胸元の大きく開いたジャケットを素肌の上に着ていた。
カムバックのために体を作ってきたばかりだったから、今は緩みのない体だが
目の前にいるジョンホ氏に比べたら、まだ甘いかもしれない。

「今日は…またずいぶんと愛らしい感じだね」

カラーシャツの上からグラデーションカラーのニット、カラーパンツという、
結構ラフな衣装だ。
パフォーマンスの時とは印象を変えてある。
スタイリストさんからは似合っていると太鼓判を押されたが、おかしかっただろうか。

「すごく似合っているよ」

心配が顔に出てしまっていたのか、
大先輩にそんなフォローをさせてしまい、恐縮する。

「すみません、ありがとうございます」
「お世辞じゃないよ、ホントに抱きしめたくなるくらい可愛い」

今度の「可愛い」は明らかに僕に向けた言葉だ。
正直、同性に可愛いと言われるのは素直に喜べないが
否定しても肯定で返ってきそうなので、曖昧に笑っておくことにした。




「そういえば、今日は一人? ユンホ君は?」
「ユンホさんは別の仕事なので、今日は一人なんです」

たしかユノはスチール撮影だ。

ユノといえば、昨日僕が買ってきたヤンパリンを、今朝出かける間際に
こっそりカバンに入れていた。
こっそりだったのは、「食べていい?」と僕に聞けば
「太りますよ」っていわれるのが嫌だからだろう。

今日家に帰ったら、証拠隠滅とばかりに新しいヤンパリンが置いてあるに違いない。

「ジャンクなお菓子が食べたい」って呟いていたユノのために買ってきたんだけれど。
なんだかこっそり感がおかしくて、言えなかったのだ。


ユノは撮影が終わったら、こちらに合流する予定だ。
だから、今頃食べているかもしれない。
格好良くキメた撮影の合間に、格好良さのかけらもない感じで、ポリポリと。
まるでその姿を見ているかのように映像が浮かんできて、思わず笑いがこぼれる。


「チャンミン君?」

名前を呼ばれてハッとする。
ぴょっこり顔を出した脳内ユノに意識をもってかれていた。
先輩の前なのに。
にやけた顔になっていなかっただろうか。
心配になって、ついつい空いている手を口元にあててしまう。





そのとき、楽屋のドアが開いた。
マネージャーだ。
ドアをノブを握ったまま、固まっている。

それはそうだろう。
目の前に、スキャンダラスな大物タレントがいるのだから。

ジョンホ氏に目を向けると、僕を凝視したまま動かない。
マネージャーが入ってきたことにも気付いていないようだ。

なぜだか居心地が悪くなる視線の強さ。


「チャンミンがお世話になっております」

マネージャーが恐る恐るといった感じで声をかけると
やっと気付いた様子で、握っていた僕の手をゆっくりと離した。
それから振り向いて、柔らかい物腰で挨拶を返す。


ひと通りの世間話が終わったのだろう。

直立している僕をチラと見ると、マネージャーに言った。


「僕はすっかりチャンミン君のファンになってしまいましたよ。
 次はいつ会えるかわからないので、よろしければアドレス交換を
 させていただきたのですけれど、いいですか?」


マネージャーは一瞬目を大きく開くと、明らかに困った様子で目を泳がせる。
つまり、交換させたくないということだ。

…なんでだろう。
人脈が広がるのはいいことだと言いそうなのに。
スキャンダルの帝王と東方神起という組み合わせは、相性が良くないということだろうか。

しかし、こんな大物からわざわざマネージャーを通すという義理を立てられたら、
断るに断れないだろう。
まぁ、心配しなくても社交辞令みたいなものだと思うが。

マネージャーはへたくそな笑顔を取り繕って言った。

「ありがとうございます。ぜひ可愛がってやってください」
「お言葉に甘えて、そうさせていただきます」

ジョンホ氏はマネージャーの態度に気を悪くする様子もなく
軽く頭を下げたあと僕の方を向き直って、ジーンズのポケットから携帯を取り出した。
様々なストラップがついている。
統一性のないことから、贈り物だろう。



「そうだ。どうせなら、写真付きで登録してよ」

ジョンホ氏に併せて取り出した僕の手の中にあった携帯をひょいと取り上げると、
マネージャーに渡してしまった。

なぜマネージャーに?

その疑問の答えはすぐに分かった。
ジョンホ氏が僕の隣に並んだからだ。

「マネージャーさん、撮っていただけますか?」

当たり前のように腰に腕を回された。
体をぐいっと引き寄せられる。

香水だろうか…甘い香りが移ってしまいそうな距離。
慣れない体温と、クラクラする匂いに、反射的に体を引いてしまうけれど
予想以上に強い力で、びくともしなかった。
そのことに驚きながらも、なんとかじっと堪える。

あのジョンホ氏だ。
こんな対応は当たり前なのかもしれないけれど、
人見知りをしてしまいがちな僕にとっては、ひどく苦痛だった。


「ほら、チャンミン君、笑って笑って」

僕の方を向いて、マネージャーの構える携帯カメラを指さす。

近い。
顔が近い。
鼻がぶつかってしまいそうな距離だ。

僕の浮かべた笑顔は、きこちないこと間違いないだろうが
言われた通り、懸命に笑顔を作る。

「撮ります」

マネージャーがそう言った瞬間、頬に肌が触れる感触。
ざわっと体に震えが走る。


「ありがとう、チャンミン君。僕にも写真送っておいてね」

ジョンホ氏は体を離すと、背景に青い空が見えそうなほど爽やかな顔で笑った。
でも、彼の香水の香りと、不快感だけが僕にまとわりついていた。






ジョンホ氏はマネージャーと少し話してから、楽屋を出て行く。
もちろん、キラキラの笑顔を浮かべて、僕にひらひらと手を振ることも忘れない。

マネージャーは僕を見て苦笑しながら、携帯を渡してくれる。
しかし、スタッフに呼ばれたため、僕は携帯を受け取る前に現場に向かった。


ユノのいない、一人の現場はさびしいけれど、そんな泣き言は言っていられない。
僕らは始まったばかり。
とりあえず、目の前の仕事を求められる以上のクオリティでこなしていくのだ。


だからこそ、気持ちを切り替えたいけれど、
まだ胸の奥がざわめいている。




ユノに会いたい。

無性に顔が見たくて仕方がなかった。








続く


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コメント

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| 2013.08.11(Sun) 20:53:05 | | EDIT

やった~!って誰々~!?(笑)
ユノ早くきて~!(笑)ドキドキ…ありがとうございます★

k | 2013.08.12(Mon) 00:19:18 | URL | EDIT

ありがとうございます。

>すみません さん
続き!シリアスめになりそうな感じがするような、しないような(笑)
でも二人はハッピーが似合いますよね♪

YUKA | 2013.08.16(Fri) 12:12:26 | URL | EDIT

ありがとうございます。

>Kさん
こちらこそありがとうございます!
ほんと、東方神起以外に疎いもので、ふたり以外はオリジナルになっちゃいます(汗)

YUKA | 2013.08.16(Fri) 12:13:59 | URL | EDIT
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YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




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ありがとうございます。