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ひとりじゃない。
僕がいる。


届くだろうか。
伝わるだろうか。




全身全霊を傾けた僕の時間が、今始まる。










     【僕らの、/06-2.】










僕が会場を出た時、ユノを隣に乗せた車が目の前を通り過ぎていった。
慌ててタクシーを拾う。

運転手さんを急かしてバンを追ってもらうけど、
追跡なんて、映画ほど上手くいくわけもなく
すぐに見えなくなってしまった。

けれど、窓から見えるのは見慣れた風景。
このあたりでユノが行きそうな場所といえば、一つしかない。

僕はそこへ向かった。









練習スタジオのあるビル。
エントランスをくぐると、ため息をつくマネージャーを見つけた。
やっぱりここだった。
しかしユノの姿はない。

マネージャーは僕に気付くと、どことなく気まずそうな顔をした。

「ユノヒョンは?」
「…練習中です」

ユノの予定は、僕も把握している。

「今日、入ってないでしょう?」
「まぁそうなんですけど…」

歯切れが悪い。

練習に来ること自体はよくあることだ。
けれど、明らかにマネージャーの態度がおかしい。

何か隠している。
もしかして、キュヒョンが心配していた事が、当たっているのだろうか。



もう何度目だ…
…自分に腹を立てるのは。
本当に、本当に、ユノを遠ざけていた自分に腹が立って仕方がなかった。



マネージャーが数歩あとずさる。
よほど僕は怖い顔をしていたのだろう。

「…とりあえず、なんでここにいるのか話してもらえますか」

笑顔を取り繕うつもりはない。
事実だけを話すように促す。

マネージャーは壁際にあるベンチにそっと腰を下ろすと
私にもよくわからないのですが、…そう前置きをして口を開いた。










ここだ。ユノのいるスタジオは。

今日ばかりは、誰もいない。
シンと静まりかえった廊下。
ドアを押し開くと、廊下にも音が響き渡った。

もう何度聞いたか分からない。
もう何度歌ったか分からない。
もう何度踊ったか分からない。

もうここで、何度見たか分からない、ユノがいた。


キレイに伸びた手足がピタリと止まる。
鏡越しに僕と目が合ったからだ。
ゆっくりと自然体に戻ると、こちらを向いた。

まっすぐ顔を見るのは、とても久し振りな気がする。

僕が来ることを予想していなかったのか、ちょっと驚いた顔をしていたけど
すぐにいつもの笑みに変わった。
 

この下に、いくつの顔を隠しているんだろう。


“チャンミン”
音楽のせいで声は聞こえなかったけど、僕の名前を呟いたのがわかった。

僕は音楽を止めた。

シンとした空間に戻る。
ユノの苦し気な息づかいだけになった。



…しばらくの沈黙。
こんな雰囲気はしばらくぶりだ。
ユノの笑顔は優しいのに、纏う空気は正反対。



「ちょっと…いいですか?」

そう沈黙を破ると、ユノは微妙そうな顔をした。
何の話をしようとしているのか分かっているみたいだ。
でも、頷くと床にペタリと腰を下ろしてくれる。
そして、自分の前のスペースをぽんぽんとたたいた。

「座れば?」

ドアを締めて、促されるまま歩み寄る。
ユノの瞳はずっと僕を追っていたが、見上げる位置で止まった。

そして、目の前に立ったまま座ろうとしない僕に、
困惑したような表情を浮かべた。







    なぜ、毎日毎日、動けなくなるまでスタジオにこもっていたのか。

その理由を直接ユノから聞こうと思っていた。
そして、また一人で勝手にぐるぐるして避けていたことを謝ろうと思っていた。


けれど、今、ユノに向き合ってみて気が付いた。


いつもの余裕しゃくしゃくで、たまにむかつくユノじゃない。
いつもの踊ることを、歌うことを楽しんでいるユノじゃない。

此処にいるのは、必死に自分を救おうとしている、ユノだ。


だから、
聞くべきではないと思った。
言うべきではないと感じた。


今ここで、僕がすべきは、ユノのためにできること。

問うことではない。
伝えることだ。

だから、



 「見ていてください」




きびすを返して、音楽をかけにいく。
再び部屋を満たす音。

ここは舞台。
観客は、ユノ。
隣でパフォーマンスをしていても、こうして見るのは初めてだろう。





    “二人だけで東方神起? 何ができるというんだ”

    耳をふさいでしまいたい声であったに違いない。
    けれどユノは受け止めた。

    そしてスタジオにこもるようになったのは、信じているからだ。
    
    踊ることで超えられる。
    歌うことで払拭する。
    練習だけが、言葉に打ち勝つ方法であると。
    自信につながる最善なのだと。





間違ってはいない。

でも、それだけじゃない。
ユノには僕がいる。

この気持ちを、ポケットから取り出すより簡単に
渡すことができればよかったのに。



ユノの踊るイントロが終わった。
僕の目に見えているのは、瞼に焼き付いて離れない、
息ができない程に魅入ってしまう、強烈で完璧なダンス。

次は僕の番だ。
指先に至るまで、僕のイメージ通りに動いてくれる。
そんな確信めいた感覚が、全身に行き渡る。


ユノだけじゃない。
これからの東方神起のために
これ以上ない、精一杯を詰め込んできたのは。




      僕は、東方神起のチェガン・チャンミン。




届くだろうか。
伝わるだろうか。


ユノの隣に立つと決めた、
ユノとふたりで守ると決めた、

僕の覚悟が。








続く



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私の中では
「カッコイイ<可愛い」
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YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。