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あなたに手が届けば、手段は何でもよかった。

たとえ、…… 悲しい顔をさせることがあったって。










wasu.png 【忘れないで。/08.】











ゴー。ヒューゥゥゥ…。

微かに聞こえる。

えっと、何の音だっけ……?


あ、そーそー、飛行機だ。






「チャンミン、起きろ。もー着くぞ。」



ぱちっと目を開けると、目の前が背もたれの高い椅子。

「ここ…どこ?」
「私はだれとか言うなよ」

独り言にツッコミが入る。
横を見ると通路を挟んだ向こうによく見知ったマネジャーが座っていて、
その背後に広がる光景も、よく見知ったそれだった。


「なんで…」


飛行機の中なんだ。

いやでも待て、マネジャーがいるってことは、…現実、世界なのか?
もしくはまた別の夢世界…?


「……僕は東方神起のチャンミンで高校生じゃない?」
「はぁ?…大丈夫かお前。 また記憶なくしたとか言わないでくれよ」
「マネージャーの答え次第です」
「それ意味分かんないけど、お前は東方神起のチャンミンでとっくの昔に高校は卒業してる」
「そーですか…」


ぼすん。
僕は安堵の音を立てて背もたれに戻り天井を仰ぐ。


「……戻って、きたんだ…」


あっちの世界のユノにサヨナラも言えなかったし
喜んでいいのか、微妙な気持ちだけど、


「こっちにいたチャンミンが側にいるよな?」
「………俺に質問してる?」
「いや、こっちの話」
「で、どーなんだよ、俺の答えは」
「何が?」
「俺次第で記憶云々って言ったろ」
「その件ですが、僕が記憶喪失になったのって、いつでしたっけ?」
「あー…1年前くらいか」
「なるほど」


夢の世界で過ごした期間と同じくらいの時間が流れていたようだ。
つまりあれは夢の世界でなく、別の現実ってことなんだろうか。


「だとしたら、ここ1年の記憶はありません。それ以外は、あります」
「は?」
「あご、落ちてますよ」
「いやえっまた…?」
「ええでも安心してください」
「無理だろ」


そういって携帯を取り出すけど、機内だということを思い出したらしく、
10秒くらい右往左往したあとポケットに戻した。


「本当に問題ありませんから」
「ないわけないだろ。 降りたらまず病院行くぞ。こうも頻繁じゃさすがに…」


今にも頭を抱えそうなマネージャー。
高校生のチャンミンが現れたときも、さぞ大変だったのだろう。


「それより、」


隣にいるはずの人物がいない。


「ユノヒョンはどこ?」
「……あっち、だけど…あいつにも報告しなきゃな」


マネージャーは親指で後ろの方を差す。
中腰になって見渡そうとしたけどベルトに引き止められた。


「止まるまで座ってろ」
「え、ああ…うん」
「にしても…お前がユノのこと聞くなんて、どーした?」


さも意外そうに言われる。
たしかに、ユノのことは本人より把握してるけど、あいにく頭の中には何も入ってない。
ユノに関する記憶くらい引き継いでくれてもいいのに。


「まあ、後で話すけど、スケジュール頭に入ってなくて」


そう返すと、えっ?!という驚いた顔をされる。


「…完璧主義者に輪をかけたみたいなお前が? いや、記憶ないんだったな」
「ふうん、そーなんだ」


ユノのスケジュールのことだったんだけど、
思わぬところから、チャンミンの情報を得た。
しっかり仕事してたみたいで安心する。
それならあっちの世界でもユノを守れるだろう。
ってゆうか、そうじゃないと困る。


「まるで他人事だな」
「いえ、まあ。移動はいつもユノヒョンが隣に座ってたでしょ? 何で今日は後ろなの?
…僕ら喧嘩中とか?」
「………」


マネジャーは困惑を極めた顔をして暫く黙ってしまう。


「マネージャー?」
「…お前の希望だろ。 覚えてないと思うけど」
「僕の希望?」
「移動時間は1人がいいって言うから」
「は、そんなツンツンなこと言うわけ…」


ぱっと、ユノの、気持ちを殺したみたいな顔がフラッシュみたいに
一瞬だけ浮かぶ。
…急に。
ほんとに急に。




「…、なに?」




目頭を押さえて目を閉じる。
その瞬間、今度は一枚だけじゃなくて、
次々と瞼の裏で映像が再生される。
だけど、

どれも
これも
幸せとは程遠い顔ばかり。
天使みたいな笑顔は、横顔ばかり。


チャンミンの瞼に残って消えない映像?
だとしたら、

チャンミンはユノを幸せにできてなくて、
しかも他の誰かに向けるユノの笑顔を眺めてたってこと?!



「……まじ…まじか。」


アイツ!!!


「チャンミン?」
「ツンツンにもほどがある。 こっそりデレてんなよ…」
「どうした? 吐き気? 頭痛?」
「教えてくださいっ!!」
「えっ何をだよ」
「1年間の僕の様子っ!! ヒョンに何かしましたか!?」


急に迫る僕にマネージャーはしーっ!と人差し指を立てて周囲を見渡す。


「声落とせって」
「わかりましたから、早くっ」


声を潜めつつ急かしたら
マネージャーは深いため息をついた。



「ユノに何かしたかってゆうと、何もしてない」
「そんなわけない。 絶対悲しませてたっ」
「それは、」


マネージャーは腕を組んで言葉を継いだ。


「結果論、というかお前が悪いわけじゃないってゆうか。
 言うなれば、兄さんのために仕事するのに必死すぎて、デキる兄さんと自分を比較しすぎて、
 兄さんを省みることのできない切羽詰まった感じ? 仕事を優先した結果だから直接的には何もしてない」
「仕事優先って……」


高校生のチャンミンには全てを仕事に傾けなければならないほど、
方神起の肩書きは重たかったんだろう。
ユノの存在が大きすぎたんだろう。
その心境が痛いほど理解できて、チャンミンを責める気持ちはサーッと消えた。


だけど、1年の間、ユノは何を想い、過ごしていたのか…




「どうした? もう着いてるけど、降りねーの?」


上から声が降ってきた。
ユノ!
ばっと顔を上げると、背もたれに腕をかけたユノと目が合った。




ユノだ。
ホンモノのユノだ。




とたんに頭の中が全部吹っ飛び、久しぶりに会う等身大に
たまらない気持ちがこみ上げる。


立ち上がろうとするけどまたもベルトに止められるダサい僕。

しかも外れないし!!こんなときに!!




ガチャガチャやってたら、

「何してんだよ」

呆れた声がしてユノの手がベルトに伸びてきた。








手が届けばなんでも良かった。






「!!! チャンミン?!」




ガバッと抱きしめた僕のせいで体勢を崩し
宙泳ぐ手が僕の肩を掴む。




「凄く…会いたかった、みたいです…」



背中に両手をキツく巻き付けて、
呟いてた。



ユノとずっと一緒にいたから、満たされてると思ってた。
でも、今はこんなに枯渇してる自分がいて。
腕に抱きしめてるユノに
誰でもない唯一無二のユノに
僕はずっとずっと、会いたかったんだ。



だけど、肩に置かれた手はそのままで、動く気配はない。
それでも気にはならなかった。
ユノとチャンミンに何があったかわからないけど、僕は前と変わらない。
好きなんだ。
この気持ちが伝われば、それでよかった。



「……俺に、会いたかったの?」
「うん」



たくさん頷きながら首筋に顔を埋める。
ユノの匂い。



「なんか…懐かしい感じがするな」
「一年ぶりですから」
「なんだそれ」
「ただいま、ヒョン」



そう言ったら
肩に置かれたままだった手が、そろりと首に回ってきた。




「おかえり、…チャンミン」
「うん」





抱きとめる重みが、幸せすぎて
僕はしばらくユノを離すことができなかった。











続く..

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あなたの悲しい顔… 胸が痛くて痛くて、見るのが辛い。

それでもあなたの宝物を守ることに繋がる最善だと信じてるから、頑張れる。









wasu.png 【忘れないで。/08.】











降り立ったのは、羽田空港。

ユノにくっついて歩きたかったけど、ユノの隣には知らない顔のマネージャーがいて。
とりあえず騒がず静かに素早く移動する。
とはいえ僕はユノの5歩後ろにいて、颯爽と歩く後ろ姿を眺めてた。


足を動かして前に進む作業なのに、なんでこんなにカッコイイんだろう。
手足が長いからかな。 体のバランスがいいからかな。 雰囲気盛りか。




「そんな顔、久しぶりに見るな」
僕の横を歩くマネージャーがトンと腕をぶつけて、ニヤニヤ。
そんな顔がどんな顔かは想像がつくし自覚もある。
けど、抑えられないんだから仕方がない。


「ヤバイ?」
「いや、安心することを発見した」
「安心できない顔してたんですか?」
「ん~、顔ってゆうか…さっきも話したろ、仕事最優先だったって。
 次の仕事のシミュレーションをひたすら頭で繰り返して、上手くいかないのか…ピリついてたし」
「ヒョン構って感は一切なし?」
「ないように見えたけど…」
「逆は? ヒョンはチャンミン、フォローしなかったの?」
「したらしたぶんだけ、また迷惑かけてるって、チャンミンが凹むからさー」
「ちょっとその気持ち…分からなくもないかも」
「そうそう、それもある。 俺らもみんな、チャンミンの様子伺いつつ、って感じ」
「ユノ寂しそうだった?」
「言うまでもない」
「ですよね」
「まぁ、つまりさ。 今みたいに堂々と、遠慮なく、ユノユノしてる感じが、
 精神的にもチーム的にも安心感があるってことだよ」
「ありがとうございます。 そんなところを褒められるなんて」
「笑い事じゃないから」
「はい、すいません」
「…って他人事みたいに話してるけど、お前のことだからな?」
「すいません」
「もういいよ。 で、もう一回確認しとくけど、… まじで記憶ないのか」
「ないってゆうか、戻ったってゆうか」
「戻るってなんだ」
「記憶だけでいえば1年前の僕に」
「わかるけど理解できないな。 なんでそんな不思議なことが…2回も起こるんだ。
 しかもお前が無駄に泰然自若とし過ぎてて、大変な事態な気がしないのな。 のんきにおしゃべり中だなんて」
「さすがにねー。 慣れた感ってやつですかね」
「慣れたくないし、ふつー、1年も記憶抜けてたら動揺するだろ?」
「ないわけでもないんですよね」
「へ? 記憶喪失じゃないのか?」
「実は別の世界に居る高校生のチャンミンと入れ替わってて、そっちでも東方神起してたんですよ。
 トップアイドルって認識されてきたくらいまでかな。 だからこっちの状況はわかんないけど、普通に仕事してましたし」
「お前さ……そんなマジなトーンでファンタジックなこと言うやつだっけ」
「今日からそうなりました」
「……お前が元気ならそれでいい。 うん」
「そういえば、今日のスケジュールは?」
「映画のインタビューだ」
「えっ、映画…?」


出てたのか。 しかも日本にいるってことは日本の映画に?
凄いことだけど、それは…


「マズイ」
「……だよな。」
「ねぇ、マネージャー…。 そこはさすがに焦るべきじゃないですか?」
「うん、でも、じ・つ・は!」


策がありますみたいな笑みを浮かべて、僕のリュックを指した。


「お前、毎日日記つけてたからな」
「おぉ!! ナイスチャンミン!!」
「撮影中も書いてたみたいだし、読めば何とかなる……か?」


疑問系。
内容が役立つかだけじゃなくて、僕がきちんと仕事出来る状態かも危惧してるのもしれない。
出演時の話をするなんて…さすがにキビシイ。
けどなんとかするしかない。


「時間、ありますよね」
「半日くらいは」
「大丈夫です」
「今日のチャンミンはほんと頼もしいな」
「ありがとうございます」


向こうでだって、遊んでたわけじゃない。
アクシデントを好転できるだけのことはしてきたんだから。







そうこう話しているうちに移動車に着く。

「えっ!」

ユノは向こう、僕は手前の車に引っ張られて、広がる距離にうろたえる。


「まさか今すぐユノヒョンと別のスケジュールーっ?!」
「お前は映画のインタビューだって言ったろ?」
「半日あるんでしょ! ヒョンは? すぐ仕事なの?」
「すぐ…でもないけど」
「なら、ヒョンの現場まで一緒に行きたいです!!」


訴えるように声を上げたら向こうの二人が立ち止まって振り返る。
それから、えっ、えっ、えっ、みたいに僕を除く3人が互いの顔を見合わせるから、
僕の方が何事ってなる。
そんなマズイこと言った?


「あのー……」
「ユノ、どーする?」

知らないマネージャーがユノをうかがう。

「…チャンミンがそうしたいなら、いいけど」
「さんきゅ。 そうしてやってくれ。」

お礼を言ったのは僕のマネージャー。
言いつつ二人の傍によって、耳元で何事かを説明しはじめた。

直後、がっと三人の視線が僕に刺さる。
苦笑しつつ、ゴメンナサイと手を合わせるしかない僕だった。









続く..

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顔が見たい。 話がしたい。 一緒にいたい。
誰よりも高貴で清廉なあなたが、誇らしい。

だけど。 同時に悔しくて、悔しくて、仕方がないんだ。 どうしようもなかったんだ。









wasu.png 【忘れないで。/08.】












「チャンミン、重いんだけど?」
「うん、ごめんね、ヒョン。」
「そっち側すげー活用されてねぇけど」
「必要ありませんから」
「なんでだ」
「気持ちの偏りってやつです」
「バランスとれよ」
「そんなこと言わずに、頑張ってる僕に協力してください」
「これが協力になんのか」
「それはもう。 ものスゴイ勢いで」
「…あっそ」


広めの車内。
ワゴンの1番後ろにユノ。
隣に僕。


当たり前のように肩が触れる距離で座ったら
ユノには奇妙な目で、マネージャーからは微笑ましい目で見られた。

……チャンミンが1年間、どう過ごしてきたのか垣間見えた気がする。


だけど、高校生のチャンミンとは違って
図々しさとか空気だって無視できるんだ。


そんなオトナの僕は、ユノの肩に頭を乗っけて、もたれてた。
手には日記。
ふわゆのを感じながら、映画に関する部分だけ頭に詰め込んでる最中だ。



「ねー、ヒョン、お腹空きません?」
「フツー」
「じゃあ食べましょう?」
「ダイエット中だから」
「ならヘルシーなのにします」
「お前さ、」
「はい?」
「ずっと喋ってるけど、頭に入ってんの?」
「キレキレですよ」
「そーか」
「ユノヒョンは僕がいると邪魔ですか」
「邪魔。」
「えっ」
「…って言われないこと想定して聞いてんだろ」
「バレました?」
「……邪魔してんのは俺の方じゃね?」


思わずユノを仰ぎ見てしまう。
窓際に肘をついて外を眺めてた。
つん、と尖った鼻。


「…邪魔です。」


そう言ったらユノの視線がゆっくり僕に向く。


「…って言われること、想定して聞いてるんですか?」


目の動きをじっと見ていた。
少し上から僕を見下ろす黒目。 揺らぎもしない。


「はぁ…………。 ヒョン、子供に逆戻りですねぇ」
「何だそれ」
「大人になって出来るようになった事が出来なくなってるから」
「……そんなわけねーよ」


ぷいとまた窓を向かれてしまう。
そっぽくらいで引けるほど、ユノユノが余ってるわけじゃない。


「ねーねー、ヒョン」
「なんだよ」


ぷいしてても聞こえないふりとかしないユノが可愛いと思う。


機嫌が悪いわけでも嫌われてるわけでもなく、ただ1年の間に、
僕にとっては遥か遠く、
チャンミンには精いっぱい近いこの距離感が、
普通になってしまったのだろう。



「前の席からは、ここ、見えないですね」
「だから?」


日記を座席に置くと体をユノにむける。
手を伸ばして、太陽がキラキラ照らす輪郭に、指先で触れてみた。
ユノはびっくりしたみたいにこっちを向く。


「手間が省けました」
「手間?」
「こっち向いてくださいって」
「……。」
「ヒョン?」
「…お前さ、」
「なんですか」
「……態度変わりすぎだから。 慣れない」


ユノは僕の指を掴んで、躊躇いがちにポイした。
でもポイされた手をまた伸ばして、今度は掌で頬を包む。
そしたら戸惑ったような視線が、手と僕を行き来した。


「態度はそうかもしれないけど、僕の気持ちは変わってないでしょ?」
「、それは……」



黒い目が伏せられる。

高校生のチャンミンはユノが好きだったからこそ、仕事に没頭したんだと思う。
態度がどうであれ、ひたむきな想いと頑張りに、ユノが気付かないわけない。

ただ、チャンミンが引いたボーダーが、必然的にユノを遠ざける結果になった。

それでも、僕の想いをわすれないでいて欲しいなんて、我儘かもしれない。
けど、





「……僕がヒョンのこと好きだって、覚えてる?」





瞼がゆっくり上がった。
綺麗の中に不機嫌な色。




「そーゆうお前は、……俺を好きなこと、忘れてねーのかよ」

そんなの、

「忘れるわけありません」




ユノのおっきな黒目がギュッてなる。
僕は親指で目元を撫でて、言葉を継いだ。



「…て言われること、想定してなかったんですか?」

「………だって、…俺ら、もうそうゆう関係じゃねーし」

「え…」


……今、なんてった?


「俺、恋人いるし」

「はっ?!」


コイビトって、
……公平明大なユノに特別扱いしてもらえる限られた人類の頂点に君臨する、
アレですか。

いやそんなまさか。
視界がぐにゃりと歪んだから目を閉じる。


…たしかに、1年もの間、チャンミンがユノに群がる虫どもを牽制していたかといえば…
放置に近かったと推測せざるを得ない。



それでも、自信があった。
揺らぐことのない自信。
僕以上にユノを理解しているヤツはいない。
僕以上にユノを幸せにできるヤツもいない。
プライベートでも仕事でも。
過去でも未来でも。
今のこの瞬間でだって。





ガッと両手でユノの肩を掴んだ。


「ヒョン、安心してください。それは気の迷いです。」

「…は? いや、」

「今すぐ別れてください。 ヒョンを1番好きなのは確実に僕ですから」

「マジになんなって」

「真面目に言ってます。 ヒョンは愛するより愛される方が断然似合います。
愛されたい生き物より、僕の方が100%ヒョンを幸せにできますから」

「違うんだって」

「違いません。てゆうかそれを分かってるのに、幸せになってくださいって手放すなんてあると思います?
絶対にない。 あ・り・え・な・い。」

「いないから」

「そうですよ、いません。 あなたには僕しかいないんですよ。 僕だけに全力で甘えてくれたらいいんです」

「ああ、お前だけだ」

「…その通りです」


肩に置いていた手をスルリと腕のほうに滑らせて、
腰から背中にぐるっと回し
首筋に擦り寄る。


そしたら、


つんつんと髪を引っ張られた。
でもって、呆れたみたいな声が降ってくる。


「安心した?」
「なんのはなし」
「バレてないとでも?」
「……」
「俺が彼女作るわけないって分かってたくせに」


そ、分かってた。
だけど状況が普通じゃない。
ユノの態度もどこかよそよそしかったし。
心の隅っこに、『もしかして』が居たことは否定できない。

僕はたしかにオトナだけど、
もしかしてを抱えたままじゃ、チャンミンと同じ間違いを犯してしまうだろう。
だからちゃんと言葉で伝えて、言葉で聞いておきたかった。
一年越しなんだから。



「…まったく。 子どもなのはどっちだよ」



ぽんぽんと背中を撫でてくれる。



「いいえ、僕は大人だから、両方使い分けられるんです」

「じゃぁ、俺も大人なところを見せてやろうかな」

「たとえば?」


抱きしめた腕はそのままに顔だけ上げた。
すぐそこに、シャープでカッコイイ男の顔。
でもって、甘い。





「覚えてる」



くるっとしたアーモンドアイが柔らかく形を変えた。



「”大”がつくほど好きだって、ちゃんと覚えてるから」



まだ答えてなかったし、ってちょっと照れたみたいにはにかむ。
なんか愛しすぎて、死にそうで、ぐりぐり額を押し付けた。



「大の上なんです。 超ミラクルスーパー大好きなんです」
「なんだそれ」
「復唱してください。超ミラクルスーパー最強大好きです」
「ちょーみらくるすうぱあさいきょう…あれ、なんか増えてね?」
「気のせいですね。はい、もいっかい。超ミラクルスーパー史上最強大好きです」
「やっぱ、増えてんじゃん!!」





ユノが笑った。
僕の襟足あたりを撫でながら。

ケタケタ。ケタケタ。

好きなんだ、
笑い声も。
くしゃってなる目元も。
触れる手も。

こんなにも限度がない。




「わすれちゃだめですよ」



僕があなたを好きなこと、
絶対に、わすれないで。

至近距離にあるおっきな黒い目がぱちぱちと瞬く。




「どうやって忘れるんだ?」




それはもう不思議そうに、ユノはそう言った。












続く..

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wasu.png 【 し あ わ せ サ ン タ 。 】











カチャリ。

極力音を立てずに開いたドアからスニーカーの踵が見えて、そのあとプリンとしたちっちゃなお尻。
ドアを押し開けて、手に持った大きな箱をぶつからないように運び入れた。
素早い動作で壁に箱を押し付け固定すると、片手でドアノブを握り、秒速2センチくらいの慎重さで閉める。
そこでやっと詰めていた息を吐いた。



「ふぅ…サンタってたいへんだな」



額を拭いたい気分だったけど、両手は塞がっている。
よしと気合を入れなおして振り返った。

直後目に飛び込んできた光景。



「、!」



サンタは息を呑む。
なぜなら、


ぽわん。
ぽわん。
ぽわん。

真っ黒なはずの床や壁に、大小様々な雪の結晶が浮かんでいたから。



「……きれい…」
 


虫の羽音レベルの音すらたてまいと気をつけていたはずなのに、
ポィポィっと靴を脱いで、床にコトリと箱を置く。
それから人差し指をぴぃんと伸ばして雪の結晶に触ってみた。


ぷにぷに。
ぷにぷに。


厚みがあって柔らかい。
キョロキョロして小ぶりな結晶を探すと、親指と人指し指でぺりと剥がして
コートのポケットにしまう。
満足そうにうなずいてから、思い出したようにお口チャックして
よいしょと大事そうに箱を抱えなおした。




雪の結晶は、廊下の向こうまで降り続けている。




サンタはほくほくした顔のまま廊下を抜け、リビングへ。
周囲を眺めながら歩くサンタにぶつかる障害物は何もない。
おかげで足をぶつけることもなく、痛い音もしない。

その理由。

雪に目を奪われているサンタはまだ気づいていなかった。








歩みを止めたのは、開けっ放しにされたドアの前。
閉める派のチャンミンにしては珍しいなとサンタは首を傾げつつ、
部屋の中をひょこり覗いた。



「……!!」



サンタの黒い瞳に幻想的な世界が浮かび上がる。

6面に貼られた、街の風景にサンタクロース、雪の結晶が降る空。
背の高い豪華なモミの木にカラフルな電飾がキッラキラ。
もちろんてっぺんには、大きな大きなお星さま。
床に散らばるのは金銀のオーナメントボール。そして緑のボールだけはツリーに飾られていた。



「永遠にトップスター…? チャンミン、知ってて選んだのかな」



今この瞬間、ポツリと呟いたサンタをチャンミンが見ていたら、
『心が潤っているあなたの微笑みが天使だから、飾りの天使は必要ないんですよ。』
などと、惚けていたに違いない。


サンタはサンタで、一人でこれを飾るチャンミンがむくむく頭の中に浮かんできて、
『じつは途中で面倒になって、金銀のボールは床に撒いたのかもしれないな。』
って、くくくと笑う。




そんな部屋の住人の姿は、こんもり盛り上がったベッドから柔らかそうな髪の毛がのぞくのみ。
サンタはしばらく様子を伺っていたけれど寝ていると判断して、右足をそろりと踏み入れた。



まさしく、抜き足差し足忍び足。



音も立てずにベッドサイドにたどり着くと、おっきな箱を静かに置いて、
任務完了とばかりに安堵の息を静かに吐いた。




それからたっぷり20秒間くらい、
サンタは部屋の主を見つめていた。

触れたい欲を持った指先が宙を漂う。
だけど布団の上からそうっと撫でるだけで。

名残惜しそうに、何度かベットを振り返りながら部屋を後にした。




…はずだったのに。
ドアから出る直前、ピタと足を止めて目を凝らし、横の壁に顔を近づけた。


白い紙に几帳面な字。



wasu.png



頭の中で朗読すること2回。
やっぱりバレてたのかと、舌ペロサンタ。

そこで、はたと思い当たる。
ここまで来るのに痛い音がしなかった理由に。
さすがは俺のチャンミンだと、お髭のない顎を撫でた。

それからそーっとベッドに滑り込む。
だけどくっつく事なく、両手両足をこすり合わせるに徹していたら、


「何してますか」


焦れたような声と同時に細いのに逞しい両手が伸びてきて、ユノをぐいと抱き寄せた。


「チャンミン?」
「冷たいんですけど」
「ならくっつくなよ。 あっためてる最中だったのに」
「いーからもっとくっついて」
「矛盾してるし。 てか起きてたの?」
「寝てました。3秒間前に起きました」
「起こした?」
「いいえ、目が覚めました」
「どう違うんだよ」
「自発的か強制的かです」
「………うん、寝起きに無駄な会話だな」
「もうそれはいいですから、ちゃんとして」
「ちゃんと?」
「そう、ぴったりして」


ユノは一反もめんの如く巻きつこうと試みたけど、向かい合わせはぴったりできない。
チャンミンの腕の中で蠢いた結果、背中を預ける形で、体のラインまでぴったり重なった。


「できた。」
「ぴったりですね」


チャンミンはユノの項に唇を寄せながら
ぎゅうぎゅう温かな体で抱きしめる。
外側から内側へ、じわじわユノの体に熱が伝わる。


「…チャンミンだけじゃん」
「ヒョンもしたいの?」
「うん」
「じゃあ、明日はヒョンの番ね」
「こないだもチャンミンの番だった」
「そうでしたっけ?」
「そーだよ」
「でも今日はもうぴったりしたから、離したくないんです」


チャンミンはユノが言葉を継ぐ前に、言葉を重ねた。


「ダメですか?」


そう聞いた時、チャンミンにはユノの顔がどんな風に変わったか、手に取るようにわかっていた。
何て答えるのかも。確信犯。


「…ダメじゃねーよ。」


ユノはユノで、チャンミンがどんな顔をして自分の返事を聞いているか、知っていた。
それをチャンミンが知らないことも、知っている。確信犯。


ただ、素直にうなずいて服の中に侵入してきた大好きな人の手を、重ねるみたいに握った。
この手は…いつだって思いやりに溢れてる。
チャンミンがまだ見ていないサンタの顔をして、ユノはその手に自由を許した。













翌朝。


ユノがぼんやり目を開けると視界に動物。
高いとこから見下ろされていた。
半分しか開いていない目をぱちぱち。


「……キリン…?」


目をごしごししても間違いない。
黄色にまだら模様の長い首。ぱっちりおめめに不敵な口元。


「チャンミン、チャンミン、キリンがいる。」


体を起こして、隣をゆさゆさ。
揺り起こされて眠そうな片目が開いた。


「…よかったですね。」
「うん。 …じゃなくてー! サンタ? サンタ来た?」


さらに揺するユノ。
まだ眠いのにと呟くチャンミンだけど、
キリンに目を釘付けたままのユノが子どもみたいで可愛いくって目が冴えてきたから
あのですね、と口を開いた。


「昨日、サンタがそれに乗ってきたけど、眠るヒョンにキリンが一目惚れしたので、
 彼は一人で帰りました」
「えっ、ごめんねサンタ…」
「えっ、それツッコミどころ結構ありますが」
「……てことは、俺のキリン?」
「トナカイじゃないことすらスルーか。」
「ねー、キリン。 ユノのなの?」
「一ミリも会話になってないですね。 僕を起こす必要ありました?」
「チャンミン、 キリンがうんてしたー!」


そう言いながらユノはベッドの上に立って、天井に届きそうなほど高いキリンの首に
両手でひしっと抱きつく。

その光景にチャンミンはなんだか奥の方がうずっとなった。



「……可愛いですね」
「うん、すげー可愛い。 ありがと、サンタ 。」



嬉しいでキラキラした目をチャンミンに向ける。
可愛いのはキリンの話じゃないけどとは口にしない。
ただ布団から片手を出して、ユノに伸ばす。



「キリンは後にしましょう?」



ユノは名残惜しげにもう一度キリンを眺めてから、差し出されたその手を取った。
優しくめくられた布団の中に体を滑り込ませる。


今度は向かい合わせ。
ユノは寝癖でうねるチャンミンの髪を撫でた。


「なー。 ぜんぶ、チャンミンしたの?」
「そうです。」
「いっこ、剥がした」
「いいですよ」
「緑のボールもいっこ、ちょうだい?」
「いくつでも。 ってゆうかぜんぶ僕からのプレゼントです」
「えっ、俺持ってきてない」
「僕はいつももらってますからね」
「何を?」


チャンミンはそれには答えず、そうだ、と言葉を継ぐ。


「僕にもサンタ来たみたいですね」
「うん。 一年頑張ったからだよ」
「欲しいもの分かったのかな」
「……レゴじゃない?」
「えっ!」


ガバッと起き上がるチャンミン。
だけど、ユノが寒くないように布団との隙間を埋めることも忘れない。
それからベッドの上に胡座をかいて、大きな箱を開けはじめた。


「ああーっ!!」


欲しかったやつだ!ってテンション上がってるチャンミンが
ユノを振り返る。


「レゴ、ありがとうございます。 サンタさん」


箱に頬ずりしそうなチャンミンを
ゆのは可愛いなと目を三日月にするけれど、それを口にはしない。



「メリークリスマス 、チャンミン 。」


今度はユノが片手を差し出す。
チャンミンは箱を大切そうに元の位置に戻して、
その手を握った。



「メリークリスマス 、ユノヒョン 。」













end..

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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。
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