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tare.gif 【タレソカ学園高校/23.】





出版社のエントランスをくぐったところで、向こうから、短髪の男性が凄い勢いで走ってきた。
その人物に向かって、

「おつかれさまですー」

ってユノが足を止めてぺこりとするから僕も倣って頭を下げる。
ラフな格好といい、疲れた感じといい、編集部の人に違いない。

彼は目の前まで来ると、膝につく勢いで頭を下げた。




「ユンホさん!ごめんなさい!」




…なに……?
開口一番が謝罪?

つむじを見下ろしながら、浮かんだハテナについて考える。
普通なら汚れたユノの格好見て、驚くとかどうしたのとか、…そーゆうリアクションでしょ?


なのにこれ。
まるでユノの状況は自分にも責任があるといっているようなもので…
それってユノに何があったかを知っているということだ。


ということは、つまり……今回が初めてじゃないってこと…?



…そうか。
そうなのか。



グシャグシャと髪を掻き混ぜる。

あーもうっ、僕は馬鹿だ。
よく考えれば予想できたはずじゃないか。
自分の鈍さにイラっとすると同時に、もっと徹底的にやっておけばよかったと、早くも後悔が過った。

この人もこの人だ。
警備員を配置するとか、誰の出待ちか知らないけど鉢合わないようにスケジュールを組むとか、
ユノを迎えに出るとか、回避方法はいくらでもあったはずだ。


当人は頭を上げてください~って逆にフォローしてるし…
お人好しにも程がある。


「…チャンミンさんも…せっかく来てくれたのにすみません」


頭を上げた彼にいきなり名前を呼ばれて反射的に笑顔を貼り付けた。
…知り合いか。
少なくとも僕は知らない。
てゆうか僕に謝る必要は微塵もない。


「…大丈夫です。僕は。」


“僕は”を倒置法にしておく。
流石編集者。恐縮そうに首をすくめた。

そんな様子を、ユノはユノで不思議に思って見ていたらしく、

「知り合いだったの?てか、なんでチャンミンここにいんの?」

すごい質問を投げかけてきた。

「は、今更ですか」

前者はスルー。
後者の質問だって、もはや疑問を抱く段階はとっくに過ぎている。

だけど、ユノの疑問には彼が答えた。


「去年、学園の文化祭にお邪魔したとき、うちの雑誌のモデルにってお誘いしたんです。
明らかに他とは異なるオーラを纏ってて、中性的でもあり男性的でもあり、
絶対ウチの読者に受けると思ったんですよねー。
お声をかけさせていただいたんですけど、即答で断られて…
でも、名刺だけは一緒にいらっしゃったキュヒョン君に受け取ってもらえたので……
ほんっと来てくださってよかった!!
…あの~、ちなみに、キュヒョン君は? 見学にはいらっしゃらないんですか?」


なるほど。
キュヒョンに撮影現場に入る切符だと渡された名刺は、この人のだったのか。

「…多分来ないと思います」

キュヒョンだって僕と同じで、目立つような仕事はやりたくないだろう。

「チャンミンがモデルに興味あったなんて意外だなー」

ユノがシャープな顎を指先で撫でながら言う。

「ないですよ」
「「え?」」

2人の声がキレイにそろった。

「……冗談です」
「ははは、ですよね」



笑ったのは彼だけでユノは曖昧な笑顔を浮かべた。



「あ!すいません、タオル…使ってください」

思い出したように小脇に抱えていた柔らかそうなタオルを僕らに渡す。
ありがとうございます~って笑顔を振りまくユノだけど、

「あっ!ちょっと、そんな風に拭いたら汚れが伸びるじゃないですか!」

腕あたりをゴシゴシし始めるから慌てて止める。

「こうやって吸うように拭くんです」

手本を示した。

「あー、そうだな。てか、」
「後ろは僕が拭きますから」
「そーじゃなくて」

ユノをくるっと回らせて本人じゃ手の届かないところを拭く。

「チャンミン、自分も拭けよ」
「僕はユノヒョンほど浴びてないので大丈夫です」
「シャツにシミが…」
「ええ、あとで拭いときます」

そう答えるとユノはちょっと俯いてから、チラリと背後にいる僕を上目に振り返った。

「…俺のせいでごめんな?」
「晴れのちトマトな件ですか」
「新しい天気?」
「もう降らないから覚えとかなくていいですよ」
「……そだな」
「ええ、大丈夫です」
「……」
「心配いりません」
「…チャンミン」
「なんですか」


「チャンミナ」


思わぬ呼び名にドキッとしてしまう。


「、…はい?」


そのせいで返事が遅れた。
ユノはしばし僕の顔を眺めていたけど、

「呼んでみただけー」

そんな意味深をサラりと呟いて、拭く作業に戻った。








なんすかそれ。







まるで、「全力で甘えにいきたいけどな~人目もあるしな~でも、俺の気持ちに気づいてる?」みたいな。
抱きしめらんない場所で言う台詞じゃない。



…。
……。
………ん、ちょっと待て。
誰だ、抱きしめられない場所だって決めたの。


…いや、僕なんだけど。


そうじゃなくて、一般的に、あくまで一般的な視点から考えると、
男同士のハグは日常に溢れる光景だ。
しかもこの世界の僕はアイドルではない。
高校1年生のおこちゃまだ。子どもだ。ガキんちょだ。

つまり、長いバズーカに狙われているわけでもなければ
ネットでヤンヤン言われることもない。

年上に甘える行為ってやつは余裕で許される年齢なんだから
むしろ微笑ましい目で見てもらえるのではなかろうか…!!!



そうだろ?
そうだよね!?


……よし。


あくまで自然に、自然に。
腰に腕を回…




「あの、…」
「…!!!」




ビクーッ!!!




遠慮がちな声に心臓が縮む。
い、いやいや、別に悪いことしようとしてたわけじゃないけど!



「控え室にご案内しても…?」
「はい、よろしくお願いします」
「シャワー室の隣の部屋を使ってください」
「ありがとうございます」
「滅相もないです。こちらの手落ちですから。むしろ申し訳ないです。ホントすみません…」
「僕は気にしてませんから大丈夫です。それより今日の撮影のコンセプトは?」

止めなきゃ謝り倒してきそうだと思ったのだろう。
ユノが話題を変えた。

「はい、前回撮影で使って欲しいアイテムのアンケートを取ったじゃないですか。
 一番多かったのがソファーだったんです。」
「へー。」
「ゴージャスなの用意したんで、衣装も絢爛豪華な貴公子風なんですよ!」
「あはは、似合うかな」
「絶対似合いますよ!!」
「期待にお応えできるようにがんばります」
「お願いします!特に女性スタッフはユンホさんの貴公子コスチューム、
 ラフの段階で相当盛り上がってましたからね」
「プレッシャーだなー」



彼とユノとの間でどんどん話が進んでいって、
二人並んで歩き出す。



あ…ちょっと待って!ユノヒョン!



「ん?」



くるっと振り返ったユノとばっちり目が合って、ビックリしてしまう。

…あれ、今、声に出てた?

軽く動揺していたらしい僕は、幽霊みたいに両手を宙に浮かせたままの状態だったことに気づいて
慌ててバッと下ろした。

うわ、なんか恥ずかしい。
思わず足元に視線を落としてしまう。


「……~えと、すみません、今行き…」


ます、って言い切るより先に、視界にスニーカーが入ってきたから顔を上げると
進んだ分だけ距離を戻したユノがいた。


手が伸びてきたと思ったら、僕の頭をくしゃくしゃ撫でる。
そのまま肩に引き寄せられて…反対の腕にぎゅってされた。



「よし。」



体を離したユノがおでこがくっつきそうな距離でニコっと笑う。



「OK?」



そう聞かれたから

「オーケィ…です」

何がOKか分からないけど、反射的にそう答えていた。
そしたら、もう一回


「よし。」


って言って、僕をぎゅってした手の親指で、行くぞって向こうを指した。






「ユノヒョン…」

「ん?」

満面の笑みが注がれる。
同時に、なんかあったかいものが、僕の体の隅っこまで行き渡ったのを感じて不思議な気持ちになった。



「呼んでみただけです」
「なんだよまねっこか?」
「いいえ、なんか変なんです」
「何が?」
「ん~うまくいえない…」

この癒された感…なんだろう。

「お前さ…」

ちょっと言うべきか悩む様子を見せながらも、ユノは言葉を選ぶように言った。

「飄々としてたけど、晴れのちトマトな件で…ダメージでかかっただろ?」
「僕が?」

ダメージ受けてたのは、むしろユノだ。

「全然ヘーキですよ、僕は」
「いや、そーじゃなくて、俺を見て…」

ユノを見て…?

「それがキツかったんだろ?」
「あ……」


やっとユノの言わんとしていることに気づいた。

あの頃と違って大人になった僕は、自分への攻撃を上手くかわす手段くらい覚えてる。
だけど、ユノが……他人からの悪意を受けている。
あの光景に免疫がなさすぎて、消化しきれないくらい…ショックだったんだ。


「だから……ごめんな?」


澄みきった、キレイなアーモンドアイが、僕をまっすぐ見つめた。





そっか…。

なんだよ、「全力で甘えにいきたいけどな~人目もあるしな~でも、俺の気持ちに気づいてる?」って
僕のことじゃないか。

ユノを守るだなんて言ったって、まだまだ子供だ。
苦笑いしか出てこない。

どんな時だって、ユノが見ているのは人の心。
だからこんな風に、必要だと思えば行動にできるのだろう。
人目なんか二の次。
高校生であろうと、どんな世界であろうと、やっぱりユノはユノだ。

僕のヒョン。
でも僕だけのじゃない、この世界のユノ。



だからこそ守りたい。
守れるようになりたい。
人のことばっかりで、自分を守ることを後回しにするユノを。
誰にも傷つけさせたりなんかしない。




腕を取って、歩き出す。


「仕方ないですね。許してあげます」
「ぷ。そか、ありがとな」
「僕のお願い聞いてくれたらですけど」
「お願いって?」
「それは秘密です」
「なんだよ、気になるだろ」
「はいはい、お仕事待ってますし、さっさと準備しなきゃですね」
「……お前ってさー、大人びてるのか年相応なのか…ふり幅デカいよな」
「どっちがいいですか?」
「どっちでも」
「どうでもいいってことですか」
「じゃなくて、どんなお前もお前だろ」
「そうですけど、聞き方を変えましょう。どっちの僕が良いですか」
「どっ…」
「どっちもはなしです」
「そんなこと言われてもなー。俺の知ってるお前は全部好きだよ」
「僕が聞いてるのはどっちが良……」
「だーかーらー、どれも好きだって言ってんだろ?」
「………。」
「…チャンミン?」



立ち止まった僕をパチパチした瞳が覗き込む。







            今、す ……






「あのっっっ!!」




エントランスに響く声。
二人して声の主に目を向けた。




「ご、ご案内しても…?…あの、えっと、時間も時間なので…」


両手を太ももの前でもじもじさせている彼が、
申し訳なさいっぱいに、しかも語尾に向かってどんどん消えゆく声で


…そう言った。


僕らは顔を見合わせて苦笑い。
人目は…やっぱり気にしたほうがいいかもしれない。









続く..

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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。
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