tare.gif 【タレソカ学園高校/19.】






「ため息ばかりつかないでくれる?」
「ハァァァ~…」
「それ面白いわね」

1ミリも笑っていない副会長がスプーンを僕の口に運ぶ。
受け取ろうとしたらひょいと避けられた。

「またですか」
「スプーンの正しい使い方だもの」
「それ面白くないです」
「あらそう?」

1ミリくらい笑った副会長がもう一度僕の口の前に差し出す。
……。
……。
……。
視線での攻防。
20秒は粘った。
だけど…、副会長の瞳が悲し気に伏せられた21秒目、


           チャンミンの想い人を傷つけちゃいけない。


そう言い聞かせながら、今日も自己嫌悪を重ねるのだった。











図書館での出来事から、はや24日。
ユノを見かけることはあっても、話はできていない。

別に避けられているとか、そんなんじゃないと思う。

ただ、もともと会う機会がほぼなかったことに加えて、
僕の昼休みは、副会長との時間になったから。



さらに言えば、ユノに合わせる顔もなかった。
“浮気”するつもりは微塵もなくたって、結果的に“浮気”しているようなものなんだから。


救いがあるとすれば、そう思っているのは、僕だけなことだ。












「ねぇ、週末に映画見に行きましょう?」

スプーンの次に差し出されたのは雑誌。
一面には映画の宣伝。
可愛らしくネイルされた指先がとんとんとページを叩いた。
受け取って、パラパラめくる。
ファッション誌みたいだけど、知らない雑誌だ。

「楽しんできてください」
「恋愛映画に一人で行かせる気?」
「友達いないんですか」
「そういう意地悪言うの?」

雑誌から顔を上げると、声と同じ、悲しいを前面に押し出した表情が僕に向けられていた。
ハァ…もぅ!!
ため息つかないでとか言って、つかせてるのは副会長だ。

「11時に寮まで迎えに来てね」
「……。…考えてみま…、」


…ん?

丁寧に1ページずつ戻ってみる。
今、一瞬、ユノがいたような…


あー! いたっ!!やっぱりユノだ…!
…んー、なになに?

「REASEモデル…投票ランキング? O.Mさんリクエストのユンホ…君……」


親指と人差し指で挟まれた四角いイチゴショート。
あーん、するシチュエーションみたいだけど、ユノまで口、開いちゃってるし。
ってゆうか、フォークじゃなくて指でイクとか…
指先についたクリームまで舐めてごちそうさまする、ちょっとアダルティな流れを想定しているあたり


…スッゲーイイデスネ!!今度、シテもらおう…。







「気持ち悪いわ、その顔」

雑誌から顔を上げると、すっごく冷めた目が僕に向けられていた。

「自覚あるので問題ありません」
「そう…不愉快ね。返してちょうだい」

伸びてきた手をひょいと避けて、可愛いユノを愛でる。

きっと撮影のとき、キャッキャしながら恥ずかしがっていただろうなーとか、
(すげー見たかった)
カメラが向けられた瞬間、全力であーんして?ってしたんだろうなとか
(撮影後、羞恥に身悶える姿を見たかった)
そのあとの指…拭いてあげる担当争奪戦だったんじゃないかなーとか、
(僕の役目なのに)
そんなことを考え始めると、ユノの此処での仕事っぷりを間近で見てみたくなる。



リーダーという重荷を背負っていない、高校生のユノ。
どんな感じなんだろう…。



「ユノヒョンの撮影、いつなんですか?」
「なんで私に聞くの」
「だって、…ほぼ毎日会ってるじゃないですか」

僕は会えてないというのに。
副会長は雑誌を奪い返して、再び映画のページを開いた。
なんだか嫌な予感…

「誰か、この映画に誘ってくれないかしら~♪」


…こ、これは…声の大きな独り言ではないだろう。
タダで情報は手に入らないということか…
欲しいものと失うもの、それらを天秤にかけること十数秒。


「……僕も見たかったんです。」
「へぇ、そうなんだ。…で?」
「…………。チッ」
「ん?」
「あー、一緒に…行ってくれま…すか…」
「ええ、喜んで♪」

副会長は目的の言葉を引き出せて満足したようだけど
僕はまた一つ、罪を重ねたような気持ちになった。






「…で、いつ仕事してるんですか」

もう一度同じ質問を繰り返すと、副会長は再びユノが写っているページを開いて
『初登場から連続首位獲得!!』と書かれた部分を指差した。

「この撮影は毎月、第三土曜日にあるみたい。
 ランキングに入らないときは、行かないんじゃないかしら」

いやいや、ランキング落ちたことなんかないでしょう。

「このランキングの人たちは、みんな芸能人ですか?」
「知らないの? ティーンエイジャーで知らない人はいないのに…まぁいいけど。
 REASEはメンズ雑誌もあってね、そっちの読者モデルと専属モデルからエントリーしてるの。
 1年前に合同企画ってことで連載が始まったのよ」
「へぇ」
「この企画って1冊1票制なのね。だから自分の好きなモデルを1位にするためにみんな買うから
 売り上げが爆発的に伸びたらしいわ」
「1位になるといいことあるんですか?」
「圧倒的に露出が増えるわよね。つまり、世間への認知度が高くなるって感じかしら」
「ユノヒョンはずっと1位?」
「そうみたいね。私は、2位の彼。ジョンホ君を応援してるんだけど」
「ジョンホ…く……ん?」


隣のページで、胸元をはだけ、壮絶な流し目を寄越している男。
…僕の目の前で意味ありげにユノを抱きしめた…忘れもしない、
あのジョンホさんと同じ顔をしていた。



「ユンホ君を硬派とするなら、ジョンホ君は軟派。だから何かとスキャンダルが
 聞こえてくるんだけど、こそこそしない堂々とした感じがイイのよね」
「……。」
「大人びた雰囲気なのに、笑ったらできる笑窪が可愛いの」
「……。」
「モデルのほかに、バライティにも出てて、すっごく人気あって…」
「……。」
「…聞いてる?」
「……ええ。」




今でも胸の痛みを思い出す、瞼の裏に焼き付いて離れなかった映像。
もう、繰り返させはしない。




ガタっと派手な音を立てて立ち上がる。


第三土曜日は…
今週だ。







続く..

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tare.gif 【タレソカ学園高校/20.】






「キュヒョナ、キュヒョナ!」

昼休みはまだ半分が過ぎたころ。
教室に入るなり、まっすぐ突進して友達の輪から
眩しい太陽が降り注ぐ窓際に連れ出す。

キュヒョンは購買部一番人気のやきそばパンをかじりながら、嫌そうに顔をしかめた。

「副会長はどうしたよ…」
「え。第一声がそれ?」
「やけに早いじゃん」

しかめっ面のうえに、眉間にシワ。
壁ドン?壁ドン?! っていう背後から聞こえる黄色い声のせいじゃなくて、
僕がこうして教室に戻る度に、こんな顔をするんだ。

「…なー、なんでいっつも不機嫌なわけ? いい加減理由言えよ」
「………」
「あれ? 今日は鏡見てから聞けよって言わないの?」

何度も繰り返した問答が、今日に限っては、ない。
窓ガラスに映った自分の顔をチラリ横目に見る。
制服を着ているけど高校生じゃない、大人の僕が、
いつものしょぼくれた顔じゃなくて、不思議そうな顔をしていた。







実は副会長と付き合っているらしいことを告げると、キュヒョンも知らなかったみたいで
それはそれはたいそう驚いてから、秘密にしてたのかっ…てスネられてしまった。
でも翌日には機嫌は直ったみたいで、散々、アレしたコレした?ってからかわれたんだけど。

一日、一日、日がたつごとに、ちょっとずつ機嫌は下降を辿り
地を這って戻ってこないまま、今日に至っていていた。






「…機嫌、回復したの?」
「どう見ても柔和な顔してるだろ」
「だって、昼前までは阿修羅だったし」
「いやそれは言いすぎ」
「理由聞いても、同じことしか言わねーし」
「ブサイクって面と向かって言わずにおいてやったんだから、感謝こそされだ」
「さりげなく悪口言われてる?」
「学園天使の名が廃りまくってから」
「てことは、今日はブサイクじゃないってこと?」
「お、察しがいいな」
「……」


僕の顔がブサイクだったから機嫌が悪くて、
ブサイクじゃないと機嫌が直るわけ?
僕の顔がどうであろうと、ファンじゃあるまいし…
キュヒョンにはさほど重要じゃないと思うんだけど。
美意識の問題か?
見目がキュヒョン基準に達しない男とは一緒にいないってゆうポリシーか。




キュヒョンはぷぅと口から息を吹き出すと
僕の肩に腕を乗せて、クククと笑った。

「お前さー、副会長と昼一緒に食べ始めてから、キラキラ具合が日に日に減ってたし」
「キ、キラキラ?」

なんだそれ。

「自覚ある?」
「……」
「だよな。ユンホ先輩のおっかけしてたときはさー、迷惑なくらい色んなもん撒き散らして
 新しい層を獲得しーので面白いことんなってたのに」
「タネじゃあるまいし。つか何の話だよ」
「昼休みは空気がうまいぜーって女子陣の合言葉だったのにさ」
「だから何の話だよ」
「そりゃ今だって見目的には悪くねーよ。けどさ、何も出てないからおこぼれに預かることもなく」
「だーかーらー」
「……正直、全体的にしっくりきてねーってのか全員一致なんだわ、これが。」
「話聞けよ」
「先輩とつるみ始めて数日だってのにな」

脱力するする僕とは反対に、白い歯を見せてCMみたいな爽やかな笑み。
そして、伸ばされた手がトンと胸をたたいた。





「つまり今日のお前は…久しぶりに、いい顔してるってこと」


笑顔がグサリと刺さる。



……そうだ。
そうだった。
何で気づかなかったんだろう。



「…ごめん」

思わずつま先に視線を落として呟く。

思い返せば僕だって…、キュヒョンがこんな風に笑うの…久しぶりに見た。

ユノを見かけても、隣に副会長がいるときばかりで…
僕らの距離は縮まるどころか、広がる一方のような気がして、焦燥感に駆られてた。
重ねる日々は、ユノの事しか考えられない飢餓状態。
毎日が限界まで苦しくて苦しくて、自分のことばっかりで、
心配してくれるキュヒョンにも、全然気づいていなかったみたいだ。






「相談があったんだろ?」

ガシッと肩に腕が回ってくる。

「キュヒョナ…」
「なんだよ、泣きそうな声して。胸貸そうか?」
「…貧乳じゃ嫌だ」
「ここにはデカイだけより詰まってるっつーの」


僕の頭を胸に抱え込むとぐしゃぐしゃに髪をかき混ぜた。


知ってるよ。いっぱい詰まってることくらい。
此処に、この世界に、キュヒョンがいてくれて本当に良かった。
















       要するに、宣戦布告しに行きたいってこと?」
「そうそう。…って、別に…そうじゃないし…」
「ゆのひょんはぼくのーってか?」

副会長から聞いたユノのスケジュールのこと、ジョンホさんのことを話した結果、
キュヒョンは僕がユノの仕事現場に行きたい理由を、かなり的確に読み取ったらしい。

「けどこっそりの必要ある?」
「ない」

ないけど、ジョンホさんの事とは別に、
ソロの仕事現場なんて滅多に見れるものじゃないし、僕がいないときのユノを
生で見てみたかった。

「まぁ、ユンホ先輩の付き添いって形が一番簡単なんだけど…」
「それ以外で、外出する方法ってなんかないの?」
「冠婚葬祭」
「あー…」
「なんだけど、1つだけ手があるんだな~」
「えっ!? なんだよ、まずそれを一番先に言えよ!!」


掴みかかりそうな勢いの僕を、まぁまぁと両手で制す。


「聞きたい聞きたい?」
「早く言え」
「…言え?」
「教えてください」
「変わり身早っ!!」
「もー!キュヒョナ!!」

もったいぶった憎たらしい顔が、じつは、と紡いだ。

「撮影スタジオにまで入れちゃう、チケットがあんだよ」
「チケット? 観覧的な?」
「ノンノンノン」


キュヒョンは、人差し指を左右に振りながら
本気とも冗談ともつかない口調で、言った。






「お前も芸能界に仲間入りする?」











続く..

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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。