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tare.gif 【タレソカ学園高校/15.】







「勉強に飽きちゃいましたか?」

こんにゃく状態のユノの真似をして、机にぺったりくっついてみると
ひんやりした机がなかなか気持ちよかった。

そして、目の前にはユノの顔。

意志の強さを表しているような凛々しい眉。
彫刻みたいに絶妙な美しさを保った鼻筋。
誰もが羨むシャープな輪郭。
ふんわりすべすべ滑らかな頬。
肉厚で触れたら柔らかい唇。

どれもこれも、繊細で上品に見える。
欲目だとしても、臆面なく言ってしまえば……
ユノを構成するすべてのパーツが大好きだ。







「おーい、聞いてる?」
「…ええ、もちろんです」

思考がヒョンバカな方向にトリップしていた。
何の話をしてたっけ?

「……で、勉強に飽きちゃいましたか」
「で、じゃねぇよ。…やっぱ聞いてないんじゃん」

ひよこみたいに尖った口をパクパクさせて言う。
不満で尖っているのか、体勢のせいか。

「そうですね。すみません。もう一回言ってください」
「やーだ」
「ならいいいです」
「ええっ!?諦めるの早っ!」
「言いたいのなら聞いてあげますよ」
「別に言いたいわけじゃないけどぉー…」
「けどぉー、何ですか」


むくれているらしい顔を見つめながら、不意に、なんでコレが可愛いなんて思うんだろうって
数え切れないくらい自問自答した疑問が、今日もまた顔を出す。


「…人の顔、無遠慮に見すぎだから、って言ったの」
「僕は勉強に飽きたのか聞いたはずですけど…」
「だーかーらー、そんなに見られてたら勉強にしゅーちゅできない!」
「…いつ集中してました?」
「ずっと」
「エアースタディで?」
「そうそう」


良くわからないけれど…自慢気だ。


……言うまでもないけれど、芸能界には見た目のいい奴が腐るほどいる。
でも感想としては、綺麗だな、カッコイイな、それだけ。
たとえ表情や仕草、話し方や雰囲気、笑顔に心が揺さぶられても、視界から消えたら、もう、何も残らない。

なのに、ユノのに対する自分といえば…脳内に残る残像だけで、気づけばニヤケていて、
慌てて表情管理に走らざるを得なくなるレベルってゆう……。

しかも、今、目の前にある顔は、たしかにそれぞれのパーツで見ればキレイだけど、
総合的に見たら、アイドルらしからぬ変な顔、真っ最中。

かつ、こう言わざるを得ない現状。


「……アホですね」

ため息がこぼれる。

「お、…お前、俺を先輩だと思ってないだろ…」
「いえいえ、そんなまさか。ねぇ、先輩♪」
「ぶりっこしたってカワ…カワイくないカラっ!」

がばっと身体を起こして、ビシッと僕を指差したユノの、片方のほっぺが赤くなっている。
そうなんだよ。そーゆーところ。

頬杖をついて、顔を半分隠す。

「可愛いのはヒョンだけでいいですよ」
「え?」
「可愛いのはヒョンだけでいいですよ」
「いや、全然大事じゃねぇから。二回言わなくていいし」
「可愛いのはヒョ…」
「あーっ!も、わかったって。…お前、マジでそんなこと思ってるわけ?」
「ええ。本気と書いてマジと読む、とか言わせたいんですか?」

ユノの頬がピクリとする。
笑いそうになったのを我慢しているらしい。
誤魔化すように、両方のほっぺを膨らませた。

「もー、見んな、こっち見んな」
「見られ慣れてるでしょ」
「そうゆう問題じゃねぇし」
「じゃぁ、どうゆう問題ですか」
「…あ、穴があく」
「それは困りましたね」

僕がそう言うと、ユノはほっぺを引っ込めて、なんともいえない微妙そうな顔をした。

「……ほんとに困ってんの?」
「もちろんです」
「じゃぁ、せめて困った顔しろよ」
「できてませんか」
「微塵もできてねぇよ。どこも困ってないし!」
「ほらこれ」

自分の眉間を指差す。

「これ~?」
「俗に言う困り眉ってやつです」
「こまりまゆぅ~?」

なにそれ~な反応。

「ユノヒョンは僕を困らせても気づかないから、縁がないですかね」
「それって悪口だろ」
「いえいえ、褒め言葉です」

ユノの顔がふにゃっと崩れたかと思えば、手のひらを額に当てて、あーはーはーと笑った。
図書館に響いた楽しそうな声。

でもすぐに、しまったとばかりに両手で口元を覆った。
身を屈めてキョロキョロと周りを見渡す。


しん。


相変わらず静かな図書館。

「…だ、だいじょーぶ。バレてないな」

周囲を確認してから、ほっとした様子で口元から手を離した。





いやいやいやいや、100%ユノの声だってバレてるから。
ってゆうか、むしろ迷惑でも何でもなくて、ある意味、賛美歌レベルで心が洗われるという
ありがたい影響しかないから。


心の中でツッコミながら、かくいう僕もその影響を受けているわけで。
頬杖で顔を隠す作業、絶賛継続中。








続く..

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tare.gif 【タレソカ学園高校/16.】






「ここにいたのね」


突然背後から聞こえた声。

    ピリッ。

ユノの表情に変化はないけれど、雰囲気にほんのわずかな緊張が混じる。
誰が来たのだろうと思いながら振り向くと、黒髪の…二度見してしまいそうなほどの美人が立っていて、
僕を見ていた。


この人どっかで…

……え?
………ん?

あーっ!!



「………ふ、副会長!?」



驚く僕を見て、副会長は満足気な笑みを浮かべた。












……マジですか。
失礼なこととは分かっていながら、頭のてっぺんからつま先まで往復で眺めてしまう。
同一人物とは思えないんだけど…
だって、始業式のときは、愛想ゼロ!不純異性交遊なんて汚らわしい!潔癖真面目なメガネ女史って感じだった。
今はメガネしてないし、艶々な黒髪に似合った化粧もばっちり。雰囲気も柔らかい。
他の女生徒と同じ制服を着ているはずなのに…ここにいるのは、ユノの好みど真ん中の、清楚で清廉な美女。
文句のつけどころがない。100点満点。


なんて、総評している場合じゃない。
頭の片隅に居座っていた小さな不安が、一気に頭角を現してくる。
毎日ユノに会っているはずなのに、休日にまで会いに来るなんて…
しかも、この気合いの入りよう。
これからデートなの。見ればわかるでしょ?と言わんばかりだ。


      ユノと付き合ってるってウワサは、本当だった?


とはいえ、……気になるのは、さっきの…ユノの様子。
恋人に対する種類のものではなかった。
どれかといえば、会いたくない人物が現れたかのような…

もしかして、バレる云々は、その他大勢に迷惑をかけるとかの話ではなく、特定の個人を指していた?
この場合、特定の個人とは副会長を指すわけだけれど、副会長は生徒会の仲間だ。
ユノに限ってそんなわけない。


じゃぁ、二人の関係は?
恋人?
仲間?
それとも別の…何か?


……全然わからない。








そのとき、

「おはよう」

淀みのない、澄み切った声が、僕を通り越して副会長に飛んでゆく。
さっきまでの声質とは違いすぎて、驚きつつ振り返ると…



「ヒョ……、ン?」

きりり。
まさに、きりり。
さっきまでの9割り増しくらいで、きりり。

無駄にユノのイケメン度がアップしていた。

見事な変わりっぷり。
脳内をぐるぐるしていたアレコレなんてキレイに吹っ飛ぶ。








「…なんで笑ってんだ」

声をかみ殺して肩を震わせる僕を奇妙そうに見るユノ。

「くく…だって、その顔…」
「顔?」
「そそ。その顔です」
「なんかついてる?」

指先で顎のラインを往復する仕草。
それすらキマり過ぎている。

「さっきまで、こーんな口してたくせに」

ユノの唇をつまんでひっぱって、アヒルにしてやった。

「む! ひゃふぇろよ」
「急に生徒会長モードですか?」
「…!」

ぱちくりした大きな黒目が僕を見る。

「?…なに驚いてるんですか」
「あー…うん、」

モードチェンジがバレて恥ずかしかったのか、ユノは両手でほっぺを包みながら瞳を伏せた。




音楽の仕事をしているときのユノは、真面目で厳しくて真摯。しかもこれでもかというくらい、ひたすらに大人で男前。
ファンのために仕事をしているときのユノは、誠実で正直でひたすら優しい。
かと思えば、エロさMAX、セクシー爆発、フェロモンダダ漏れ、ときどき天然。
テレビの仕事をしているときのユノは、爽やかでおちゃめでキュート。笑い声がみんなの癒し。ときどきカッコーつけ。
仲間といるときのユノは、みんなの太陽。キラキラしていて、眩しくて、そしてあったっかい。
さりげない優しさと、質実剛健さは、誰もが敬愛して止まない。ときどき空回る感じすら愛しい。

普段から切り替えの見事さを見慣れているから何の違和感も感じていなかったけれど
よくよく思い出してみれば、最初に会ったときのユノは、きりり完璧!生徒会長モードだった。

じゃぁ……

        一体、いつから生徒会長モードじゃなくなってた?





「なーに、一人でニヤケてんだよ」
怪訝そうな声にツッコまれる。
「もともとこーゆー顔なんです」
「うっそー」
「嘘? じゃぁどーゆー顔ですか」
「えっ!?」
「こーゆー顔じゃないんでしょ?」
「…それは…えと、結構カッコイイってゆうか…可愛いってゆうか…」
「ユノヒョンのタイプですか?」
「俺?ん~お前の目とか…すげー綺麗だと思うよ」
「好きですか?」
「うん。好……って、何言わせんだよ!」
「はっはっはー」
「何かもてあそばれた気がする-っ」

ジタバタするユノ。
マネする僕。
笑うユノ。
笑う僕。

そうそう、二人だけのときのユノは、こんなだ。
ちょっと子供っぽくて、だいぶ自由。
どのモードにも属さない、普通の青年。



だから…

          それってつまり、そういうことでしょ?












「ん゛っん~」

割って入った咳払い。
ハッとして顔を見合わせる。

そうだ、そうだった。
全然二人だけじゃなかった。



「…チャンミン君、おはよう」

かなりの置いてけぼり状態だったと思うけど、
何かありました?ってくらいの澄まし顔。

「……お、おはようございます…」

恐る恐る挨拶を返したら、
ザ・女子力!みたいな笑みが返ってきて、ゾクっとしてしまう。
その微笑みが逆に…恐ろしい。

しかも、副会長はその表情をより深くして、ユノに目を移す。
そして、

「ユンホ君…」

何かを訴えるように名前を呼んだ。
ね、お願い。そんな響き。
しかもお願いしておいて、絶対その通りになるという自信を持った、そんな顔で。

副会長の視線を追って振り返ると、
ユノの視線はまっすぐ副会長に向いていた。


「……。」
ユノは何も答えないし、頷きもしない。


それが僕には、二人が目だけで会話しているように見えた。
僕が介入する隙間なんて、1ミリほどもない。
今度は僕が、置いてけぼりをくう番だった。


「ユンホ君。」

もう一度、副会長がユノの名前を呼ぶ。
今度はお願いではない。棘を含んだ…そんな響き。


「……。」
それでもユノは何も答えないし、頷きもしなかった。


ただこの空間の空気だけがどんどん重くなって…氷になって落ちてくるんじゃないかと思ったとき、
ふっと、ユノの肩から力が抜けた。
同時に空気も軽くなる。

ユノは僕を見た。
そして、申し訳なさそうに微笑む。

「……お前…なんて顔してんだよ」

大きな手が僕の髪に触れて、わしゃわしゃとかき混ぜた。
自分がどんな顔をしていたのかよくわからないけど、たぶん、心配って毛筆で書かれるレベルで表れていたのだと思う。


だって、明らかに二人の空気感がおかしい。
別に副会長が何をどうしてそうなってるかなんてどうでもいいけど、
まるでプレッシャーをかけているかのような、あの態度。
ユノは平然と受けているように見えたけど…

…気付いてしまったら、意識せざるを得ない。

今のユノは、生徒会長の顔をしている。
完全無欠、鉄壁の超人。
それはつまり、ユノの表情と心が必ずしもリンクしていないことを示す。







「あー、俺、ちょっと席外すな」
僕の髪をぐしゃぐしゃにしたままで、ユノが立ち上がった。

「どこ行くの?」
「調べものがあるから、資料探してくるわ」
「じゃあ僕も行きます」

慌てて腰を浮かすと、笑いながら制止された。

「お前はここで勉強だから」
「もう終わりました」
「まだだって」
「そもそもヒョンに付き合ってただけですからね?」
「だーかーら、とりあえずお前はあと3時間くらいここに缶詰めなの」

カンヅメ?
一歩も動けないって意味?

「……まぁ、頑張れよ」
「ちょっと」

理由が分からない。
なぜ僕が缶詰にされなければならないんだ。
締め切り間近の小説家でもあるまいし。

「サボったら鉄拳飛んでくるから、気を付けろ」

鉄拳?
格闘アクションゲームでもあるまいし。

急な展開に僕がどれだけ戸惑っているか気づいているはずなのに、軽快にしゃべるユノ。
しゃべりながら、机に広げていた勉強道具一式をまとめて、向かいの席にずらす。
僕のいる、ななめ前。
そして、椅子も空けた。

…なんで?
資料を探しに行くだけならそのままでいいはずなのに。

増えるだけで減っていかない疑問。
とりあえず、説明してほしい。

「待って、ヒョン」
席を離れようとするユノを引き留めるために手を伸ばした。
だけど、その手は柔らかい身体に遮られる。

そして、




「ありがとう、ユンホ君」




ユノのいた場所に副会長が      座った。
同時に、ユノが歩き出す。

交わる、視線。
でもそれは本当に短い時間で…
僕の横をすり抜けるとき、ユノは目を閉じた。



振り返える僕。
振り返らないユノ。



…だめだ。
これはだめだ。
何がだめなのか分からないけど、直感がそう告げている。

だから追いかけようとしたのに、
背後から腕を取られた。





「…さぁ、はじめましょう?」

振り返ると、副会長が蠱惑的な笑顔を浮かべて、僕に微笑んでいた。








続く..

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一体、いくつまでお願いしてもいいんだろう。


「やっぱ、欲張ったらだめだよな……、と~っ!」
グラスからポタリと落ちた雫が短冊を濡らしたから、慌てて手で拭う。

「…逆効果じゃん」
ふやけた範囲が、広がっただけ。
親指と人差し指で摘み上げて、フーフーと息をふきかけてみる。


………。


…ま、願い事に差し障りはないはずだ。
そもそも、そんなことで聞いてくれないほど心が狭い神様なんて、いないに違いない。

にしても…僕は誰にお願いするんだろう。
黄金の液体を喉に流し込みながら、七夕について考えてみた。












【七夕と、僕の宣言。】












7月7日。七夕。
短冊と呼ばれる縦長の紙に願い事を書いて飾るという風習を知ったのは、数年前。
日本独特のイベントだから、この専用紙は韓国じゃ手に入らない。
そもそも、専用紙に書かなければいけないものなのか…


「……ま、何でもいっか」


そそ。
僕の願いを叶えてくれるのなら、何だっていい。
神でも仏でも悪魔でも。

って、悪魔はだめか。

七夕もあと数時間で終わる。
考えるのはやめて、さっさと願い事を書くべく…筆ペンを握った。





さて、一枚目。

【ユノが ずっと しあわせで ありますように】



縦書き、しかも日本語で書くのはたいへんだったけど、
…意外と上手に書けた。
日本滞在期間が長かったおかげだろう。

書けたことには満足がいったけれど、読み返しながら思う。

「見ず知らずの神様より、僕のほうがユノを幸せにできるんじゃない?」

ってことは、願掛けする必要もないわけで。
せっかく書いた短冊だけど、くしゃと丸めてぽいっと放った。
ゴミ箱のふちに当たって、カサリと音を立て、床に落ちる。

……ま、いっか。
うんと頷き、短冊に目を戻した。




気を取り直して、二枚目。

【ユノが あるきたい みちを すきなように あゆめますように】



よし、できた。
書きあがった短冊を親指と人差し指でつまんで、ぴらっとライトにかざす。

さっきより、まっすぐかけている。
……でも待てよ。
よくよく考えれば、現実に手を出せない神様には…これ、無理じゃない?
むしろ、直接的なサポートができる僕のほうが役に立つ気がしてきた。

「ねぇ?」

誰にともなく同意を求めつつ、くしゃくしゃっと丸めてぽいっと放る。
カサリと音がした。
またもや床に落ちたらしい。

不調だ。




次こそはの三枚目。

【ユノが むびょうそくさい、いつまでも げんきで いられ……】



って、おじいちゃんか!
書いている途中で思わずツッコミを入れてしまった。

……そもそも、神様でも神様じゃなくても、毎日ユノの面倒を見てもらいたくない。

「僕が見るし。」

せっかく使った四文字熟語だけど、却下。
丸めてぽいっと放る。

カサッ。
音がした。

またか。




今度こその、四枚目。

【ユノが いつまでも おおきな あいにつつまれて…】



手を止める。書いておいて何だけど……
それはつまり、神様に世界で一番ユノを愛してもいいよ、って許可を出すってこと?
いや、べつにいいけどさ。

「一番は僕じゃん?」

僕以上なんているわけがない。

くしゃっと丸めてぽいっと放る。
やっぱり、ゴミ箱には入らなかった。




五枚目。

【ユノが……】


…。
……。
………思い浮かばない。



「僕の力が及ばないことってなんだろう」



自問自答しながらペンを缶ビールに持ち替えて、開けっ放しのカーテンから見える星に目を向けた。
もちろん万能じゃないから、できないことはある。
でも、




    ユノの為にできないことがあるのだろうか。





何事も、起こるときには起こる。
望もうと、望むまいと。
重要なのは、そのときどうするかだ。
行動にこそ、真価が問われる。

ふかふかのソファーに足を上げ、胸の前で腕を組み
ぼんやりとそんなことに考えを巡らせはじめた。






















「…チャンミン」


聞き慣れた声に呼ばれる。
優しい優しい音。大好きな声。


「寝てんの?」


寝てませんよ。


「一人でこんなに飲んだの?」


夕方から休みだったんだからいいじゃないですか。
それより何でユノヒョンがウチいんの?
今日来るって言ってなかったし、ドラマの打ち合わせでしょ?


「…珍しく散らかってんな。…ん?」



カサカサ。

「……ん?えーと、ゆのが~、ずっと……、…。」

カサカサ…

「…これも?」

カサカサ…

「…これもか」

カサカサ…

「俺のことばっかりじゃん…」



一体何見て……




   ッあぁぁぁぁ       っ!!!





がばっと起き上がると、目の前にはスラリ長~い足。
見上げると、その手には、ゴミ箱から弾かれまくった、例の…くしゃくしゃの紙。



「か    っ手に見ないでくださいよ!!」


飛び上がるように手を伸ばして、慌ててユノの手から奪い取ろうとしたけれど
ひょいっと避けられてしまった。

キッと睨む僕。
ニヤリと笑うユノ。

もう一度、手を伸ばす僕。
ひょと避けるユノ。

舌打ちする僕。
ふふんと鼻を鳴らすユノ。


「焦るチャンミン、ゲット」
「別に焦ってないですから。ゲットもされてませんから。」


間髪おかずに返しながら、さっと床に目を向ける。
あるのは、ビールの缶と、ワインの瓶だけ。

一枚も落ちていない。

普段なら床にゴミを放置したままなんてありえないのに、
お酒が入っていたせいだろう……

恐ろしいことに、すべてユノの人差し指と中指に挟まされていた。





「これもらっていい?」

皺を伸ばしながら、僕に聞いてくる。
もちろん、

「だめです。」

許可するわけがない。

「えー、ケチ」

ユノは不満を唇を尖らせることで表現しながら、短冊をお尻のポケットにむぎゅと押し込んだ。

……をい、ちょっと待て。

「…ヒョン」
「うん?」
「今、だめっていいましたよね」
「だな」

うんと首を縦にふる。

「じゃぁなんで、ポケットに入れたんですか」
「持って帰るから」

…いやいやいやいや。会話、成立してる?

「韓国語すらできなくなりましたか…」
「それはさすがにねぇよ」

真面目に答えるユノ。

「返してください」
「あはは」
「笑うところじゃないですから」
「まぁまぁ、落ち着け」
「はぁ?落ちついてますけど。
 だいたい、ヒョンはいつも…    っ!」


ぴらり。

おもむろに、目の前に掲げられた、ピン札のように皺のない短冊。


絶句する僕。



「…こーれ。」

ユノはニヤニヤしながら左右に振る。
それは僕が最後に書いた、短冊だった。

「そもそもこれさ、お願いじゃなくて宣言だけど」
「……」
「俺って、だいぶ愛されてる?」
「……」
「ねぇ、チャンミナ?」

やけに嬉しそうな顔。
なんかムカつく。
だから、ぷいっとそっぽを向いて言ってやる。


「ユノヒョンの、とか書いてないし」
「……」
「勘違いにもほどがあります」


直後、ぎりしとソファーが軋んで体が傾く。
ユノに目を戻すと、いつの間にか、片手をソファーの背にかけたユノの腕と広い胸に囲まれていた。


「へぇ~。そういう意地悪言うの?」

斜め上から降ってきた、低い声。
ハラリと額から落ちたちょっと長めの前髪。
ふわっと香る、ユノの匂い。


なんだか、そんなでもないはずなのに、久しぶりな気がする。
髪の色もしばらく明るかったから、黒髪を見慣れないせいもあるだろう。
しかも、韓国に戻ってきてからのユノは、ほんとに、秒単位のスケジュールですかってくらいめちゃくちゃ忙しくて…
ツアー中はずっと一緒だったから、反動ってやつだ。
きっとそう。



だからだ。
何の脈絡もなくこんな行動に出たのは。



「…!」

ユノが驚いたように体を引こうとしたから、回した腕にもっと力を込めて、いやいやをするように顔を逞しい胸に押し付ける。

「チャンミン?」

急にどうしたんだってゆう怪訝そうな声。
プライベートでも仕事中でも、僕からスキンシップを取ることが多くなってきたとはいえ、ユノは慣れないらしい。
自分が他人に構う分には、苛立たしくなるくらい無頓着なくせに。

「…酔っぱらってるんです」
「そうなの?」
「嘘じゃないです」

そう。短冊を書きながらたくさん飲んだ。
ユノはくくくと笑って、僕の髪に指を絡めて梳く。

「じゃぁ、もっかい聞いてみようかな」
「何をですか」
「俺って、だいぶ愛されてる?」

……それか。

「ねぇ、チャンミナ?」

極上の甘さを含んだ声が僕に問いかける。
僕は顔を上げた。

その表情も、声とまったく同じで、甘ったるい気分になってくる。


「知ってるのに、言わせたいんですか」
「だって、俺の幸せを願ってくれてんだろ?」

短冊に書いたけど…

「幸せに関係あ…」
…るかもしれない。

「だって、好きな道歩けって言ったじゃん?」

短冊で言ったけど…

「道に関係あ…」
…るかもしれない。

「だって、このままじゃ健康に悪いだろ?」

短冊で祈ったけど…

「健康に関係あ…」
…るかもしれない。

「だって、チャンミナの愛に包まれたいし」

短冊で願ったけど…

「それれとこれとは関係あ…」
…るな。

「だって、俺と」
「あー、もういいです!」

まだ続けようとするユノを遮る。
言い負かされることなんてほぼ皆無だけど、今回ばかりはユノの手札が強すぎて、敵うわけない。

だから、





「……明日の朝…言ってあげます」





そう言ってみたはいいけれど、急に恥ずかしくなって、顔を隠す。
しかもじわじわとやってくる、後悔。

ユノのため、ユノのためと言いながら、結局は自分のためかもしれない。
短冊に書いたことも全部全部、押しつけがましい自己満足と独占欲。
今日だって、たぶん僕の顔を見に寄ってくれただけだ。
なのに、僕ってば…欲が深すぎる。


だけど、そんな負の思考の入り口に立った僕を、ユノは簡単に呼び戻した。





「ありがとう、チャンミナ。」

ひとつひとつの言葉に込められた、愛と幸せと感謝。
ただ降り注いで僕のカラダに染み渡ってゆく。



短冊をくしゃくしゃにした意味も、
短冊に宣言した理由も、
僕の気持ちも、ぜんぶぜんぶ、分かってくれてるんだ。



そろりと顔を上げると、少女漫画から出てきた王子様みたいに、背景に煌めきを背負ったユノの唇が落ちてくる。
僕は、目を閉じるのが惜しいと思いながら、それを受け止めた。













        いつも ぼくが そばにいます。        


それは、僕の願いであり、ユノへの誓い。
7月7日。七夕。











end..

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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




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