tare.gif 【タレソカ学園高校/09.】






僕の頭を撫でてくれていた優しい手が離れて行く…と思ったら、
いきなりぷにっと頬をつねられた。


「………ひゃにふるんれすか」
「いやー、あんまりにも涼しい顔してっからさ」


うにーっと引張って、プチンと手を離し、そしてにっこりと僕に笑いかける。
笑顔の裏で「1対5の喧嘩をしでかしそうだったお前、危機感を持って反省しろ」と言っているのは間違いない。
だからつねられた頬をさすりながら言い訳と謝罪を口にする。

「ユノヒョンを巻き込んだことは…本当に反省してます。
 戻ってくるって分かってたら喧嘩なんかしませんでしたし…あの、ヒョンに何もなくてよかったです。
 ホントにすみませんでした」

たの音と同時にペコりと頭を下げる。



……。
………?



けれど何の声も、僕の頭上から降ってはこない。
分かればいいよとか、もっと反省しろとかあってもいいのに。

だからそろりと顔を上げて様子を伺うと、
ユノはきゅっと唇を結んで、笑みがこぼれるのを我慢しているような顔をしていた。



…照れてる?



僕の視線に気づくと、それをごまかすように口元を手で隠して、コホンと咳払いをひとつ。


「お前さ…俺の心配ばっかじゃなくて、自分の心配もしろよ」


表情とは正反対の呆れた声音でそう言うと、くるりと背を向けて歩き出す。
どうやら早々に反省タイムは終わったようだ。
黄金色の太陽の中に溶けていきそうな背中、僕はその三歩後ろを追いかけた。


















「お前って…意外と男っぽい性格してたんだな」


隣に並ぶと、ユノはチラッと僕に目を向けて肩をすくめる。
キュヒョンも言っていたけれど、中学生の僕は内向的で大人しい性格だったらしいから
それに違わず、ユノもそんな印象を抱いていたのだろう。


「意外ですか?」
「うん。始業式の挨拶も、さっきの喧嘩も」
「あ~…喧嘩は本意ではありませんでしたけど」
「そうなのか? あんなに堂々と絡まれる奴、マンガでしか見たことなかったけどな」
「怖かったですよぅ…って半べそかいてたほうがよかったですか?」


人差し指で涙を拭う真似をしたら、ユノは「まさか」と苦笑した。


「泣かれてもハンカチ持ってないから困る」
「大丈夫です。ヒョンの制服で拭きますから」
「自分ので拭けよ」
「それじゃぁ、泣く意味ないじゃないですか」
「えっ?!」
「冗談ですよ。流石に慰めてもらうためにウソ泣きなんてしません」
「…つうか、お前がシクシクしてたら疑うけどな」
「失礼ですね」
「あんな不敵なとこ見せられたあとじゃな。その前だったら信じてたよ」
「その前?」
「ああ、みんなに愛される可愛いマンネなチャンミンくん」


頬に人指し指をツンと立てると上体を傾け“可愛い”を具現化して見せるユノに笑ってしまう。
僕をからかっているつもりなのだろうけれど、そんなことをするユノの方が可愛いことを自覚していない。
他者に与える効果を十分に理解した上で使われても困るので、あえて指摘しないでおく。


「可愛いマンネはそのとおりですね」


“可愛い”の具現化を真似して見せたら、今度はユノが笑った。


「…自分で可愛いとか言う?」
「ぜんぜん可愛くなんかないですよぅ~って謙遜したほうがいいですか?」
「………しなくていいデス」
「でしょ?」


ユノは苦笑いしながらうんうんと頷くと、それにしても、と言葉を継いだ。


「お前って、物怖じしないってゆうか、飄々としてるってゆうか」
「普通ですよ」
「普通…かな。でも下級生は俺と話すとき、どこか遠慮してるし目とかサッと逸らされるし…」


ユノはちょっと寂しそうに言うけれど、それは当たり前であり、仕方のないことだと思う。
生徒会長という理由だけじゃなくて、好きとか嫌いとか、憧れてるとかそういう理由でもなくて、
無駄に人たらしフェロモンダダ漏れなユノを目の前にして、
「あれ、動悸が…」とか「あれ、なんだか顔が熱い!?」ってなる自分に動揺しないほうがおかしい。
だからユノと対等に話せる下級生なんて稀有に違いない。


「それに、あいつらに囲まれてるときもぜんぜん焦ってる風じゃなかったから、
 上手くかわすのかなーって思ってたのに。
 抵抗もせずに殴られようとするから…すげー驚いたし」


そのときの事を思い出したのか、ユノはありえないとばかりに首を左右に振る。
けれどそれを言うのなら、ユノのほうがあり得ない行動を取っている。


「僕だって、相当驚きましたよ」
「お前が?」
「ええ。ヒョンが急に現れたとき、本当に寿命が縮まりました」
「…そこは喜ぶべきとこだろ」
「まさか。何事もなかったから良かったようなものの…もしヒョンが殴られでもしてたら、地獄絵図でしたよ」
「俺らがボコボコにされるって?」
「そんなわけないじゃないですか。逆ですよ」
「お前腕に自信あったの?」
「ありません」
「…じゃぁどうやってボコるんだよ」
「そこは頑張ります」
「頑張るって…」


ユノはぱちくりと目を丸くして僕を見ていたけれど、はじかれたように笑いだした。
冗談と受け取ったらしい。僕としては結構真面目に言っているのだけれど。
腕に自信はなくとも、負ける気は全然しない。

ばしばしと僕の腕を叩いて笑っているユノに、さっきから気になっていたことがあって、聞いてみた。


「そういえばヒョン」
「ん?」
「いつから見てたんですか」
「!!」

ユノはギクリと肩を揺らしてピタリと笑いを止めた。
予想外のリアクションに、僕の方が驚いてしまう。


「えっと、いつから?…まぁ、うん、いつからだろう。…あはは」


もごもごと言いづらそうにしていたけれど、最終的には笑ってごまかすことにしたようだ。
ユノはもっと煙に巻くのが上手いというか…隣にいるユノが分かりやすいというか…
見た目は今と変わらないけれど、性格や精神面なんかは高校生の頃のユノなのだろうか。
もしそうだったら、すごく貴重なユノを見ていることになる。


…そんなことをあれこれ考えていたら、ユノが立ち止まった。
僕もコンマ数秒遅れて立ち止まる。
どうしたのかと振り向くと、ユノは難しい顔をして地面に視線を落としていた。


「…ヒョン?」


ちょっと屈んで顔を覗き込むと、ユノの視線がゆっくりと上ってきて僕の胸の辺りで止まる。
そして、顔の前で勢いよくぱちんと両手を合わせた。


「ゴメンっ」
「?…何がですか」


ユノが謝ってくるなんて珍しい。
もしかして僕を置いてったこと?
でもあれは僕が勝手に傷ついて、ユノを不快にさせただけだから…
謝られるような事に心当たりはなかった。


「……最初からいた」
「最初、ですか?」

頷くユノ。

「絡まれる前からってことですか?」

またこくりと頷く。

ということは、一部始終を見ていたのに、殴られそうになる直前まで制止に入らなかったことを
謝っているのだろうか。
僕としてはむしろそのまま見ているだけにして欲しかったけど。


「謝るようなことじゃ     

「お前、彼女のこと好きだったのかなって思って…」

     ……へ?」


僕の言葉を遮ってユノが言い放ったセリフを理解するのに、数秒を要した。
理解したとたん、変な声が漏れてしまう。

僕が彼女を好き?
彼女って誰?
ユノに告白した女の子?

ユノは僕の混乱を好きな子がいるって気づかれた動揺と受け取ったのか、矢継ぎ早に言葉を口にする。


「よくよく考えたら、学園天使って呼ばれてるお前があんな態度取るなんておかしいだろ?
 つまり、そうさせる理由があったってことで…
 好きな子が別の男に告白して、しかもフラれるシーンを見るなんてキツイよな。俺に苛立つのもよく分かるよ。
 なのに、気付かなくて…お前の気持ちも考えずに申し訳ないことしたなって。
 だから謝ろうと思ってたのに、お前、生徒会に顔出さないし…気になって戻ったはいいけど、
 めちゃくちゃ傷心に浸ってるみたいだったから、どんな顔してお前に声かければいいかわかんなくて…
 いつの間にかお前は喧嘩買ってるし、しかも、どうしようかと思ってるうちに殴られそうになってっから、」

「ヒョン!」

ユノに手のひらを向けて、なにがどうしてそうなったのか分からない思考回路をストップさせる。

「…そこまででいいです」

そもそもあんな態度とは、ユノが女生徒に告白された後、ユノを呆れさせてしまったことを指しているようだけれど
学園天使…って誰だ。…まさか僕?
いやそんなことより、僕が女生徒に気があるだなんて…確かに女の子は大好きだけれど高校生だ。
…じゃなくて、そもそも、ユノより好きな人なんて、夢のなかであろうとも、どんな世界であろうとも、居るわけがない。
しかも傷心はユノの所為だし、僕と言い争ったことを気にして迎えに来てくれたのだと思っていたのに…
まさかこんな展開に繋がっていようとは、想像すらしていなかった。


何から正せばいいのか…
思わずこめかみを指で押さえてしまう。


「…チャンミン?」

どこか心配そうに僕を呼ぶ声。
本当に申し訳なさそうに眉をハの字にしていた。





………ぁぁ、もうっ!
意味のわからない言動で僕を困らせるのは、どこのユノも同じだ。






「あのですね…」

とりえず、間を埋めるように言葉を発しながら、頭の中を整理する。

「えっと、…まず、僕は彼女を好きではありません」

そう言ってはみるものの、
ユノから「誤魔化してるんじゃないの?」っていう疑惑に満ちた視線をひしひしと感じた。



「いいえ、ほんとにっ!」



信じてくださいとばかりに力を込めて主張する僕だけれど、
…なんて…なんて頭の悪い台詞だろう。

まるで浮気を疑われて、明確な根拠を示すこともできず、ただしてませんよって言い張る、そんなノリ。
もちろん説得力はゼロ。
脱力感を覚えてしまう。

しかも拳を握りしめていることに気づいて、ゆっくり息を吐きながら指を解いた。




そして、思う。

…そもそも、こんなくだらないことを言う羽目になったのは、僕の気持ちを何も知らないからだ。






だからそれを示すべく、1歩、ユノの方に踏み出した。










続く

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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。