あなたに手が届けば、手段は何でもよかった。

たとえ、…… 悲しい顔をさせることがあったって。










wasu.png 【忘れないで。/08.】











ゴー。ヒューゥゥゥ…。

微かに聞こえる。

えっと、何の音だっけ……?


あ、そーそー、飛行機だ。






「チャンミン、起きろ。もー着くぞ。」



ぱちっと目を開けると、目の前が背もたれの高い椅子。

「ここ…どこ?」
「私はだれとか言うなよ」

独り言にツッコミが入る。
横を見ると通路を挟んだ向こうによく見知ったマネジャーが座っていて、
その背後に広がる光景も、よく見知ったそれだった。


「なんで…」


飛行機の中なんだ。

いやでも待て、マネジャーがいるってことは、…現実、世界なのか?
もしくはまた別の夢世界…?


「……僕は東方神起のチャンミンで高校生じゃない?」
「はぁ?…大丈夫かお前。 また記憶なくしたとか言わないでくれよ」
「マネージャーの答え次第です」
「それ意味分かんないけど、お前は東方神起のチャンミンでとっくの昔に高校は卒業してる」
「そーですか…」


ぼすん。
僕は安堵の音を立てて背もたれに戻り天井を仰ぐ。


「……戻って、きたんだ…」


あっちの世界のユノにサヨナラも言えなかったし
喜んでいいのか、微妙な気持ちだけど、


「こっちにいたチャンミンが側にいるよな?」
「………俺に質問してる?」
「いや、こっちの話」
「で、どーなんだよ、俺の答えは」
「何が?」
「俺次第で記憶云々って言ったろ」
「その件ですが、僕が記憶喪失になったのって、いつでしたっけ?」
「あー…1年前くらいか」
「なるほど」


夢の世界で過ごした期間と同じくらいの時間が流れていたようだ。
つまりあれは夢の世界でなく、別の現実ってことなんだろうか。


「だとしたら、ここ1年の記憶はありません。それ以外は、あります」
「は?」
「あご、落ちてますよ」
「いやえっまた…?」
「ええでも安心してください」
「無理だろ」


そういって携帯を取り出すけど、機内だということを思い出したらしく、
10秒くらい右往左往したあとポケットに戻した。


「本当に問題ありませんから」
「ないわけないだろ。 降りたらまず病院行くぞ。こうも頻繁じゃさすがに…」


今にも頭を抱えそうなマネージャー。
高校生のチャンミンが現れたときも、さぞ大変だったのだろう。


「それより、」


隣にいるはずの人物がいない。


「ユノヒョンはどこ?」
「……あっち、だけど…あいつにも報告しなきゃな」


マネージャーは親指で後ろの方を差す。
中腰になって見渡そうとしたけどベルトに引き止められた。


「止まるまで座ってろ」
「え、ああ…うん」
「にしても…お前がユノのこと聞くなんて、どーした?」


さも意外そうに言われる。
たしかに、ユノのことは本人より把握してるけど、あいにく頭の中には何も入ってない。
ユノに関する記憶くらい引き継いでくれてもいいのに。


「まあ、後で話すけど、スケジュール頭に入ってなくて」


そう返すと、えっ?!という驚いた顔をされる。


「…完璧主義者に輪をかけたみたいなお前が? いや、記憶ないんだったな」
「ふうん、そーなんだ」


ユノのスケジュールのことだったんだけど、
思わぬところから、チャンミンの情報を得た。
しっかり仕事してたみたいで安心する。
それならあっちの世界でもユノを守れるだろう。
ってゆうか、そうじゃないと困る。


「まるで他人事だな」
「いえ、まあ。移動はいつもユノヒョンが隣に座ってたでしょ? 何で今日は後ろなの?
…僕ら喧嘩中とか?」
「………」


マネジャーは困惑を極めた顔をして暫く黙ってしまう。


「マネージャー?」
「…お前の希望だろ。 覚えてないと思うけど」
「僕の希望?」
「移動時間は1人がいいって言うから」
「は、そんなツンツンなこと言うわけ…」


ぱっと、ユノの、気持ちを殺したみたいな顔がフラッシュみたいに
一瞬だけ浮かぶ。
…急に。
ほんとに急に。




「…、なに?」




目頭を押さえて目を閉じる。
その瞬間、今度は一枚だけじゃなくて、
次々と瞼の裏で映像が再生される。
だけど、

どれも
これも
幸せとは程遠い顔ばかり。
天使みたいな笑顔は、横顔ばかり。


チャンミンの瞼に残って消えない映像?
だとしたら、

チャンミンはユノを幸せにできてなくて、
しかも他の誰かに向けるユノの笑顔を眺めてたってこと?!



「……まじ…まじか。」


アイツ!!!


「チャンミン?」
「ツンツンにもほどがある。 こっそりデレてんなよ…」
「どうした? 吐き気? 頭痛?」
「教えてくださいっ!!」
「えっ何をだよ」
「1年間の僕の様子っ!! ヒョンに何かしましたか!?」


急に迫る僕にマネージャーはしーっ!と人差し指を立てて周囲を見渡す。


「声落とせって」
「わかりましたから、早くっ」


声を潜めつつ急かしたら
マネージャーは深いため息をついた。



「ユノに何かしたかってゆうと、何もしてない」
「そんなわけない。 絶対悲しませてたっ」
「それは、」


マネージャーは腕を組んで言葉を継いだ。


「結果論、というかお前が悪いわけじゃないってゆうか。
 言うなれば、兄さんのために仕事するのに必死すぎて、デキる兄さんと自分を比較しすぎて、
 兄さんを省みることのできない切羽詰まった感じ? 仕事を優先した結果だから直接的には何もしてない」
「仕事優先って……」


高校生のチャンミンには全てを仕事に傾けなければならないほど、
方神起の肩書きは重たかったんだろう。
ユノの存在が大きすぎたんだろう。
その心境が痛いほど理解できて、チャンミンを責める気持ちはサーッと消えた。


だけど、1年の間、ユノは何を想い、過ごしていたのか…




「どうした? もう着いてるけど、降りねーの?」


上から声が降ってきた。
ユノ!
ばっと顔を上げると、背もたれに腕をかけたユノと目が合った。




ユノだ。
ホンモノのユノだ。




とたんに頭の中が全部吹っ飛び、久しぶりに会う等身大に
たまらない気持ちがこみ上げる。


立ち上がろうとするけどまたもベルトに止められるダサい僕。

しかも外れないし!!こんなときに!!




ガチャガチャやってたら、

「何してんだよ」

呆れた声がしてユノの手がベルトに伸びてきた。








手が届けばなんでも良かった。






「!!! チャンミン?!」




ガバッと抱きしめた僕のせいで体勢を崩し
宙泳ぐ手が僕の肩を掴む。




「凄く…会いたかった、みたいです…」



背中に両手をキツく巻き付けて、
呟いてた。



ユノとずっと一緒にいたから、満たされてると思ってた。
でも、今はこんなに枯渇してる自分がいて。
腕に抱きしめてるユノに
誰でもない唯一無二のユノに
僕はずっとずっと、会いたかったんだ。



だけど、肩に置かれた手はそのままで、動く気配はない。
それでも気にはならなかった。
ユノとチャンミンに何があったかわからないけど、僕は前と変わらない。
好きなんだ。
この気持ちが伝われば、それでよかった。



「……俺に、会いたかったの?」
「うん」



たくさん頷きながら首筋に顔を埋める。
ユノの匂い。



「なんか…懐かしい感じがするな」
「一年ぶりですから」
「なんだそれ」
「ただいま、ヒョン」



そう言ったら
肩に置かれたままだった手が、そろりと首に回ってきた。




「おかえり、…チャンミン」
「うん」





抱きとめる重みが、幸せすぎて
僕はしばらくユノを離すことができなかった。











続く..

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プロフィール

YUKA

Author:YUKA
ある日突然、ユノに恋をしました。
気付けば、チャンミンに構って欲しいユノと、ユノの側にいてくれるチャンミンの図に、萌えまくっていました。腐り具合は、きっとこれから進行してゆくのでしょう。

東方神起ありがとう!

「東方神起 RISE AS GOD」
「東方神起 LIVE TOUR 2015 WITH」




素敵な画像をお借りしました。
ありがとうございます。